キャリアオーナーシップを促す公募制・選択型研修を拡充【三菱HCキャピタル】

三菱HCキャピタルグループは、人的資本経営を中長期的な企業価値向上の重要な課題と位置付け、社員が変革意識を持ち主体的に考え行動するキャリアオーナーシップの意識を高めるため、人材育成施策を強化している。同社の取り組みについて、人事部キャリアデザイングループの市川佳典氏に聞いた。(取材・執筆・編集:日本人材ニュース編集部

三菱HCキャピタル
市川 佳典 人事・総務本部 人事部 キャリアデザイングループ 次長

三菱HCキャピタル
人事・総務本部 人事部 キャリアデザイングループ 次長
市川 佳典氏

事業概要を教えてください

当社は2021年4月に、銀行・商社系リース会社の三菱UFJリースと、メーカー系リース会社の日立キャピタルの統合により誕生しました。祖業の国内・海外顧客向けリース事業やファイナンス事業の他、環境エネルギー、航空、モビリティ、不動産、ロジスティックスの5つの専門事業を擁しています。

当社は「10年後のありたい姿」として「未踏の未来へ、ともに挑むイノベーター」を掲げ、その実現に向けて、2023年度から1次となる「2023~2025年度中期経営計画」(2025中計)に取り組んでいます。

社員のキャリアオーナーシップ促進に向け、研修制度を拡充した背景を教えてください

当社を取り巻く環境の変化が激しい今、事業課題は複雑になり、それを解決するための人材ニーズも高度化・多様化しています。そういった状況では、会社主導の画一的なキャリア形成ではなく、社員一人ひとりが主体的にキャリア形成を行う、「キャリアオーナーシップ」の意識醸成が重要であると考えています。

社員のキャリアオーナーシップ促進に向けた研修制度の強化・拡充が、「社員一人ひとりが働きがいを実感しながら、会社の成長や発展に貢献し、社会価値創造を取り組んでいる状態」につながることを期待しています。

具体的にどんなことに取り組んでいますか

大きく2つあります。1つは公募制の研修を強化したことです。当社では大小含め年間80ほどのプログラムがあります。これまでは会社が受講必須の研修として割り当てるプログラムが多かったのですが、社員一人ひとりが自らのキャリアを主体的に考え、行動できるようになることを目指し、公募制の研修を拡充しました。

もう1つは、各自のキャリアに応じ、柔軟にプログラムを選択できるようにしたことです。自身が実現したいキャリアを軸に、現状とスキルのレベルに応じてテーマや受講のタイミングを選択できるようにシフトしました。

その他にも、従来からあった公募制のキャリアチャレンジ制度を拡充し、2025年度から「マネージャーチャレンジ」という制度をつくりました。非管理職の社員が自ら手を挙げ、管理職にチャレンジできる制度で、意識の高い人材が実際に手を挙げて活躍しています。

同じく2025年度から、1年間ベンチャー企業で働くことのできる「レンタル移籍」という制度も設けました。当社とは違う環境に身を置くことで、普段の業務では得られない価値観や視点に触れ、新規ビジネスへのチャレンジや意思決定の速さなどを実際のビジネスを通じて経験できます。

現在3人の社員が参加しており、先週、その3人に会う機会があったのですが、新しい環境に戸惑いながらも、試行錯誤を繰り返しながら日々成長している姿を確認でき、送り出した甲斐があったと実感しております。

研修メニューにはどのようなものがあるのでしょうか

主要テーマとしては、「ベース」「キャリア」「階層別」「重点強化スキル」「自己啓発や専門性育成」があります。

「ベース」領域では経営の基本方針である経営理念・経営ビジョン・行動指針を主軸に、さらに6つのテーマに分けて当社社員としての基礎力を身につけるためのプログラムを展開しています。

「キャリア」では社員のキャリアオーナーシップ醸成やキャリア開発に資する研修を複数用意しました。

「階層別」では若手・中堅・管理職向けなど、各階層別で求められるコンピテンシーを的確に身につけ、発揮できる環境を整えるため、各種プログラムをセットしています。

「重点強化スキル」は2025中計の事業戦略の一つである「ビジネスモデルの進化・積層化」を担う人材の戦略的思考向上を目指すものとなっています。

三菱HCキャピタル 図表
社員自身が実現したいキャリア軸に向けて、役割とスキルレベルに照らし合わせて受講するテーマやタイミングを選択できる人材開発制度へシフト

取り組みに対して経営陣から求められていることや社員の反応はいかがでしょうか

「経営の基本方針」や「経営の中長期的方向性」の実現を通じて、企業価値を向上させるには、人的資本の蓄積・活用が重要であり、その人的資本の蓄積に向けた中長期的に成し遂げたいテーマとして、人材ポートフォリオの充足を掲げています。この部分が特に経営から求められている部分であり、To-Be人材への質的転換に資する取組を展開することで、人材ポートフォリオの充足につなげていきたいと思っています。

社員の反応に関しては、プログラムが多様で選択肢が広いこと、公募制が強化されたことの2つを評価する声が多いです。

こちらが用意するプログラム以外にも、社員が受講したい研修や講習などを提案してくるケースもあり、業務に必要だと判断できれば費用補助という形で会社が負担します。例えば、海外のカンファレンスに参加する場合は渡航費や宿泊費を負担するなど、人事が提供するプログラム以外でも必要ならば受講できる仕組みを整えています。

「人材開発制度」の図(モデル)について教えてください

当社では「人材開発制度」を構築し、社内に公表しています。その人材開発制度の中で触れているものになるのですが、「自分に気づき(Notice)、キャリアの選択肢を知り(Know)、実際にキャリアを描き(Draw)、キャリア実現に向けて行動する(Act)」という流れが自身のキャリア実現や会社の成長につながっていく様子を人事部によるフォロー体制とともに、まとめたものです。

社員にはこのモデルを思い浮かべながら、キャリアオーナーシップの意識を高めてもらいたいと思っています。今後も社員一人ひとりの理想のキャリアに向けたサポートを充実させていきたいと考えています。

三菱HCキャピタル 図表
三菱HCキャピタル「人材開発制度」

(2025年7月28日インタビュー)

三菱HCキャピタル株式会社

代表者:代表取締役 社長執行役員 久井大樹
設立:1971年4月12日
資本金:331億9604万7500円
従業員数:2102人(連結対象会社合計8380人、2025年3月末時点)
本社:東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング
売上高(連結):2兆908億800万円(2025年3月期実績)

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