総合人材サービスのネオキャリアが昨年11月から開始したターゲティング型採用広告「N-Tage(エヌ・タゲ)」が好調だ。インターネット広告の最新手法を活用して、企業が採用したいターゲット層に限定して求人広告を配信する仕組みである。人材募集の費用対効果を飛躍的に高め、採用コストの削減を実現するという。
ネオキャリア
西澤 亮一 代表取締役
採用したいターゲット層の応募が少ない理由
完全失業率や有効求人倍率はリーマン・ショック以前の水準に回復し、求人広告件数は3年以上も増加が続いている。企業の求人意欲が高まる一方で、人材採用の現場では採用したいターゲット層を絞り込んだ厳選化が強まっており、事業遂行に必要な人材の質と量を確保できない採用担当者の悩みは深刻だ。
こうした企業の人材採用の実態に詳しい総合人材サービス企業ネオキャリア(東京・新宿)の西澤亮一社長(写真)は、最近の採用における課題について、①採用ターゲットに求人広告が届いていない、②十分な応募数が集まらない、③(応募があっても)採用ターゲットの応募比率が低い―の3つを挙げて、次のように解説する。
「求人情報誌や求人サイトなどの採用メディアを利用しているのは求職者のうち1割程度ですので、採用メディアに求人広告を出すだけでは残り9割の求職者にアプローチすることができません。応募者を集めるためには求職者との接点をさらに増やす必要があるわけですが、採用予算に限りがある中で求人広告を増やしたり長期間出し続けることは多くの企業にとって困難です」
「また、むやみに広告を出しても採用ターゲットに効果的な訴求はできず採用に結びつかないため、広告の費用対効果が非常に悪いものになっています。こうした現状は、既存の採用メディアを主体とした企業の採用活動の構造的な限界を示しています」
採用ターゲットだけに広告を配信できる仕組み
ネオキャリアは昨年11月、ターゲティング型採用広告「N-Tage」の提供を開始した。インターネット広告の最新手法を取り入れ、インターネット全体から自社の採用ターゲットだけにピンポイントにバナー広告を配信することができる。
「『採用メディア内の広告枠を購入し、その採用メディアを訪れた求職者だけに広告を見せる』という従来の募集方法から、『インターネットユーザーの中から自社の採用ターゲットに該当する人にだけ広告を見せる』という新しい募集方法への転換によって、人材募集の費用対効果を飛躍的に高め、採用コストを削減することができます」(西澤社長)
同社はバナー広告を配信できるサイトを9億サイト確保しているが、採用ターゲットの設定や広告表示の精度をより高めるために、求職者のウェブサイト上の行動・特性データを独自に蓄積し分析している。「N-Tage」の利用企業は採用ターゲットを、求職者の性別、居住地、年齢、業種・職種、出身校・学部、特性などから細かく設定することができ、特性情報には「自社と競合する企業を希望している学生」、「特定の開発言語を経験しているプログラマー」、「業務に必要な資格保有者」などの多様な切り口でアプローチ可能だ。
バナー広告からの誘導先は自社採用ページ、利用中の採用メディアの広告ページ、採用セミナーの申込ページなど、自由に設定することができる。
人材募集は“インターネット全体”から“ターゲット”だけ集客する時代へ
●インターネット広告の歴史
●ターゲティング型採用広告 N-Tage
導入企業は300社超、人材募集の工数を削減
「N-Tage」の導入社数は300社を超え、従業員数10人未満のベンチャー企業から数万人規模の大企業まで業種や職種を問わず、新卒、中途、アルバイト・パートなどのあらゆる人材募集で利用されている。また、一般企業だけでなく、採用メディアを運営する人材サービス会社もターゲット層を集客するために利用している。
導入時は様々な業種・職種での利用事例を示しながら、採用ターゲットの設定やバナー広告制作に関するコンサルティングを行い、導入後は週2回のレポートでフォローする。「導入や運用において採用担当者の負担が少なく、人材募集の人的工数削減が実現できるところも喜ばれています」(西澤社長)
●導入社数推移
全国での大量募集、新卒の母集団形成で活用拡大へ
現在、企業からの問い合わせで急増しているのは、特に不動産、飲食、アミューズメントなどの全国での大量募集案件、14年新卒の追加採用、15年新卒のグランドオープン前のセミナーや早期母集団形成を目的とする利用だという。採用時期や地域に応じて、ターゲットに効果的な訴求ができる「N-Tage」を積極的に活用する企業が今後も増えそうだ。
西澤社長は「求職者の地域をさらに絞り込んだ広告配信も検討中で、特にアルバイト・パート募集に効果的です。スピーディーな採用が求められる中、求職者によりダイレクトにアプローチしたい企業が増えていますので、人材募集の効率化に貢献します」と話している。