【著者が語る】人材マテリアリティ 選択と集中による人的資本経営

アビームコンサルティング 執行役員
プリンシパル 人的資本経営戦略ユニット長 久保田 勇輝

アビームコンサルティング
久保田 勇輝
執行役員 プリンシパル 人的資本経営戦略ユニット長

【PROFILE】パッケージ会社/コンサルティングファームで人事コンサルティングに従事。人事の戦略、プロセス、テクノロジーの事業責任者として、多くの企業の人事戦略策定、タレントマネジメント、DX構想から業務設計、システム構築まで一貫したコンサルティング実績を有する。

日本が「失われた30年」を取り戻すためには、競争力の強化だけでなく持続可能な事業をスピーディーな意思決定と世界規模のスケールで拡大させる価値創造経営が必要です。昨今ではPBR(株価純資産倍率)1倍割れ問題としても叫ばれ、東京証券取引所からも対象企業に対し改善策の開示・実行の要請がなされているように、日本企業にとって企業価値向上は喫緊の課題です。

このような状況の打破には、価値向上に資する持続可能な事業を創出するための事業ポートフォリオの変革が求められています。しかし、その変革にはそれらの事業を成立させるための人的資本の活用が重要です。つまり、企業競争力を強化し、そして企業価値を向上させるための原動力となるのが「人的資本経営」であると私は考えています。

日本企業における人的資本の活用には、まだまだ課題が多いのが現状です。事業ビジョンに対しバックキャストで捉えた人的投資を行うという発想が弱く、事業・経営の構想と人的資本の方向性が連動されていないことが多くなっています。また、日本企業の慣習である「過度の平等性」の重視によって人材投資が均一化され、全社員に対して一律的な施策が行われているのも現状です。

事業・経営と連動がなされないまま人的施策を実施しているだけでは、成果は上がりません。しっかりと事業・経営の戦略に即した人的資本の拡充や投資を、人材マテリアリティ(重要課題)を特定しながら、施策を“選択と集中”していくことで、事業ポートフォリオ変革に寄与する人的資本経営を実現することができるのです。

このように人的資本経営が日本企業の企業価値向上に繋がる活動であることを、多くの方により理解・実践いただくために本書を執筆しました。推進にあたっての検討のステップやフレームワークのほか、本田技研工業、レゾナック、オリンパス、愛三工業といった具体的な企業の取り組み事例も掲載しています。

本書が、企業の人的資本経営が単なる開示に留まらない、企業価値向上に向けた取り組みへと昇華するきっかけになればと願っています。

人材マテリアリティ選択と集中による人的資本経営

久保田勇輝・淺見伸之・佐藤一樹・細田俊之 著
日経BP
1,800円+税

その他の人材採用や人事関連の記事はこちら

人事専門誌「日本人材ニュース」はこちらでお読みいただけます

PAGE TOP