ファミリーマートは、これまでのやり方を柔軟に変え、物事に果敢にチャレンジしていく変革型リーダーの育成を目指して、入社10年以内の若手を対象とする選抜型育成プログラムを開始した。プログラムの内容や初年度の取り組み結果などについて、同社人財開発部キャリアカウンセリング室マネジャーの南場秀樹氏に聞いた。(取材・執筆・編集:日本人材ニュース編集部)

南場 秀樹氏
ファミリーマート 管理本部 人財開発部
キャリアカウンセリング室 マネジャー(2026年2月末時点)
現在は、南九州ファミリーマート 管理部 部長
事業概要を教えてください
フランチャイズシステムによるコンビニエンスストア事業として、2026年1月末現在、国内のみで1万6400、世界中で2万5000以上のファミリーマートを展開しています。
若手向けの人材育成プログラム「未来リーダープログラムフレッシャーズ」について教えてください
未来リーダープログラム自体は過去8年実施してきました。当初は部長職級、直近は課長職級というように、管理職が対象でした。今回初めて32歳以下の入社10年以内という担当職の若手向けの内容とし、名称に「フレッシャーズ」と付けました。
期間は半年で、事業立案やいくつかのプログラムを経験してもらいます。今期は20代から30代前半の、男性12人、女性8人の計20人が対象者となりました。手挙げ制ではなく、選抜です。
具体的には、いずれも全社員を対象に実施している行動面での仕事評価、デジタルトランスフォーメーション(DX)の素養という2つのアセスメントを勘案し、リーダーシップに関するポテンシャルの高さや今後の成長期待が高いと思われる社員を選抜しました。
母体の大きさに比べて選抜人数は少なく、そういう意味では少数精鋭ではあるものの、昇進が確約されたわけではありませんし、ここでの活躍が人事評価につながるわけでもありません。

プログラムを若手向けに変えた理由は何でしょうか
大きくは3つあります。1つ目は管理職志向の若手が減ってきたことです。各種サーベイの結果を見ると、管理職に魅力を感じないという風潮が当社でも広がるようになってきており、それを打破したいと考えました。
2つ目は求められるリーダー像の変化です。当社は店舗数、売上ともに右肩上がりで成長してきましたが、今後も成長を維持するには、これまでのやり方を柔軟に変えていく必要があり、物事に果敢にチャレンジしていく変革型リーダーが求められます。
そのためには、鉄は熱いうちに打て、ということわざがあるように若手のうちからさまざまな経験を積ませる必要があり、彼ら向けのプログラムを立ち上げたのです。
最後はDXやAI活用の波の早さと大きさです。そうした変化への適応に関しては、年長者より若手のほうが得意で素養も高いという結果が、アセスメントでも見えてきていましたから、あえて若手への投資に踏み切りました。
「未来リーダープログラムフレッシャーズ」の具体的な内容を教えてください
初年度である今年度の例でいうと、2025年8月から2026年1月まで計6カ月間、全体が10日間の日程で構成されています。前半が戦略およびイノベーションの立案、後半が自己理解と判断基準の形成という2つのフェーズから成り立っています。
具体的には、8月にキックオフを実施した後、本社のある東京・田町周辺を顧客目線でフィールドワークし、5人1組となって新規事業のアイデアを出してもらうワークショップを実施しました。
9月にはシンガポールまで行き、5日間の合宿をしました。そこでは、シンガポールの小売りの現場を視察してもらったり、同世代にあたるスタートアップの現地の経営者の話を直接聞いたりしました。シンガポールの消費の最前線に触れられたことはもちろんですが、受講生は同世代の経営者のパッションに触れたことが非常にいい刺激になったようです。
10月には、先の4チームごとに、新たなビジネスプランを提案してもらいました。提案先は当社の山崎康一・最高管理責任者(CAO)です。山崎からは「若いんだから、もっと意欲的なものを期待したい」との指摘もありましたが、他社を巻き込むという取り組みも提案され、意欲的なものが多かったように感じました。そもそも役員向けのプレゼンは初めてというメンバーばかりで、これ自体がいい経験になったようです。
11月は群馬県の山間部で行われる2泊3日の国内合宿です。ここでは、新事業プレゼンの時とは違う5人のグループに分かれたうえで、各自、自分の過去から現在までを振り返りながら、モチベーションが変動した様子を深掘りしてもらい、自分の根底にある価値観や大切にしている軸を浮き彫りにしていく内容です。
そうして最後、「リーダーシップ宣言」と称し、今後こういうことを大切にしていきたいと、皆に宣言します。
その内容を職場や生活で実施するのが12月と年を越した1月の2カ月間です。最後のプログラムとして、1月の後半に、その2カ月間の振り返りと課題、それに今後の抱負を「マイチャレンジ」と題して発表してもらいます。

