東京商工リサーチが全国の労働局が2月28日までに公表した「雇用調整助成金」等の不正受給件数が、2020年4月から累計1620件に達し、不正受給総額は530億352万円、1件あたり平均3271万円にのぼることが分かった。(文:日本人材ニュース編集部)

不正受給が公表された1620件のうち、東京商工リサーチが分析可能な1233社を業種別で見ると、「飲食業」(172社)が最多。
次いで、「建設業」(152社)、人材派遣や業務請負など「他のサービス業」(122社)、旅行業や美容業など「生活関連サービス業,娯楽業」(97社)、「運輸業」(86社)、経営コンサルタントなどの「学術研究,専門・技術サービス業」(86社)、「情報サービス・制作業」(56社)、「不動産業」(42社)、「医療,福祉事業」(36社)、「宿泊業」(34社)が多い。
コロナ禍の雇用調整助成金の支給に関しては、手続きを簡略化した特例措置を悪用した不正受給の摘発が相次いでいる。
参考:厚生労働省「雇用調整助成金(不正受給関係)不正受給及び自主申告について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/kochokin_husei.html
2025年2月の公表は40件だったが、結婚式場運営のアルカディアは、不正受給金額が歴代3位の10億1896万円で、元社長ら8人が詐欺容疑で逮捕された。同社は2月25日に事業を停止し破産準備に入っている。
不正受給が公表された企業のうち、破産や民事再生などの法的手続や取引停止処分により倒産したことが確認できたのは2月までで92件。92件のうち、公表日当日や公表後に倒産が発生したのは56件で、受給金額の返還が難しい状況だ。
雇用調整助成金は雇用保険料のうち事業主負担分を積み立てた「雇用安定資金」が財源。2019年度末には約1.5兆円の残高があったが2020年度末に枯渇し、それを補うために税金なども投入されている。
コロナ禍での特例措置の導入による雇用調整助成金の大規模な支給は、雇用の維持に一定の効果があったものの、1人の雇用を1カ月維持するのにかかったコストは23万円に上り、支給条件の大幅な緩和がコスト上昇につながったとの指摘もある。
参考:日本総研「コロナ禍における雇用調整助成金の効果と課題」
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=106416
「雇用調整助成金不正受給公表企業調査」の詳細はこちら
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201190_1527.html