【著者が語る】「良い感情の連鎖」が空気を変える ワクワクする職場をつくる。

ジェイフィール

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高橋 克徳 代表取締役社長

組織にも感情がある。特に、職場という空間の中では、一人ひとりの感情が連鎖し、職場全体があたかも一つの感情を持ったようになります。私たちはこれを「組織感情」と定義し、多くの企業で職場の感情を診断してきました。

2012年までと、それ以降のデータを比較すると、「ご機嫌な職場」という良い感情状態にある職場は3割程度と変わらなかったのですが、ギスギス感情や冷え冷え感情という不快な感情が部分的に高まっている「要注意職場」が増えていました。

さらに良く見ると、その中でも特に、「あきらめ感情」が強い職場が増えている。「どうせ何も変わらない」「今をやりすごす」「我慢しよう」という感情が、組織全体に蔓延している。さらに、「目立たないでいよう」「最後は誰かがやってくれる」というぬるま湯感情が強い職場も増えている。

目の前の仕事に追われる日々を繰り返す中で、何も変わらない、変えられないという感情が職場全体に広がり、現状に向き合うことも、未来への思いを持つこともできなくなる。あなたの職場も、こんな職場になっていないでしょうか。

でも、こうした状況になりかけているからこそ、どうにかしたいという思いを持って踏み出していく人たちも増えています。ここ数年、私たちに相談に来る人たちも変わってきました。

これまでは人事部や経営企画部といった本社系の部門が中心でしたが、ここに来て事業部や研究所、生産本部など現場の責任者やリーダーから直接依頼を受けるケースが増えてきたのです。

自分たちの職場をどうにかしたい、もっと活力を取り戻して、組織力が発揮できる、未来志向で革新を起こしていける職場に変えたい。そんな思いをもって、自分の周囲から変革したいと動き出す人たちが増えているのです。

そんな人たちを支援していく中で、大切なことがはっきりと見えてきました。それは、「感情と向き合い、関係が変わると、組織が動き出す」ということです。

問題を指摘して、解決策を考える前に、自分の感情と向き合ってみる、互いの感情を伝え合ってみる。そこに、このままでは良くない、どうにかしたいという思いと、小さな一歩を踏み出した人たちの経験や行動を重ね合わせていく。

すると、みんなが心の奥底にしまった、本当はもっと働く喜びを実感したい、同僚を仲間だと思えるようになりたい、夢や志を持ちたいといった思いが徐々に引き出されてくる。

でも、思いがあっても、みんなが目の前の自分の仕事にだけ閉じこもっていては、何も変えられない。そこで、お互いが成果を出すためにも、良い仕事をするためにも、相互支援が当たり前のようにできる仕事のやり方へと革新していく。

そして最後は、今を問い直し、究極の未来を描き、未来にワクワクする感情が連鎖していく組織へと進化させていく。

こうした関係革新、仕事革新、未来革新という3つのステップを踏んでいくと、あきらめかけていた気持ちから抜け出し、目の前の仕事の仕方を変え、未来に向けて組織全体が動き始めます。

トップダウンで変革宣言をする、制度や仕組みをつくるだけでは、心からの持続的な行動を生み出すことができません。一人ひとりの心が動き出すために、感情起点、関係起点で革新を起こすことが必要なのです。

組織も自分もあきらめないでください。自分たちから変革は起こせる。そんな思いの連鎖が社会全体に広がってほしいと願っています。

ジェイフィール

高橋克徳・重光直之 著
実業之日本社、1400円+税

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