人材採用

長期的観点でキャリアに伴走し、エンジニアの可能性を広げる【兆】

社内に不足するスキルや経験を持つ人材を外部から招く企業が増え、特に次世代の技術開発を担うエンジニアは争奪戦となっている。優秀なエンジニアの獲得を目指す企業からヘッドハンティングの依頼を受け、実績を上げているエグゼクティブサーチ会社、兆(きざし)のコンサルタント則武昌志氏に、エンジニアを取り巻く状況やキャリア支援の様子などを聞いた。

企業が採用活動でサーチ会社を利用する理由を教えてください。

当社は、企業の要請を受けて経営幹部やプロフェッショナル人材の採用を支援するエグゼクティブサーチ会社です。採用の対象となる候補者が、求職者中心の転職市場では見つからない場合、企業は私たちが現職で活躍している人材に接触し、最適な候補者を推薦することを期待されています。

また、経営幹部やプロフェッショナル人材の採用は経営戦略と密接で秘匿性が高いため、求人サイトでの公募や、求職者に応募を促す人材紹介会社には依頼できません。当社のクライアント企業は難しい人材採用を成功させるために、事業や組織までを深く理解した総合的なコンサルティングができる当社に依頼しているのです。


則武 昌志 コンサルタント

【PROFILE】名古屋工業大学工学部卒業後、大手人材紹介会社ジェイ エイ シー リクルートメントに入社。経営幹部層の採用に貢献し、トップコンサルタントとして社内表彰多数。求人企業と求職者のマッチングを追求するのではなく、各分野で活躍している方とのネットワークをより深く築き、経営者との想いをつなぐサーチを体現するため、経営幹部や事業の中枢を担うサーチに特化し、日本を代表するヘッドハンティングの実績を持つ兆に関心を持ち入社。

実際に、現職で活躍している人材とどの程度会えているのですか。

私が注力している自動車関連のソフトウエア領域で言えば、過去2年半の間で400人ほどのエンジニアとお会いできています。

400人ほどの方と会えているとは驚きました。忙しいエンジニアが則武さんに会いたいと思う理由は?

私たちがお会いしているのは30〜40代が中心ですので、キャリアの後半戦を迎える中で自身にどのような可能性があるのかを知りたいという方が少なくありません。

しかし、プロジェクトを抱えて忙しいエンジニアが、今後のキャリアを考えるための有益な情報をタイムリーに得るのは簡単なことではなく、そのため、各社がどのような開発状況にあり、どのような人材を求めているのかといった、業界全体を俯瞰した幅広い情報を持っている私たちから話を聞いてみたいという理由で、お会いいただける方が増えています。

今後希望するキャリアや、さらに活躍できる場への挑戦にどのようなタイミングで踏み切るのがベストなのかは一人一人異なります。今すぐに転職するか否かを問わず、エンジニアとしての可能性を広げる選択肢があることをお伝えできるのが、私たちが果たせる役割の一つだと思います。

活躍しているエンジニアをどのように探し出しているのですか。

専門分野の技報、論文、特許、学会や専門セミナーなどの情報は網羅的に確認します。そして有力な情報源となるのは、これまでに私たちがお会いしたビジネスパーソンからの推薦、評判をお伺いすることです。優れた人材の周辺には、優れた人材がいらっしゃることが多いからです。

こうしたサーチのノウハウや人的なネットワークが当社の強みで、候補者に面談を打診する際には「お会いしたい理由」を明確に伝えるように努めています。そのため、「そんなことまでよく知っていますね。それならば一度お会いしましょう」と言っていただけるのです。

注力している自動車関連のソフトウエア領域に関して、人材ニーズを教えてください。

自動車関連の企業は、EV化やソフトウエアの変革を進めており、重視する技術や開発環境などが大きく変わってきています。

メーカーでは内製開発を強化する方針の中で、重要なトランスフォーメーションを担い、未来の自動車開発をリードできるキーマンを求めています。ハードウエアとソフトウエアの両方をカバーしながら全体を設計し、部下を持ってチームを率いてプロジェクト全体を推進できるような人材です。

また、技術とビジネス・組織を融合していくアクションまでつなげて考えられる事業開発型人材やマネジメント人材が欲しいというニーズもあります。

技術開発のコアとなるエンジニアに関しては、ピンポイントの条件で即戦力となる人材を探しています。しかし、車載のソフトウエア開発を担えるエンジニアは絶対数が限られており、プロジェクトを進めていく人的リソースが全く足りていない状況です。

