【カタナ・パフォーマンス・コンサルティング】行動をエンジニアリングする(第2回)「経営指標」で従業員の行動を変える

多くのグローバル企業でコンサルティングを実践してきたカタナ・パフォーマンス・コンサルティング代表の宮川雅明氏は、企業の社会性を重視した評価や人材の活用が求められている中で、事業戦略と従業員の行動をつなげるためのマネジメントを実践するためには、適切な指標を用いることが大切だと指摘する。

カタナ・パフォーマンス・コンサルティング
宮川 雅明
代表取締役

予算制度が従業員の行動指針になっていない

 多くの企業に対して感じることの一つは、マネジメントの基礎になる予算制度が従業員の行動指針になっていないということだ。数値をどう設定するかという議論が中心で、その数値を達成するための対策と行動があまり議論されていない。予算制度が、「これをやらなければならない」と従業員の行動を喚起したり、行動を変えるものとして理解されていないので、従業員は数値だけを見て右往左往している。

内部マネジメントから考える視点に立つ「経営指標」

 こうしたマネジメントの現状を踏まえ、様々な指標を整理し、事業戦略と従業員の行動をつなげるための「経営指標」が必要ではないかと考えている。経営指標と言うと財務指標が想定されて、財務指標以外は非財務指標と言われることもあるが、マネジメントの基本は、行動と結果をバランスよく見てPDCAを回すことであるから、結果を示す財務指標が主ではないはずで、むしろ、マネジメント指標と非マネジメント指標(財務指標)と考えるのが適切ではないか。

 評価において結果はもちろん大事であるが、結果主義に陥らないための仕掛けが必要で、近年は従業員がわくわくもしないような財務指標を中心に結果主義で考える傾向が強すぎるように感じている。社会に長期的な価値を実現できるか、事業継続のためにどう人材を育成するか、仕組みが効果的に動いているかなど、企業のあるべき姿に近づくためのプロセスを財務指標で評価することは難しい。

 そして、経営指標は内部のマネジメントから考える視点に立つもので、デュポンシステムのように財務指標からブレークダウンした指標だけではない。例えば、売上という指標を考えるならば、販売単価、販売量、継続率について、財務指標では表すことができない様々な要素を考慮しなければならないが、その要素やそれぞれの重要性は、その企業が持つ特性や培ってきた知恵を全て集約した指標になる。

●売上という指標を考える視点の例

予算制度を対策と行動のシミュレーションに変える

 「経営指標」の考え方をすでに取り入れている企業でも、最初から全面的に導入しているわけではなく、まずは、現行の予算制度における議論の進め方を修正していくことが、あるべき姿に近づけていく近道になっている。数値をどう設定するかの議論をできるだけ減らし、その数値を達成するための対策と行動を中心に、対策ごとに期待できる結果や難易度に応じて従業員に求める行動を議論する。

 そして、結果だけで評価すると外部環境の影響などによって判断を誤るので、決定した対策そのものが有効であったのか、行動は徹底されていたのかを検証するという意識が大切だ。予算制度を対策と行動のシミュレーションに変えると、マネジャーも部下に対して数値を与えるだけでなく、どうしたら達成できるのかを一緒に議論するようになる。そうすると、職場のコミュニケーションが良くなり部下のモチベーションも高まっていく。経営指標はマネジメントの質を高めるために使われるものなのだ。

マネジメントの基盤を整えるための教育に投資を

 マネジメントを進化させるためには、企業の「共通言語」を整えることが欠かせない。私が長く支援しているグローバル企業では、MBAプログラムをコモディティ化した内容を使い、経営やマネジメントの基本を従業員全員が身につけることを徹底している。もちろん企業のDNAである理念や歴史も共有する取り組みが行われている。

 従業員が共通言語を共有していないと議論が噛み合わないので、マネジメントが進化しない原因になる。マネジメントの基盤を整えるための基本的な教育プログラムへの投資は不可欠だ。もう一つ重要な点は、自身の仕事だけではなく外部に広く関心を持つ、視座の高い従業員を育てることだ。私が経営指標を、社会的指標、マクロ指標、マネジメント指標の順に位置づけているのは、社会全体の課題は何か、グローバルにどう変化しているか、経済全体の動きといったことを一人一人がよく考えて仕事をするべきと考えているからだ。

 共通言語やフレームワークを備え、高い視座を持つ従業員が増えれば、外部環境、事業戦略、組織体制、製品やサービスといった複雑な要素を統合しながら、経営指標を軸に一体となってPDCAを実践できる強い組織に近づいていく。

人事部門が果たす役割と必要な視点

 マネジメントの仕組みとして、人事制度は重要だが、それは最後に議論すべきだろう。私は様々な企業に関わってきたが、人事制度を変えるだけのコンサルティングが一番難しい。人事制度を変えるだけでマネジメントが良くなることはほとんどないからだ。

 人事部門には、戦略と行動をつなぐマネジメントを現場が実践できるために何ができるかを高い視座で考えてほしい。そのためには、人事部門こそが社会的指標やマクロ指標の視点が欠かせない。そして、人材に必要な能力として創造力がますます求められる時代になっている。答えを検索するのではなく創造することができる人材をどのように育て、活躍の機会を与えるか。人事部門の重要な役割だ。

カタナ・パフォーマンス・コンサルティング株式会社

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