人材採用

【日本MSセンター】管理部門に特化した人材紹介業から人と情報のマッチングビジネスへ

人材紹介サービスの市場がまだ黎明期だった1990年に会計事務所の採用支援事業からスタートした日本MSセンター。会計事務所のネットワークを生かして、企業の管理部門を担う人材紹介業で成長した。常に時代の流れを掴んだ戦略で、人材紹介の枠を超えたビジネスも積極的に展開している。代表取締役の有本隆浩氏に同社のビジネス展開について聞いた。

日本MSセンター

日本MSセンター
有本 隆浩 代表取締役

創業の経緯を教えてください。

大手総合情報サービス会社を退職後、経営コンサルティングを行っていた27歳の頃、会計事務所と接点を持ったことがきっかけでした。会計事務所は人材の渇望感が強く、新聞求人欄の限られたスペースでは事務所の特色を出すこともできず、常に採用で頭を悩ませていることを知りました。元々独立志向が強かったこともありますが、ここに大きなビジネスチャンスがあると思い、1990年に当社を設立しました。

会計事務所に特化した採用支援サービスを日本最大級の会計専門学校とタイアップし、会計事務所専門の求人誌制作、就職フェア開催など、会計業界の採用支援に特化したニッチ事業をスタートしました。同じ頃、別のプロジェクトにも携わっていました。採用難に喘いでいた関西の繊維業界が行政から雇用促進支援を受け、3カ年の人材獲得プロジェクトが発足されました。それを統括するコンサルタントとしての就任依頼があり、事業計画の立案から実行までの推進役として携わりました。

これまで世の中に無かった、この2つの新規事業が当社の礎になっています。会計事務所の採用支援事業は、現在のビジネスの根幹である管理部門に特化した人材紹介サービスから未来のマッチングビジネスにつながっていきます。

人材紹介事業開始の背景を教えてください。

会社設立以来、2つの新規事業の業績は順調に伸びていましたが、バブル崩壊後、景気の底冷えとともに、企業の求人ニーズも激減しました。当社も景気の影響を受け、新たな事業を模索する中、当時未成熟な市場であった“人材紹介”にビジネスチャンスがあると考えました。やる以上は、唯一無二のナンバーワンになるという強い信念のもと、95年に史上最年少(当時)で人材紹介事業の許認可を取得し、事業を開始しました。

当時、大手企業が経理や総務などの管理部門を中心に、大リストラを敢行していた中、当社はあえて管理部門に特化した人材紹介をスタートしました。必ず数年後に大手企業を中心に管理部門の採用ニーズが高まる時が来ると確信し、また会計事務所のネットワークインフラを確立していたことが理由としてあります。予測通り、新卒採用を中心とした年功序列の雇用体系が崩れ、95年から大手企業が管理部門を中心に、キャリア採用を始めました。

以降、国際会計基準の導入等による規制緩和で紹介できる職種の幅が広がり、上場企業がUSGAAPに精通した人材を必要としたこと、ナスダック・ジャパン(現ヘラクレス)等の新興市場の上陸により、IPOに長けた人材のニーズが高まったことなど、時代の流れも追い風となり、順調に成長を遂げてきました。この頃、ベンチャーキャピタルとのアライアンスをスタートしています。

また、これまでなかった会計士の新しいビジネスフィールドを創造しました。それまで会計士のキャリアといえば、監査法人に就職して経験を積むか、独立開業するという道しかありませんでした。しかし、不況の影響で監査法人の受け皿が足りなくなり、会計士の就職浪人が出始めていました そこで、会計士の新たなキャリアデザインを創造し、企業への紹介等あらゆるキャリアソースを提案しました。これにより会計士のキャリアフィールドが広がり、あらゆる方面で会計士が活躍できる領域が生まれました。

人材紹介事業の特徴を教えてください。

当社の人材紹介事業は、現在では事業全体の約9割を占めるコアビジネスに成長しました。社内組織は、外資系、大手企業、ベンチャー企業、金融関連、会計事務所・監査法人などの専門部隊に分かれています。当社のノウハウは「MSスキル」と呼ばれる職種に合わせた独自のキャリアスキルシートに表れます。

管理部門の転職はパーソナリティーより明確なスペックが重視されますので、このシートによって、迅速に、適材適所に供給する仕組みができています。また、人材紹介に最も重要なのは、マッチング力だと考えています。人材紹介は人が介在するからこそ意味があり、コンサルタント一人一人の能力を高めることを非常に重視しています。コンサルタントにとって重要な洞察力、マッチング力、そしてヒアリング力を向上させるための教育に力を入れています。

同時に、会社の規模が拡大するにつれて、システム化を進め、リクルーティングアドバイザー(企業担当)とキャリアコンサルタント(求職者担当)の分業化を試みてきました。しかし、当社が得意とする専門分野に特化した人材紹介を行うためには、コンサルタントが企業の採用ニーズを綿密にヒアリングし、キャンディデイトを選択する仕組みが最適だと考え、転換を進めています。システムに頼りすぎると、人材紹介の存在価値そのものが危うくなるのではないかと危惧しています。

人材紹介事業以外のビジネスも展開していますね。

当社は人材ビジネスを、企業経営をサポートするためのマッチングビジネスの一環と考えています。企業には人材面に限らず、様々な経営課題が生じます。管理部門に特化する人材紹介会社としてのポジションを活かし、会計や財務などの課題解決に貢献したいと考え、「J-net事業」という会計事務所や会計系コンサルティングファームを企業に紹介するビジネスを展開しています。

企業が経営課題を解決するためには、時に人材を採用するよりも、新たな専門アドバイザーに依頼する方が、より良い解決につながる場合があります。各企業が必要とする分野に強い会計事務所を無料で紹介することが同事業の特徴です。

会計事務所のネットワークインフラを持ち、各事務所の得意分野を十分把握している当社だからこそ、企業のニーズに最も適した会計事務所を紹介することができます。人材紹介事業と、J-net事業をリンクさせ、企業経営を多角的にサポートできる体制は当社の強みとなっています。

今後の事業展開について教えてください。

日本の中小企業には、新しい技術や発想があります。次の時代の新しい価値が眠っているビジネスの宝庫です。これらを引き出すための事業展開を考えています。これは、当社だけで取り組むのではなく、複数の企業に参画してもらい、“本物”の製品や技術、サービスを世に出すお手伝いをするというものです。会計事務所のネットワークとこれまで培ってきたマッチングノウハウを基礎に、「マッチング」というものを経済全体の中で捉えた“人と情報のマッチングビジネス”として、世の中に新しい価値を発信していこうと考えています。

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