そのため開発体制の強化を急ぐ企業では、業界を越えて積極的にエンジニアを受け入れ、トレーニングも一層充実させています。

エンジニアとしてさらに活躍できる場を求めて挑戦

●ヘッドハンティング事例(候補者の前職での悩みと転職を決意した理由)
兆

会社が重視する技術や開発環境によって、エンジニアとしてのキャリアは大きく左右されますね。

例えば、サプライヤーで働くエンジニアには、自分たちが技術を持っていると自負されている方が多いのですが、内製開発を強化しているメーカーに転職することよって自身のスキルをより生かせるかもしれません。サプライヤーの立場をよく知っているという経験が、社外を巻き込んだ開発プロジェクトを円滑に進めることができるという強みにもなり得ます。

一方で、あるメーカーでは業界を越えてソフトウエアのハイレベルなエンジニアを集めたものの、結果として製品を出すことができていない状況にあります。会社としての明確なゴールが見えず成果に対する実感が持てないといった理由から、年収が下がっても転職するエンジニアが出てきています。

各社の開発方針や必要な技術、実際に世の中に製品が出ていくまでの距離感は大きく異なります。今の会社にいて自分のやりたいことができるのか、一生懸命取り組んだことが世の中に出ることなくエンジニア人生が終わってしまうのではないかという不安が常にあります。プロジェクトの進捗と自身のキャリアの時間軸をどう合わせていくのかはエンジニアにとって大きな悩みです。

その技術を自動車ですぐに実現するのは難しいけれど、農機や建機であれば実現が近いといったことから業界を変えて新しいキャリアにチャレンジする方もいらっしゃいます。

働く場所についても、仕事にコミットできるならば地方でも構わないという人もいれば、Uターンなどの事情から地域を限定して働きたい人もいます。そのためメーカーの中には開発拠点を分散させて、優秀なエンジニアを獲得しやすくする動きなども見られます。

近年、入社後すぐに離職してしまうミスマッチの問題に頭を悩ます企業も見られます。

求人情報サイトに登録している人材をスカウトするサービスを利用する企業も出てきていますが、特定の登録者に採用担当者や人材紹介会社からのスカウトメールが殺到している状況です。そのため、エンジニアに提示される年収が必要以上に高騰したり、慌てて採用してミスマッチが生じてしまったという話を聞くことが増えています。

私たちヘッドハンターには最適な候補者を探し出す精度の高さが求められますが、現職で活躍中のエンジニアで転職を考えている方はほとんどいませんので、“転職ありき”でお会いすることはありません。業界情報の提供や仕事の様子を教えていただくことからご縁が始まり、最初の面談では求人内容について全くお話しないこともよくあります。

採用は、企業と候補者の気持ちが共に高まらなければ成功しませんし、何を実現したいのかを互いに深く理解できていなければ入社後の活躍につながりません。

私のクライアント企業では副社長からヘッドハンティングのご相談があり、優秀な人材を受け入れていく方針が明確になっています。事業責任者とソフトウエアを統括するトップが採用にコミットし、「あなたの力が必要です」と熱量を持って候補者に伝えています。

候補者を開発拠点に招いてメンバーとミーティングしてもらい、「こんな仕事が一緒にできたらいいですね」とエンジニアとしての希望を語り合う場を設けています。候補者がチームに加わりたいという気持ちを高められるプロセスに軸足を置く採用活動がミスマッチを防ぎ、入社後もスムーズな業務遂行につながっています。

兆 則武 昌志 コンサルタント
「“転職ありき”でエンジニアとお会いすることはありません。業界情報の提供や仕事の様子を教えていただくことからご縁が始まります」

今後どのようにエンジニアのキャリアを支援していきたいですか。

私が最も大事にしているのは、企業の採用を成功させるヘッドハンターであると同時に、人生を切り拓き、自ら成長しようとするエンジニアのキャリア構築のパートナーだということです。

私は名古屋工業大学工学部を卒業後、大手人材紹介会社を経て、日本を代表するヘッドハンティング実績を持つ当社のメンバーとなりました。エンジニアの道は選ばなかったのですが、仕事を通じて多くのエンジニアとネットワークを深く築くことができています。

エンジニアをリスペクトし、長期的観点でキャリアに伴走している姿勢を感じ取っていただければ、とても嬉しいことだと思います。技術を追求していく方、事業開発型人材から経営者になる方など、私たちはエンジニアのキャリアの標本をたくさん持っています。また、業界や技術の最新動向を収集し、優良企業の求人情報も常に入ってきます。

エンジニアの方にとって私たちとお会いいただくことは、自身の新たな可能性に気づく、言わば「キャリアの健康診断」の機会になると思います。今後も一人一人の志向に合わせた最適な情報を提供し、エンジニアのキャリアに寄り添っていきたいと考えています。

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