半年間、受講生たちに伴走してみての感想を教えてください
私は以前の部長級、課長級が対象の未来リーダープログラムも運営側にいました。そうした管理職層が対象の時代と比べ、今回は受講生の成長や伸びしろを一番強く感じました。
20人の中には、当初、「なぜ私が選ばれたのかわからない」とか「私は皆の先頭をいくリーダーにはなりたくない」といった消極的な社員もいましたが、最終発表時にはそうした前言を翻すようなリーダーぶりを発揮していましたし、彼らが定着し本気で取り組むことで会社への貢献期間はベテラン層よりも当然長くなり、会社への大きな貢献にもつながると実感しました。
受講生の感想はどうでしたか
事後アンケートを取ると、満足度は全員、非常に高かったです。一方で、「実際に宣言したような行動が取れていますか」という質問に対し、はいと答えてくれたのが7割くらいでした。
私たちとしては全員が肯定してくれるのを期待していましたが、現業が忙しかったり、何かを変えるためには上長の承認を必要とする案件があったりするので、全員がそう答えるのは難しいのかもしれません。
「リーダーシップとは役職者が発揮するものだと思っていたが、今の立場でも、周囲を巻き込んで動くことがリーダーシップの重要な側面であることを自覚できた」「これまでの業務では『できない理由』を探していることが多かったが、これを受講し、『どうしたらできるのか』をまず考えるようになった」という感想があり、うれしかったですね。
受講生同士のネットワークが深まったことも大きな成果です。当社も組織が多層化しており、部門を超えた人脈ができにくいのですが、この20人に関しては、困ったことやわからないことがあった場合、すぐに連絡が取れるように、緊密な絆ができあがったようです。
最終的に8割の社員が変革リーダーとしての自覚を強く持てたと回答してくれましたので、初回のプログラムは成功だったと思います。
経営層から求められていることや、今後の展望について教えてください
先ほどの山崎に、全プログラムのレビューとあわせ、前述したように、受講生の行動変容が7割にしか達していないという反省点も伝えたところ、「行動まで変えるのは至難の業で、マインドセットまでできていれば合格点」と言ってもらいました。
過去の受講生が今回、ビジネスプランの壁打ち役となってくれたのですが、今年度の受講生も、今後、そういう経験者という形で参加してもらったらいい、というアイデアも山崎からもらいました。
来年度は基本的な流れや選抜法は変えないものの、彼ら過去の受講生にも協力してもらいながら、このプログラムの趣旨や内容など、事前の説明にはより力を入れいくことにより、参加者への効果アップだけではなく、過去に参加したメンバーの更なる成長にもつなげていきたいと考えています。
(2026年2月24日インタビュー)
株式会社ファミリーマート
代表者/代表取締役社長 小谷建夫
設立/1981年9月1日
資本金/166億5900万円
従業員数/5574人(2025年2月末)
店舗数/24620店(2025年2月末)
本社/東京都港区芝浦3-1-21
売上高/3兆2438億8800万円(2025年2月期、チェーン全店、国内エリアフランチャイズ含む)
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