幹部候補への選抜と教育で女性管理職の活躍を推進【カンロ】

創業110年を超える歴史を持つキャンディメーカーのカンロは、将来の経営幹部候補を選抜して教育する「カンロ経営塾」を2018年から開始し、経営塾を卒業した女性社員が管理職として活躍している。人事部長の北島恵美子氏に選抜研修の取り組みなどを聞いた。(取材・執筆・編集:日本人材ニュース編集部

カンロ

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北島 恵美子 人事・総務本部 人事部長

事業概要を教えてください

当社は大正元年に山口県光市で創業して以来、110年以上の歴史を有するキャンディメーカーで、東証スタンダード市場に上場しています。コア事業は、飴やグミの製造・販売です。「カンロ飴」「金のミルク」「健康のど飴」「ノンシュガーのど飴シリーズ」「ビュレグミ」などのロングセラー商品を中心に、国内の販売金額において、飴市場でシェアNo.1、グミ市場でもトップレベルのシェアを誇っています。

近年は「中期経営計画2024」に沿って新規事業にも積極的に挑戦しています。新たな輸出先を開拓するグローバル事業やキャンディの新たな魅力を広めるために直営店を営むヒトツブ事業、デジタルコマース事業、フューチャーデザイン事業などに注力しています。

人材育成に対する想いを聞かせてください

当社は「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」を企業パーパスとして掲げています。その実現に向けて、社員には培ってきた技術やスキルを自ら高めていける人材であってほしいと願っています。

現代はVUCAと呼ばれる変化が大きい時代です。コロナ禍による影響もありましたが、今後も変化が加速していくことでしょうし、不連続な部分もあると思います。そうした変化に対して、常に学び続けて柔軟に対応していけるよう、自律して考え、行動していける社員を一人でも多く育てていくことが、このパーパスの実現にもつながっていくと信じています。

「カンロ経営塾」を設けた背景を教えてください

「カンロ経営塾」は、将来の経営幹部候補を育成することを目的として、毎年、係長クラスの有望な社員を全国の各拠点から選抜し、集中的に教育する選抜研修です。2018年からスタートし、現在は部長クラス向けにも展開しています。

当社の人材育成はOJT、OFF-JT、自己啓発の3つの大きな柱があり、OJTではインストラクター制度や公募制度を始めとするジョブローテーションによる育成、自己啓発では通信教育やビジネススクールの受講支援制度などを用意しています。

OFF -JTでは新人研修や階層別研修などの各種研修を実施しています。管理職研修もありますが、ただ管理職になることだけを目指すのではなく、その先の経営層まで見据えた視点を持つ社員を育成していきたいと考え、選抜研修というスタイルで「カンロ経営塾」を創設することにしました。

「カンロ経営塾」を設ける上での大きな目的は何ですか

社員の考え方がどうしても部門最適になりがちな面がありました。しかし、経営層を目指していくには全社最適で考えていくことが重要になります。そこで、選抜研修には各部門から優秀な幹部候補に集まってもらい、全社最適で考える機会を設けることによって、視座を高める、視野を広げる、視点を変えるといったことを目的としています。

サクセッション・プランの観点からも、経営を担える候補者の中から未来の経営層を輩出したいという目的がありました。有能なビジネスリーダーをピックアップし、その人たちにフォーカスを当てて学んでもらう、もっと上のポジションを目指してもらうという場にしたいと考えました。

対象者や選抜方法について教えてください

毎回、全社から8人程度の社員を選抜しており、推薦者は各部門の本部長です。本部ごとに業務内容や部下の人数も違いますので、特に人事部として詳細な選考基準を設けてはいません。係長クラスで、管理職や経営層を将来任せられそうな社員を選んでもらうようお願いしています。最終的に対象者は役員を構成員とする人事委員会で決定するという流れです。

これまでの経営塾には必ず女性も1人以上参加しており、ダイバーシティを推進する当社としては、女性活躍推進の観点から今後も女性の参加を促していきたいと考えています。

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「カンロ経営塾」グループワークの様子

研修内容の詳細を教えてください

研修期間は毎年8月から12月までの5カ月間です。期間中は毎月1回、金曜・土曜の2日間、対面形式で実施しています。

研修内容はテーマが2つにわかれています。1つが部門戦略です。それぞれが所属している部門の課題を解決するためにどんなアクションをしていくべきかを考察していきます。もう1つが未来戦略です。経営者視点で、10年後の未来戦略をグループごとに議論しプレゼンテーションします。

経営塾には執行役員も出席し、未来戦略についての受講者のプレゼンテーションに対してアドバイスをもらう場も毎回設けています。アドバイスを受け次回の経営塾開催日までにグループ内で情報収集及びディスカッションを重ね、未来戦略をブラッシュアップさせます。

さらに、執行役員との対話の時間も用意しています。最終月となる12月には全役員の前で、未来戦略に関する議論の成果をグループごとにプレゼンテーションし、フィードバックを受けます。

北島様は「カンロ経営塾」の第一期生と伺いました。参加した際の感想を教えてください

役員から経営に対する考えを直接聞いたり、プレゼンに対してアドバイスをもらえたことは大変貴重な機会となりました。日頃の業務だけでは経験できないことを経験することができました。さらに、他の部門がどのような課題を抱いているのかを把握でき、参加者同志の横のつながりも強くなりました。

研修期間中は日常の業務に加えて経営塾の課題にも取り組まなければいけないため大変で、業務の時間をどう振り分けていけば良いかは悩みました。

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「カンロ経営塾」役員へのプレゼンの様子

参加した社員のその後の活躍や取り組みの効果を聞かせてください

これまでに57人の社員が参加しました。そのうち28人が管理職になっています。中には、30代で部長として活躍している女性もいます。元々能力があったと思いますが、「カンロ経営塾」がさらに視野を広げる良い機会になっているのではないかと思います。

女性はこれまでに9人が参加し、4人が管理職になっています。女性管理職比率の向上にもつながっています。

取り組みを継続していくための難しさもあると思います。どのように対処されているか教えてください

参加者は多忙な中で「カンロ経営塾」に参加することになります。参加者や所属部署の部門長には、「なぜ経営塾を行っているのか」「どうして参加してもらいたいのか」をしっかりと伝え、理解を得た上で参加してもらうようにしています。この点が不十分だと、「日々の仕事に追われ課題に取り組むことができませんでした」と言われかねないからです。

今までに育児時短中の女性社員が参加したこともあります。経営塾は日常業務にプラスオンとなるため負担は大きいですが、上長や所属部署内の社員とも相談しながらどうしたら参加できるかを考え、他の経営塾メンバーとも協力し合いながら、全ての回に参加し無事に卒業しています。

今後さらに拡充したい取り組み内容や展望などについて教えてください

経営塾に関しては、課長クラス向けの内容を拡充させていきたいと考えています。人材育成全体では、自律的なキャリア形成を社員にもっと促していく必要があると思っています。社内公募制度は用意されていますが、その活用を推進していくとともに新たな制度の検討を進め、全社最適で考えられる社員・変化に柔軟に対応できる社員の育成に力を入れていきたいです。

カンロ株式会社

代表者:代表取締役社長 村田哲也
設立:1950年5月6日
資本金:28億6400万円
従業員数:668人(2024年6月30日現在)
事業概要:菓子、食品の製造および販売
本社:東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティビル37F
売上高:290億1500万円(2023年)

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