【著者が語る】リーダーシップ3.0―カリスマから支援者へ

THS経営組織研究所

THS経営組織研究所
小杉 俊哉 代表社員

過去十数年、管理職向けにリーダーシップ開発の研修を行っている。受講者は、主任・課長から事業部長・役員まで様々な階層で4000人を超えている。

受講者と接していつも感じてきたのは、リーダー=強く、カリスマであり、全ての面でフォロワーを凌ぐ能力を持っている、というステレオタイプのリーダー像に縛られていることだ。

こうあらねばならないリーダー像があまりに自身とかけ離れているため自信を喪失している。それを払拭したいと考えたのが本書を著したきっかけだ。

多くの人が思い描くリーダー像は、チェンジ、チャレンジ、イノベーションを主導する変革型リーダーである。

変革型は90年代の型であり、GEのジャック・ウエルチに代表されるアメとムチ戦略を駆使したモデルで、多くの指摘があるように現在のクリエイティブな仕事を中心とした自律的な働き方の動機付けとは合わなくなっている。

それ以上に、日本人は変革型に不向きであることを、90年代以降変革に成功した企業が極めて限られていることが何より雄弁に物語っている。

時代背景により、リーダーシップのタイプは変化している。1920年代までのリーダーシップ1.0権力者(中央集権)が、30~60年代は1.1権力者(分権)に変化した。

70~80年代の日本的経営が礼賛された時代は1.5調整者が中心となる。その後、上述の2.0変革者が時代の覇者となる。しかし、21世紀に入り、世界の潮流は一人一人の自律した組織の構成員を支援する、3.0支援者の時代へと変化しているのである。

好都合なことに3.0支援型リーダーは、日本人にとってもハードルが低く無理なく取れる型である。研修で職場での応用を討議してもらうと、一様に受講者たちは希望に満ちた顔つきに変わる。すぐに実践できると思えるからである。

一方で、かつての1.5との違いを明確し、釘を刺すことも忘れてはいけない。不可避のグローバル環境で、一人でも多くの日本人がリーダーシップを発揮することを強く願っている。

THS経営組織研究所

小杉俊哉 著
祥伝社、820円+税

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