VRPパートナーズ
大谷 幸宏 代表
“転職は目的ではなく、キャリアプランを実現するための手段である”転職を考えたことのある方なら一度は言われた経験があるのではないだろうか。私は16年にわたり会計専門職の転職支援を行ってきた立場から、公認会計士や税理士といった士業こそ、この言葉を重く受け止めるべきであると考える。
キャリアプランの実現は転職によって得られるものであろうか。残念ながら必ずしもそうとは限らない。私自身、人材紹介業界に16年間携わり、今まで2万人を超える転職希望者のキャリアチェンジに接してきた。
転職希望者の中には、キャリアアップに成功した方だけではなく、転職のタイミングを逸し苦労する方や、転職先の選択に失敗し、転職回数を重ねている方の相談も受けてきた。そうした残念な結果になる方の共通点として、「情報不足」「周りに相談しない」「瞬間的な感情に流さる」等。
つまり、過去の転職に戦略性がなかったということが挙げられる。これでは知識と経験が評価される会計業界において、理想的なキャリアプランを実現することなどできない。
この数十年で日本の雇用環境は大きく変化し、個人と組織の関係性も見直されている。終身雇用は過去の言葉となり、日本の大企業が雇用調整を行う時代である。
また会計業界においては公認会計士の試験制度も変更になり会計士人口が増える中、雇用環境も変化しており、いまや資格を取得したからといって安泰という時代ではなくなっている。
私は「会計人コース」という公認会計士や税理士を目指す方々向けの情報誌で、1年間の転職市場の動向やキャリアアドバイスの連載企画を経て、ありがたいことに読者からの一般的な転職とは異なる公認会計士や税理士などの専門業界における転職ハウツー本を期待する声を受け、本書の出版化に至った。
本書では数多くの実体験に基づき、成功事例だけではなく、失敗しない転職の仕方、転職活動のタイミングやキャリア形成についてのアドバイス、さらに転職にまつわるエピソードなども記載している。本書が会計専門職の方々のキャリアプラン実現にあたり、その一助になれば幸いである。
大谷幸宏 著
中央経済社、2400円+税