組織・人事

【著者が語る】サイエンスドリブン 生産性向上につながる科学的人事

医療産業研究所
梅本 哲 代表取締役

【PROFILE】北海道生まれ。大学卒業後、医療関連メーカーに入社。市場調査・商品企画・事業計画・販売計画策定・新商品の市場導入など、マーケティングを初歩から一通り経験したのちに退社。1986年に医療分野における調査・コンサルティングに特化した専門企業として、現在の医療産業研究所を共同設立し、1994年より現職。2003年に、筑波大学と産学協同で開発したストレスチェックツールを基軸に、メンタルヘルス事業へ参入。近年は、医療関連分野の調査業務で培った専門知識・データ解析技術を駆使して、企業の生産性向上を実現させるための提案を行っている。

約20年にわたって多くの企業のストレスチェックを実施し分かったことの一つは、伸びしろの高い人材と低い人材が一定数いるということです。「伸びしろ」を「大(HP)」「普通(AP)」「小(LP)」に区分すると、HPとLPはそれぞれ約14%、APは約72%の正規分布であることが分かっています。

伸びしろの高い人材は、①何をすべきか、何がしたいか、自ら問いをたて答えを出して行動します。また、②視点がミクロではなく、先々を見通して行動します。さらに、③自分のちからを識り、周囲の助けを借りながら物事を成し遂げる自信(自己効力感)をもとに行動します。

この行動特性は性格ではなく能力なので伸ばすことができます。誰から教えられた訳でもないのに、ある時期から自律的に気付いて行動する特性を身につけた方が著者の周りにもいます。

会社組織の中では、高い行動特性を身につけた上司(HP上司)と部下の能力との間に相関があることも分かっています。つまり、配置や組み合わせさえうまくいけば、HP上司の下にいる部下の伸びしろを開発し、高め育てることができる訳です。

しかし、多くの企業では研修プログラムもOJTも平均的な社員(AP)を主眼に設定されているために、HP社員のちからがうまく引き出せていません。彼らは平均的な社員と一緒に働いているのでラクに仕事をしながら高い評価が得られます。せっかく高い成長ポテンシャルがありながらも、それが抑制されていることに気付きません。

伸びしろが高いHP社員は、放っておいても勝手に成長するというのは幻想です。世界的アスリートがそうであるように、卓越した才能とコーチやトレーナーの組み合わせが成長余力を引き出します。

新卒後3年間で3割が辞める話は周知の事実ですが、辞める若手の中にはストレッチゴールを与えられ、到達を期待されることで自己成長を強めていく優秀な人材が含まれています。外資系やベンチャーは優秀な人材を常に求めており、今まで通り、社内規定通りの評価を与えているだけの社員の中から離職者が多数出てくるだろう時代がそこまで来ているように思います。

梅本哲 著
幻冬舎メディアコンサルティング
900 円+税

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