2013年6月20日

【行動をエンジニアリングする(第4回)】多目的SWOT分析をグローバル時代のマネジメントに活用

多くのグローバル企業でコンサルティングやリーダー育成を行うカタナ・パフォーマンス・コンサルティング代表の宮川雅明氏は、グローバルなビジネスを行う組織が共有すべき分析ツールとして、シンプルで多様性に対応できる「多目的SWOT」を提案する。

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カタナ・パフォーマンス・コンサルティング 宮川雅明 代表取締役

マネジメントに影響を与えるグローバル化と多様性の高まり

 日本企業のマネジメントに対して、二つの要素が大きな影響を与えている。一つは、原材料の調達や製造だけでなく、研究開発から販売に至る全てのビジネスプロセスがグローバル化していることだ。もはや「日本」と「日本以外」という思考をベースとしたマネジメントが成立しなくなっている。
 もう一つは、グローバル化の進展とも関連するが、企業経営を取り巻く環境変化のスピードや多様性がかつてないほどに高まっているということだ。こうした状況をVolatility(不安定)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をとって「VUCA」と表現されることもある。
 マネジメントの基本は、豊富で関連性の高い情報を収集して的確に分析することだが、グローバル企業は各市場の情報を常にアップデートし、それに適合できる経営資源の評価と見直しを迅速に行うとともに、それらを統合・連携して行わなければならない。
 人材育成の面では、グローバル全体を束ねることができるリーダーを育てると同時に、現地市場に精通したローカル人材を育てないと事業は立ち行かない。
 しかし、ローカル人材の仕事に対する考え方や教育水準は日本とは大きく異なり、現地で採用したり、買収した企業出身の人材が必ずしも優秀であるとは限らない。日本国内の多様性が低い組織のマネジメントに慣れてしまっている人材が現地に送り込まれ、ローカル人材のマネジメントができず結果を残せないケースを数多く見かける。

マネジメントの「共通言語」として多目的SWOTを提案

 日本企業のマネジメントが壁に当たる理由には経営情報を把握するための優れた分析ツールを共有していないために、実践で活用が徹底されていないことが挙げられる。
 変化し続ける外部環境や多様性が高まる組織の様々な場所・階層から発信される情報を「共通言語」を用いて理解することができない状態にあるため、最適な戦略を立てることができず、組織をまとめたり、人材を育てることができない。
 分析ツールには多種多様なものが提案されているが、習熟するために相当な時間を必要とするような複雑なものは現場では使えないし、ビジネスの変化に対応できない場合も多い。

 活用することを考えるなら、できるだけシンプルで直観的なものがふさわしく、日本のビジネスパーソンにもなじみが深いSWOT分析を提案したい。
 戦略を考えるフレームワークは外部環境と内部環境の組み合わせであり、SWOT分析は両面をバランスよく見ることができる。そして、シンプルであるがゆえにSWOT分析の短所を補ったり、多様性に対応するために補足ツールを組み合わせることも容易である。

 様々な条件に対して柔軟に対応できる特徴を表すために「多目的SWOT(Versatile SWOT=V-SWOT」と呼んでいる。

多目的SWOT(Versatile-SWOT=V-SWOT)の特徴

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分析レベルに最適な設計と基準、フォーマットを用意

 分析結果の出来栄えは、議論に参加するメンバーによって相当の差が出ることは事実である。分析の前提となる情報収集力が劣れば不十分なものとなるし、厳密に事前の設計をしなくても簡単に作れてしまう。
 そこで、分析のレベルを7段階で設定することで、分析の目的や範囲を明確にして議論の質を高めたり、トレーニングによってレベルアップを図ることができると考えている。
 例えば、新入社員や若手の研修では基本的な戦略を理解するために活用することができるし、分析のためのグループディスカッションはチームビルディングに大変役立つ。
 また近年は、イノベーションのために組織や社員の外部環境の変化に気づく力が重視されていることから、新商品の開発や新市場での営業を議論のテーマとするのであれば、過去の経験にとらわれず創造的な発想を重視する「探索的SWOT」が欠かせない。
 さらに、「探索的SWOT」をブラッシュアップして100個の戦略アイデアを出す「100-SWOT」を経て、具体化するために定量的な視点からも確認していく「確認的SWOT」へとビジネスの実践に耐えられるものにしていくプロセスがある。
 それぞれの分析レベルに応じて適切な設計を行い、基準を明確にしておく必要がある。分析に使用するフォーマットをあらかじめ用意しておくことも議論の質を高めるためには欠かせない。当社がコンサルティングを行う際には、英語版フォーマットやプログラムも用意している。

意思決定のプロセスやロジックの共有化が、マネジメントへの信頼につながる

 世界のどの拠点においても若手、管理職、役員がSWOT分析を使って、分析の目的、分析結果の評価、実施方法やフォローなどの基準を全員が意識することによって、組織内に「共通言語」を作り出し、コミュニケーションギャップを防ぐことができる。
 例えば、定量的な視点で分析を加えていく「確認的SWOT」では事業計画の原案に対して意思決定がしにくい中止や一時中断のような状況も考慮したリアルオプションなどで分析する。意思決定のプロセスやロジックがオープンで共有されていることは多様性が高まっている組織をマネジメントしていくためには欠かせない要素である。
 こうした姿勢がマネジメントに対する信頼感を増し、戦略の実行となる日々の業務において、社員一人一人の行動が徹底されていく。
 そして、現場においてSWOT分析を使いこなし、事実に基づいて仮説を検証していく文化を徹底するためには、マネジャーがSWOT分析の活用をリードするコーディネーターの役割が担えるように、トレーニングの機会を与えることも必要である。

カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社

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