トランストラクチャ
林 明文 代表取締役
人事管理は経営管理の諸分野の中でも進んだ領域ではありません。本来であれば経営方針や経営計画達成のための最も重要な管理分野ですが、人事の現状の正確な把握やその結果としての合理的な人事施策が十分に研究され十分に経営に貢献しているかが不透明であると言われています。
その原因の一つには自社の人事の状態を正確に認識する技術がないことが挙げられます。自社の人事の問題や課題を正確に客観的な情報に基づいて網羅的に把握できている企業は少なく、経営者や人事の感覚や定性的な情報に基づく問題や課題の認識が一般的です。
財務経理の分野においては企業の損益や財務状態などが様々な指標で定量的に判断することができます。高度に理論化されており合理的な手法に基づく現状認識が正確にできます。人事管理は財務経理と比較しても合理性や定量化という観点で非常に遅れていると言えます。
しかし、経営環境は人事管理に対して非常に高い期待があることも事実でしょう。環境変化の激しい中で人件費の適正化、変動費化の推進、労働市場の発達に対応した効率的効果的な人件費配分、成果主義などによる企業の活性化など経営として重要な期待も担っています。
このような経営に貢献する人事管理を短期的にも中長期的にも安定して実現していくためには、人事の現状や将来の問題・課題を正確に把握しなければなりません。
本書は、数百に及ぶ実際の企業分析の結果を踏まえて、損益や人事のデータを使用して、定量的に人事の問題・課題を明確にするための手法を紹介しています。
今まではインタビューやアンケートといった定性的な情報をよりどころとしてきた人事の問題・課題の認識を、定量的なデータのみで解析することで合理的な現状認識が可能となるような代表的な分析手法です。本書が真に経営に貢献する高度な人事管理への成長の一助となればと思っております。
林明文 著
中央経済社、2400円+税