マスメディアン
西尾 将紀 執行役員 国家資格キャリアコンサルタント
ESG投資、エシカル消費といったキーワードに表れているように、あらゆるステークホルダーが企業の社会に対する役割に注目しています。
持続的な企業価値向上を実現するためには、企業の存在意義、すなわちパーパスに則った経営を実現し、事業やその他手段を用いてパーパスやビジョンを社内外に伝えなければなりません。
また、商品・サービスのコモディティ化が進行し、消費者の行動プロセスも変化したいま、商品開発と同時に、選ばれるためのストーリーテリング、ナラティブを考慮する必要があります。
そのような状況で、これまで外注していたクリエイティブ業務を内製化(インハウス化)するため、社内にクリエイティブ組織を構築する動きが加速しています。
従来のインハウス化の目的は、業務効率化やコストカットが中心でした。現在は、経営やサービスデザイン・事業開発にクリエイティブの力を取り入れることに主眼を置くものが増えています。
そのような企業では、まず、CDO(最高デザイン責任者)やCCO(最高クリエイティブ責任者)を採用し、そのイニシアチブのもとで組織づくりを進めるケースが多いようです。また、既存のクリエイティブチームのスキル向上や役割転換を目指す場合にも、それを推進できるハイクラス人材が迎え入れられます。
CDOやCCOは、一般的に、広告会社やクリエイティブエージェンシーで腕を磨いてきた人たちです。転職先を選ぶ際は、スキルを活かせることと同等かそれ以上に、カルチャーやビジョンへの共感を重視する傾向にあります。
ただし留意すべきは、経営層と意気投合したとしても、実務で期待される役割や働き方の変化にギャップを感じ、パフォーマンスが発揮できない場合も少なからずあることです。
新たにクリエイティブ責任者を採用する企業は、採用候補者と担当業務や働き方をすり合わせると同時に、社内ではクリエイターの役割や意義、会社にどのようにメリットをもたらす存在なのかを周知し、協働する土壌をつくる必要があります。
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