サーバントコーチ
世古 詞一 代表取締役
優秀な部下の突然の退職。メンタルに支障が出る部下、自発性のない部下の増加。私は現在、企業の組織コンサルティングを行い、日々このような問題を多くの組織から聞いています。この問題の根幹は、ずばり社会環境が変化しているのに「上司と部下との対話が激減しているから」です。
ゆとり・さとり世代などと呼ばれる若手層との世代間ギャップが起こり、働き方に対する環境や個人の考えも激変しています。ですので、組織内の対話を増やさなければ相互理解がしづらくなっています。にもかかわらず、飲みに行く機会や働く時間も減り、短期的な業務以外のコミュニケーションがなくなってきているのです。
そこで昨今、多くの組織で1on1ミーティング(以下「1on1」)という、主に上司と部下による「1対1の定期的な対話」が行われつつあります。従来の面談との大きな違いは、この時間が「部下のための時間」だということです。
1on1での対話を通して、部下の気持ちがすっきりしたり、納得感を持って次のチャレンジへ進んでいくなど、部下にメリットが必要です。これは実は今まで、あるようでなかったコミュニケーション手法です。
そこで本書では、1on1の実際の手法を紹介しています。まず、1on1を実施する際にマネジャーが最も困るのは、1on1の全体像がわからずに、その場で思いついた「場当たり的な質問」に終始してしまうことです。
これを解決するために本書では「1on1実践マップ」というフレームワークを紹介しています。これは信頼関係づくりと成長支援という2つのステージと7つのテーマから構成されており、チェックテストなどを用いて一つ一つ丁寧に解説しています。
また、1回30分で構成される1on1の時間ごとの内容を提示して全体の流れを可視化しています。さらに巻末には、1on1の質問・伝え方例一覧も掲載し、読み物としても具体的なマニュアルとしても活用できるようになっています。本書をご覧になられて、多くの組織の場で1on1が実施されることを切望しています。
世古詞一 著
かんき出版、1,400円+税