「ソニーユニバーシティ」で次世代経営人材を育成【ソニーグループ】

ソニーグループでは、将来の経営をリードする人材を育成する機会である「ソニーユニバーシティ」を20年以上前から実施し、個の成長をグループ全体の成長へと導いている。取り組み内容や今後求めているのはどのような人材か、グループ人事部の太田優香氏に聞いた。(取材・執筆・編集:日本人材ニュース編集部

ソニーグループ 太田優香氏 グループ人事部 人事戦略グループ ダイバーシティ&タレントマネジメントチーム

ソニーグループ
太田優香氏
グループ人事部 人事戦略グループ ダイバーシティ&タレントマネジメントチーム

2021年にグループアーキテクチャーを再編しました。現在の事業環境について教えてください

2021年にソニーグループを発足させ、グループ経営を強化しました。これにより、ゲーム&ネットワークサービス事業、音楽事業、映画事業、エンタテインメント・テクノロジー&サービス事業、イメージング&センシング・ソリューション事業、金融事業の6つの事業が等距離でつながることを目指しました。

背景には事業ポートフォリオの拡大が挙げられます。過去20年の変遷をみると、2000年頃はエレクトロニクスがグループ全体の売上の6 割以上を占めていましたが、現在では、エンタテインメント事業の売上が半分を超えています。

各事業がこうして成長を遂げられたのは、「多様な事業と、多様な『個』」を大事にしてきたからこそ。『個』が成長することでグループ全体の成長につながる」と考えています。

また、ソニーグループでは、社員と会社は対等であり「選び合い、応え合う関係」と考えています。ファウンダーの一人である盛田が毎年入社式で「ソニーが自分にとって違う場だと感じたらすぐに辞めなさい」と言っていましたが、社員に対して「自分のキャリアは自分で築く」という考えが根付いています。

23年に就任された十時社長は、「GROWTH(成長)」をキーワードとされていますね

多様な人材が事業の多様性も進化させ、有機的につながることで、ソニーグループのさらなる成長を目指すと言っています。

各事業の人事責任者のもと、各事業で必要な人事施策を独自で行いつつ、グループ全体の施策については連携していこうという方針になっています。サクセッションプランもグループ全体に加えて、各社で設定していますが、タレントマネジメントミーティングを通して情報交換や議論を行い、次世代の経営人材の育成についてはグループ横断で行っています。

「ソニーユニバーシティ」の概要について、教えてください

当社にはさまざまな人材育成施策がありますが、「ソニーユニバーシティ」はOff-JTの中でも大きな位置付けのものです。「経営ビジョンと戦略を描きリードする人材の創出」「ソニースピリットの継承」「グループ経営を行うための人的ネットワークの形成」をミッションに掲げ、将来の経営を担う人材を育成するために2000年に設立しました。

累計参加者数は現在までに1400 人余で、特に最近は参加者の属性がさらに進化し、日本の社員や特定の事業中心ではなく、全世界6事業から満遍なく多様な社員が参加しているのが特徴です。University of California, Berkeley、IESE Business School、Singularity University など世界トップクラスの教育機関とも提携しています。各事業の人事責任者やタレントマネジメント責任者から意見を取り入れ、単なるリーダーシップ育成ではなくソニーのPurpose「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」や「人に近づく」という経営の方向性に即した教育機関を選んでいます。

運営体制に関しては、シニアアドバイザーの勝本徹を学長に据え、現役の役員などが牽引役を担っています。人事が考えたプログラム内容に対し、牽引役がビジネス・経営の視点からアドバイスすることで、内容をよりブラッシュアップさせています。経営トップや多くのマネジメント層がソニーユニバーシティに時間を割き、経営人材の育成にコミットしているのです。

「ソニーユニバーシティ」の参加者内訳の変化

「ソニーユニバーシティ」のコース内容について教えてください

コースによって講義内容は異なりますが、全コース共通の目的は「周囲を動かし変革を起こす、『テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニー』のソニーを牽引するリーダーになる」ことです。

コースは部長・課長・リーダーの3階層に分かれ、グローバルと国内それぞれ3つ実施しています。各コース数十名が参加し、職場推薦および一部自己推薦によりメンバーを決定します。基本は秋頃からスタートし、国内コースは約4カ月、グローバルコースは半年間のスケジュールになっています。

具体的に言うと、例えばグローバル部長コースでは半年間の間に、Module1とModule2の2つの期間があり、Module1では提携先のビジネススクールのキャンパス、Module2ではソニーグループの品川本社でそれぞれプログラムを実施します。教授による講義内容は、ビジネス変革、イノベーション、ビジョンと戦略の紐づけ、リーダーシップなど多岐にわたり、一方的なインプットではなく、ディスカッションを多く行うインタラクティブな形式になっています。

Module1とModule2の間はInter-moduleとしてオンラインで複数のセッションを実施します。また、研修期間中はチームごとに課題が与えられ、主にInter-moduleで話し合いながら進めていきます。具体的には、AI、DX、エンタテインメント、モビリティなど各チームがトピックを選び、将来の経営構想を練るといったものです。

課題を設定した背景には、ソニーグループの持続的な成長を実現する上で事業間シナジーや協業の重要性が増している中で、さまざまな事業と連携し参加者が相互に学び合いながらグローバルで何かを作り上げていくことはどういうことかを肌で感じてもらい、現在や将来の業務に活かして欲しいという期待が込められています。そして、課題の最終発表・修了式はModule2で行われます。

Module2では吉田、十時をはじめとする役員との対話セッション・最終発表会も行われ、参加者は経営トップの考え方や人柄について触れることができます。また、経営者側からもグローバルにどのような人材がいるのかが分かり、双方にとってメリットのあるものになっています。

今後、「ソニーユニバーシティ」をどのように展開していきたいですか

今後は、「ソニーユニバーシティ」のコミュニティを強化していきたいと考えています。参加した年度やコースを超えて、参加者同士のネットワークの拡大と深化を図り、仕事で連携したり、相談したりできるような人脈を広げてもらいたいです。グループを横断する横串となるコミュニティを維持・強化することでグループシナジーを下支えすることを目指しています。

次世代経営人材が意見やアイディアを交錯させる場作りが、今後より重要性を増していくと考えます。一つの事業に留まらない多様なものの考え方を、一人ひとりの中に醸成していければと思っています。

ソニーグループ株式会社

代表執行役:会長 CEO 吉田憲一郎・社長 COO 兼 CFO 十時裕樹
設立:1946年5月7日 
資本金:8804億円(2023年3月31日現在)
社員数:11万3000人(2023年3月31日現在)
事業内容:ゲーム&ネットワークサービス事業、音楽事業、映画事業、エンタテインメント·テクノロジー&サービス事業、イメージング&センシング·ソリューション事業、金融事業
本社:東京都港区港南1-7-1
売上高:10兆9744億円(2022年度実績)

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