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黒川 公晴 CEO ミネルバ認定講師
【PROFILE】2006年外務省入省。外交官としてワシントン、イスラエルに駐在。通商交渉や日本のアートプロモーションを担当。その後、安保・経済領域での様々な交渉に携わる傍ら、首相·外相の英語通訳を務める。2018年に独立以降、ファシリテーターとして企業の人材・組織開発を支援。事業開発、自立型組織作り、ビジョンバリュー策定、紛争解決等のサポートを行う。ペンシルバニア大学組織開発学修士。一般社団法人Brain Active with 代表理事。
VUCAと呼ばれる不確実で複雑な時代、多くの企業で「リーダーの育成が進まない」「マネジメント層の質にばらつきがある」といった課題が聞かれます。
背景には、組織内で「リーダーシップとは何か」が明確に定義されておらず、育成が属人的かつ偶発的になっているという共通の構造があると感じています。こうした問題意識のもと、本書ではリーダーシップを「再現可能な思考習慣」として捉え、体系的に言語化することを試みました。
基盤となっているのは、革新的教育機関として注目されるミネルバ大学が開発した「ManagingComplexity」というプログラムで、日本でも複数の大手企業が導入を進めています。
本書では、不確実な時代に成果を出し続ける「適応型リーダーシップ」を育むための10のテーマと18の思考習慣を紹介しています。
システム思考や行動科学、EQ、課題設定、意思決定といった多様な視点を扱いながら、それぞれを抽象論で終わらせず、思考プロセスの流れや実践の一歩目となる問いを丁寧に設計しました。理論を知識で終わらせず、現場で活用できる知恵へと昇華する構造を意識しています。
人事・経営層の人々にとって、本書が提供できる意義は三つあります。
第一に、抽象的で人によって解釈が異なりやすい「リーダーシップ」という言葉に共通の定義や考え方を与えることで、組織内で「何を育てるのか」「どうあるべきか」を共通言語で議論できるようになります。
第二に、そうした共通言語に基づいて、リーダー育成の方向性や評価軸を揃えやすくなるため、人材開発の方針や施策に一貫性を持たせやすくなります。研修や実践支援をより効果的に機能させる補助線となります。
第三に、各章に設けた問いやケース、実践ツールが、研修設計や1on1、学習文化醸成の現場でそのまま活用可能になります。
リーダーシップは生まれ持った資質ではなく、思考の積み重ねによって育まれるものだという前提に立ち、これからの人材育成・組織開発にお役立ていただければ幸いです。

黒川公晴 著
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2,500円+税