企業経営を強くする社外取締役は、リテーナーサーチで探し出す~エグゼクティブ採用の課題(3)【リクルートエグゼクティブエージェント】

経営層、エグゼクティブ層に特化した人材紹介サービス事業を展開するリクルートエグゼクティブエージェントが「社外取締役サーチサービス」を開始した。企業経営を強くするための社外取締役が必要とされる背景やサービスの狙いについて、波戸内啓介社長に話を聞いた。

リクルートエグゼクティブエージェント

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波戸内 啓介 代表取締役社長

1989年、リクルート入社。営業部門、企画部門責任者を経て、リクルートHRマーケティング関西等、グループ会社の代表取締役社長を歴任する。2011年4月から現職。

社外取締役として最適な人材を企業に紹介する新しいサービスを開始されています。社外取締役に関する企業ニーズについて教えてください。

会社法改正や証券取引所のルールなどで社外取締役の導入を求める動きが広がっています。今までも主にグローバル展開している企業などが導入していましたが、事実上必須になってこようとしています。実はすでに東証一部上場企業の7割以上に社外取締役はいるのですが、独立性をあまり考慮せず導入している企業も多く、取引先の役員が入っていたり、親族や社長の関係者がなっている例も見られます。

社外取締役の独立性がこれまで以上に問われるようになると、現在の社外取締役のままでは難しくなる可能性があります。企業は社外取締役の新たな役割を暗中模索で検討し始めている状況です。このような社外取締役を必要としている企業のニーズに応えるべく、「社外取締役サーチサービス」をスタートさせました。

特定の人材に就任要請が集中し、企業独力での登用は困難に

●業界別の社外取締役選任状況

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(出所)リクルートエグゼクティブエージェント「東証一部上場企業の売上上位500社の各種人事情報より分析」

●社外取締役就任者の属性

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(出所)リクルートエグゼクティブエージェント「東証一部上場企業の売上上位500社を中心とした調査結果」

これからの社外取締役の役割をどのように考えていますか。

社外取締役の導入にあたっては、企業は真の経営アドバイスをしてもらえることを求めるようになってきています。そういう意味でも、これからの社外取締役には新しい事業展開やグローバルなビジネスを理解できるような経営の経験者が理想的ですね。また、社外取締役には経営内容に対して第三者の視点で指摘するという役割があります。経営者にとっては耳障りなことがあるかもしれませんが、でもそれが企業成長にはすごくプラスになっていくと思います。

一方、社外取締役も経営に意見するためには勉強しなければいけませんし、十分な準備が必要です。現在は、5社以上の社外取締役に就任されている方もいらっしゃいますが、今後は3社前後までしかお引き受けされない方も増えてくるのではないでしょうか。

現在の社外取締役の課題は?

このような社外取締役の役割を考えたときに、今これだけビジネスモデルの変革やIT化が進んでいる中で東証一部上場企業の売上上位500社の社外取締役の約6割が70歳以上とも言われています。社外取締役は年齢ではなく経験や能力で選ぶことが大切ですが、日本企業が抱えているグローバル対応やIT活用などの事業課題に対応できる社外取締役候補となれば50代後半から60代がもっと増えてくると思います。

社外取締役に求める役割を明確化することが肝要

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(出所)リクルートエグゼクティブエージェント「企業インタビュー」

社外取締役を登用するときに、どのような能力を持った人材がふさわしいでしょうか。

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社外取締役は経営や専門分野のプロフェッショナルです。コンプライアンスやガバナンス、組織体制の強化、海外事業の拡大、新規事業開発、女性の視点でのマーケティング、あるいは企業買収を含めたM&Aのアドバイスなど、自社をさらに成長させていくために何が必要かという具体的な要望を明確にすることが肝要です。そこをあいまいにしていると最適な人材を社外取締役に迎えることができません。

その点では、他の企業の経営幹部として経験した人材の知見を自社の課題解決に活かしたいと考える企業は増えてきていますが、自社が求める役割と独立性を担保できる人材を企業独力で探すには限界があります。そのため、当社へのリテーナーサーチを依頼いただく機会も増えていきています。

社外取締役として人材をスカウトしたケースを教えてください。

コンプライアンスを強化する必要に迫られていた企業から、その分野の権威や専門性の高い人材を外部から探さなければならないという相談を受けました。社外取締役の候補者は転職市場にはいないため、人材をリストアップし、社外取締役1人と社外監査役2人の計3人を迎えることに成功しました。各方面から信頼される人物を登用することで、会社として真剣にコンプライアンス問題に取り組む姿勢がステークホルダーや関係官庁などに明確になり、適切なアドバイスに基づいて経営改革が行われていくことで信頼を回復しました。

食品メーカーからは、マーケティングに長けた社外取締役という相談がありました。この案件もリテーナーサーチによってマーケティングに精通した女性の経営幹部経験者を探し出し、迎え入れることができました。その方は、社外取締役として月一回の取締役会へ出席するだけではなく、毎週のように社内の関係者とディスカッションを重ねるなど精力的に関与し、依頼企業の社長から高い評価をいただいています。

多様な人材候補のリストを有し、探索~打診~条件調整~アフターフォローの全プロセスで支援

●リクルートエグゼクティブエージェント「社外取締役サーチサービス」が提供する価値

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社外取締役サーチサービスの具体的な内容を教えてください。

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今後、社外取締役には、外部の立場でありながら、参画する企業の事業課題を的確に捉えて、必要なタイミングで、有効なアドバイスを行っていくスキルが一層求められてくると考えます。そのように難しい役割を担うことのできる人材を責任をもってご紹介していくため、当社では社外取締役専門のチームを作り、高度なノウハウを蓄積したコンサルタント6人が担当しています。

企業から相談いただいたら、コンサルタントが経営戦略や今後の事業展開など様々な状況を考慮しながら関係者とディスカッションし、求める能力や人物像を明確にした上でサーチに入ります。その中でクライアントの課題によって、候補者に優先順位をつけ、コンサルタントが接触して社外取締役への就任を打診し、面談の場をセットします。企業が直接打診して双方の関係が悪化してしまうようなことを防ぐためにも当社が窓口となる機能は重要です。

社外取締役として迎えた後に、万が一、会社側が求める人物像との違いがあると判断された場合には、当社のコンサルタントが間に入ってフォローすることも可能です。コンサルティングフィーですが、一般的にリテーナーサーチでは年収の35%、あるいはミニマムフィーが700万円などですが、社外取締役の報酬は一般に800 ~ 1200万円程度ですので企業からするとハードルが高いと感じられると思います。

そこで、当社の「社外取締役サーチサービス」では年収にかかわりなく一律で450万円としています。社外取締役制度が日本で確立するために企業の導入をサポートするという社会的な意義を考えて、分かりやすく利用しやすいサービス体系になっています。

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