政府による、社会人の学び直しから転職までをサポートする新制度が、2023年度内にスタートする予定です。新制度では正社員や契約社員などで働きながらも、転職のためのスキルアップのサポートが受けられるようになります。 この記事では、新制度についての概要や、既存の求職者支援制度について紹介します。(文:日本人材ニュース編集部)
政府の新制度!「学び直しから転職まで」を支援
社会人の学び直しや転職をサポートする、政府が進める新たな制度がスタートする予定です。現段階では助成の対象や条件などは明らかになっていませんが、スキルアップして転職したいと考えている方にとって心強い制度となるでしょう。
助成額は1人あたり平均24万円
転職を考える労働者(正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイト)を対象とし、転職に必要なスキル習得などの支援を受けることが可能となります。
民間が運営する講座を最大1年間受講でき、受講費用の半額が助成されます。一人あたりの支給額は平均24万円、限度額は40万円です。制度を活用して実際に転職を果たし、転職先にて1年間継続して勤務ができれば、16万円の支給が追加されます。
キャリアコンサルタントの資格を持った専門家のアドバイスを受けられ、転職へのプロセスや転職に必要なスキルについてサポートが受けられるのもメリットの1つです。スキル習得に必要なプログラムを受けるための費用を国が半分負担することで、希望者は通常よりも割安に勉強できるようになります。
事業の担い手の第1弾を募集・制度の普及へ
学び直しから転職までを支援する新制度は、これまで主流であった、終身雇用や年功序列など日本の雇用の在り方を変え、スキルや能力に応じた待遇が得られるような社会実現に向けた取り組みが目的です。
この制度の取り組みを普及させるため、政府は転職に実績のある人材会社など50社以上を、事業の担い手として選定しており、今後も増えていく見込みです。 この制度は、2023年度中にスタートし、3年間で30万人規模の転職支援が目標とされています。
他にもある!政府が手掛ける制度「求職者支援制度」とは?
政府が行なう、転職者に対する支援は他にもあります。そのひとつである求職者支援制度は無料の職業訓練と就職サポートが受けられ、一定の要件を満たす場合には、月10万円の給付金が支給される制度です。求職者支援制度について紹介します。
求職者支援制度の特徴
求職者支援制度は、2023年4月1日より一部の支援が受けやすくなっています。変更点を交えながら、求職者支援制度の特徴を紹介します。
- 職業訓練受講給付金
給付金を申請するには、さまざまな条件が必要ですが、そのひとつであった世帯全体の年収が月25万円以下という条件が、月30万円に緩和されています。 - 受講の出席は必須
受講には毎日出席することが必須です。病気などでやむを得ず欠席する場合には証明となるものを提出し、かつ欠席は訓練実施日の2割までとされています。
しかし、育児や介護を行う方や、求職者支援訓練の基礎コースの受講者の場合、訓練実施日の2割までの欠席は許容される条件はそのまま、欠席理由の証明ができなくても認められるようになりました。 - 通所手当
一定の条件を満たした場合、対象者のみ10万円の給付金と、訓練実施機関までの通所手当が支給されていましたが、見直し後は、対象外だった方でも一定の条件を満たせば通所手当が支給されるようになりました。 - 訓練対象者
従来は再就職や転職を目指す方を対象にしていましたが、働きながらスキルアップを目指す方も対象となり、受講者の幅が拡大されています。
求職者支援制度の主なコース
求職者支援制度のコースは、ビジネスパソコンやオフィスワークなどの基礎を学べるコースや、OA経理事務・営業販売といった事務職に必要なスキルを学べるコースがあります。 医療事務や介護福祉、ITやWebデザインといった専門的なスキルを習得できるコースもあります。開講のタイミングによって、訓練実施機関やコースの内容はさまざまです。
求職者支援制度を活用する場合の要件
求職者支援制度を活用する場合の受講要件、支給対象者、支給要件についてご紹介します。
- 受講要件
再就職や転職のためのスキルアップを目指しており、月10万円の給付支援を受けながら、職業訓練を無料で受講できる制度です。現在離職中で、雇用保険を受給できない方や、在職中であっても収入が一定額以下の場合であれば、訓練を受け給付金も受給できます。 また労働の意志があり、職業訓練などを支援する必要があるとハローワークが認めることが受講要件となります。 - 支給対象者
雇用保険の適用がなかった離職者の方
雇用保険の受給が終了した方
フリーランスや自営業の方が廃業した場合 - 支給要件
本人の収入が月8万円以下であること
世帯全体の収入が月30万円以下であること
世帯全体の金融資産が300万円以下であること
現在の住まい以外に土地・建物を所有していないこと
訓練日はすべてに出席すること(通院や介護などでやむを得ない事情であっても8割以上の出席が必要)
同世帯の中で同時期に給付金を受けている者がいないこと
過去3年以内、不正の行為によって特定の給付金の支給を受けていないこと
過去6年以内に、職業訓練給付金の支給を受けていないこと
求職支援制度を活用する場合の流れ
求職支援制度を活用する場合の流れは主に下記です。
- ハローワークで職業訓練の相談を希望する意志を伝え、制度について説明を受けます。
- 将来希望する職業について相談しながら、最適な訓練コースを選択します。
- ハローワークに必要書類を提出し、受講の申し込みを行ないます。
- 実際に訓練を行なう機関にて面接や筆記などの選考を受けます。
- 訓練実施機関より合格通知が来れば、ハローワークに報告を行ないます。
- ハローワークにて訓練の手続きを行います。
- 訓練開始後は、月1回はハローワークへの来所日が設けられており、職業相談を受けます。また来所日に給付金の申請を同時に行ないます。
- 給付金の支給申請後は、1週間ほどで給付金が本人指定の口座に振り込まれます
- ハローワークへの来所は、訓練終了後の3カ月間は再就職するまで継続して行なわれます。
訓練実施機関によって、不合格と判断されるケースもあります。またコースによっては応募者が受講人数の枠を超過し倍率が高いケースもあり、必ずしも受講できるとは限りません。
まとめ
学び直しから転職までの政府による新支援制度については、まだ詳細は明かされていませんが、スタートすればスキルアップや転職を考えている方にとっては力強い支援です。転職先を決めずに退職することを不安に思う方は、新制度を利用するとよいでしょう。
また求職者支援制度も、退職から再就職までの期間を有効活用でき、スキルアップや転職に集中して取り組める、給付金が受給できるといったメリットがあります。