2017年11月17日

医師・看護師の採用を成功させる3つのポイント

 高齢化の進展により高まり続ける医療ニーズ、訪問介護などの在宅医療の需要も増加している。こうした中、医師や看護師を中心とした医療スタッフの人手不足は深刻になっている。医療機関の人材採用や経営・人事を支援する専門会社に、最近の採用事情や医療機関の取り組みなどを聞いた。

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広がる医療ニーズに応え、医師の希望も多様化

 2008年以降、医学部の定員増が図られており、2016年には過去最高の9262人の定員となっている。医師の今後の需給について、厚生労働省は「2022年に需要と供給が均衡し、マクロ的には必要な医師数は供給される」としているものの、「短期的・中期的に、あるいは地域や診療科と言ったミクロの領域での需要が自然に満たされることを意味しない」とし、医師の地域や科目偏在が進む可能性を指摘している。
 最近の医師の求人動向について、医師紹介事業を行うMRTの小川智也副社長は「医師は東京への集中が進む傾向が強まっています。多くの大学病院が立地することに加えて、地方から高齢者が流入し、訪問看護などの求人が増えているからです。急性期病院だけでなく、介護施設や福祉施設の求人も増え、医師に対するニーズは幅が広がっています」と解説する。
 こうした医師に対する求人ニーズの広がりに対して医師の転職活動にも変化が見られるようだ。医師の転職を支援するエムスリーキャリアの沼倉敏樹医師キャリア事業部部長は「医師の希望は以前に比べ多様化しています。在宅医療や地域医療、健康経営で注目されている産業医などで活躍する医師のモデルケースが出てきています」と話す。

女性医師の増加が、働き方改革を加速させる可能

 医師の採用活動では、人材紹介会社やヘッドハンティング会社が主に活用される。採用の成功を左右するポイントについて、リクルートメディカルキャリアの鈴木昌樹ドクターエージェントサービス部エグゼクティブマネージャーは「『医師や人材紹介会社に対してスピーディーにレスポンスしているか』、『医師のタイプに合わせて適切な面接官をセッティングしているか』といった対応力の差」と説明する。

 そのため、採用数が多い大規模病院などは「医師招聘部」を設置したり、企業人事や人材紹介会社の経験者を採用して専任者として配置するケースもあり、採用力を強化する病院が増えている。
 さらに今後の採用においては、病院の「働き方改革」への取り組みが重要なアピールポイントになるかもしれない。

 総務省の調査によると、1週間の労働時間が60時間超の雇用者の割合は、医師が41.8%と全ての職種の中で最も高い割合となっている。夜勤や救急対応などがある医師のハードワークはよく知られているが、今や医療施設に従事する医師の約2割を女性が占めるようになった。

 厚労省は今年8月から「医師の働き方改革に関する検討会」を開始しており、労働時間の適正把握や見直しを進めていく方針だ。適切な労働時間管理、柔軟な勤務体制、院内保育所や幼稚園の設置など、働きやすい病院であることが採用力を高める要素の一つになる可能性がある。
週60時間以上働いている医師が4割を超えている

週60時間以上働いている医師が4割を超えている

●年代別、男女別の週当たり勤務時間60時間以上の病院常勤医師の割合

(出所)厚生労働省「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」

3割超の病院が、新卒看護師の採用計画を達成できず

 次に、病院で最も人数が多い看護師の採用だが、厚労省によると看護職員の需要は2015年で約150万1000人。一方の看護職員の供給は約148万6000人で、需要数が供給数を上回る状況となっている。国の医療施策の動向に左右される部分もあるが、看護師不足の慢性化が予測される中で、医療機関は看護師をどのようにして採用していくべきだろうか。

 看護学生の採用支援を行う文化放送キャリアパートナーズの「看護師採用総括レポート」によると、今年4月入職者のうち、「病院付属の学校」と「付属以外の奨学生」が入職者に占める割合は、大学病院、国公立・公的病院、民間病院のいずれも3割を超えており、安定的な人材確保につながっている。
 病院付属の学校、奨学金、実習指定病院によって一定数の看護学生には入学時から採用の囲い込みが行われていることから、こうした採用ルートを持たない病院による採用競争は特に激しく、大学病院の23%、国公立・公的病院の32%、民間病院の36%が、2017年4月入職の採用計画数を達成できていないという状況に陥っている。

 このような病院の採用活動では、合同説明会などで一般応募の看護学生との接点をどのように生かすかが重要となる。採用に成功している病院の特徴について、文化放送キャリアパートナーズの麻生信孝専務取締役は「看護部長や先輩看護師が説明会で直接学生に語ることで親近感を持ってもらい、職場の特徴を上手くPRしています」と説明する。

 また、職場の雰囲気をよりリアルに伝えるために、「説明用に動画を用意するなど、採用ツールの改善に投資することも必要です」とアドバイスする。
看護学生は職場の人間関係や教育制度を重視して病院を選択

看護学生は職場の人間関係や教育制度を重視して病院を選択

●看護学生が就職先を決定する際に、重視していること(複数回答で回答数が多かった内容、2017年卒)

(出所)文化放送キャリアパートナーズ「看護師採用総括レポート(2017年)」
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●民間病院の新卒看護師採用数(2017年4月入職)

(出所) 文化放送キャリアパートナーズ「看護師採用総括レポート(2017年)」
 一方、看護師の中途採用でも、2006年の診療報酬改定で入院患者7人に対し看護師1人を配置する新基準が設定されたことを背景として、看護師の奪い合いが行われている。新卒採用に苦戦する病院では中途採用で看護師を確保しようとするため、中途採用の競争はさらに激しさを増す。

 最近の求人ニーズについて、看護師採用を支援するマイナビの神戸信康紹介事業本部統括部長は「看護師の求人は急性期を中心とした病院がメインであることは変わりませんが、以前に比べ訪問看護や有料老人ホームなどからの割合が増加傾向にあります」と説明する。

 そして、「採用のミスマッチや離職率の高い状況が続いていますので、定着を重視する医療機関が増えています」と話し、定着している看護師の特性を分析して採用時の見極めに生かすことを勧めているという。
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