トランストラクチャ
林 明文 代表取締役
日本企業の人事管理は十分なレベルにあるのだろうか。長年人事コンサルティングに従事している中で、人事管理のレベルについて疑問に感じることが多い。大きく環境変化する中で、人事については環境変化に早いスピードで柔軟に対応していると言えない企業も多くみられる。
経営方針・計画が変化すれば必要な人材も変化する。大きな変化であればあるほど、人材のタイプや量も大きく変化をすることになる。当然人事制度も変化に対応しなくてはならない。
現実の人事管理のレベルは、あまりにも“合理性”に欠けている。本来日本における人事管理は、経営計画を達成するために必要な人材を整備すること、人材が高いパフォーマンスを上げること、良好な人事の状態が中長期も継続できることが必要な要件である。
多くの人事管理の議論が、モチベーションなどの一部のパフォーマンス議論になりがちである。パフォーマンスの議論の重要性は否定しないが、それ以上に人材の量的な管理も重要である。
経営計画が大きく変化するならば、会社全体の人数も大きく変化するし、その内訳も大きく変わるはずである。必要とされる知識・能力も変化するだろう。多くの企業は、適正な人員数、人員構成という観点が十分認識されていない。
人事管理が経営の中で重要性が高いことは認識されているが、実際に人事管理が経営にどの程度の貢献ができるかは証明されていない。今後の日本の企業は少子高齢化の中でより成長していかなくてはならない。非常に困難な課題が提示されている。
人事的には高齢化や人材不足の状況でより生産性を上げていくことが求められている。人事の問題はより深刻度を増し、この課題を克服しなければ高い成長は望めない。人事管理の存在意義や重要性が問われているとも言えるだろう。
より経営に貢献するためには通用しない過去の発想から脱却して、“合理的”かつ“科学的”な視点に立って、人事管理を再検証しなければならないだろう。経営に貢献する人事管理とは何かを根本から議論する必要がある。
林明文 著
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