コンサルタントを中心としたハイエンド人材の正社員採用、フリーコンサル、スポットコンサルなどの複合的なサービスを展開し、3月に東証グロース市場に新規上場したアクシスコンサルティング。代表取締役社長の山尾幸弘氏に事業内容やビジネスモデルなどを聞いた。
アクシスコンサルティング
山尾 幸弘 代表取締役社長
【PROFILE】1962年生まれ。味の素ゼネラルフーヅ(現、味の素AGF)にて営業・マーケティング業務を担当。1992年国内系エグゼクティブサーチ会社に入社。IT、製造、通信、サービスなどさまざまな業界、大手からスタートアップベンチャーまで、幅広い企業ステージのエグゼクティブサーチを手がける。同社取締役を経て、2002年アクシスコンサルティング設立、代表取締役社長就任。社会や企業の課題解決、価値創造を推進するハイエンド人材が持つ才能・力を社会の隅々まで届けるため、ハイエンド領域の人材紹介事業、スキルシェア事業の複合ソリューションを確立・展開。
事業内容を教えてください。
当社は、企業が直面する課題や人材のキャリアニーズに応じた複合的な人材サービスを、適切なタイミングで柔軟に提供しています。具体的には、人材紹介事業とスキルシェア事業という二つの事業のもと、四つのサービスを展開しています。
いずれの事業においても共通しているのは、DX(デジタルトランスフォーメーション)、ハイエンド人材、コンサルティング領域を対象としている点です。
人材紹介事業では正社員採用を支援し、コンサルティングファーム向けの人材紹介が当社の祖業です。現在では大手コンサルティングファーム在籍者の約4人に1人が当社に登録いただいています。グループ会社のケンブリッジ・リサーチ研究所では事業会社向けの人材紹介を手掛けています。主にCxOや経営幹部人材、ポストコンサル(コンサルティングファーム出身者)などを対象としています。
一方、フリーランスや副業・兼業をされている方を対象としているのがスキルシェア事業です。「フリーコンサルBiz」というサービスで、企業のさまざまな事業課題の解決や価値創造に向けたプロジェクトを推進するために、フリーランスのコンサルタントの活用を提案しています。当社が扱うフリーランス案件は高単価で、2022年実績では平均150万円超となっています。
スキルシェア事業では、2022年7月にスポットコンサルサービス「コンパスシェア」を開始しました。こちらは現役コンサルタントの副業を支援するサービスです。企業からすると、比較的リーズナブルな価格でコンサルタントに相談ができるデジタルプラットフォームになっています。
このようにDX、ハイエンド人材、コンサルティング領域で人材紹介とスキルシェアの複合的な人材サービスを提供している会社は他になく、オンリーワンの存在だと言えます。
ビジネスモデルの特徴はどのようなところにありますか。
コンサルタントを中心としたハイエンド人材との中長期的な関係を構築する機能・仕組みが当社の競争力の源泉で、リカーリングビジネスの考え方のもと事業を運営しています。
リカーリングビジネスとは、製品やサービスを一度提供して終わりではなく継続的に収益をあげるビジネスモデルですが、当社グループのリカーリングビジネスは、企業側(発注者)が直面する課題と人材側(候補者)が求めるキャリアニーズに応じて、正社員採用、フリーコンサル、スポットコンサルの各サービスを適切なタイミングで柔軟に提供し、中長期的には、発注者が候補者、候補者が発注者となり継続的にサービスを活用できるユニークなビジネスモデルです。
一般的に人材ビジネスでは、人材ニーズが顕在化した企業と今すぐに転職したい人をマッチングするのがスタンダードです。スピード感はありますが、即時的なマッチングになりがちなため、当社ではこうしたモデルとは一線を画してきました。
転職はあくまでも手段であって、候補者がいかにスキルアップ、キャリアアップ、自己実現していくかが重要です。候補者のキャリアに中長期で伴走していくエージェントを目指したい、というのが当社設立の一つの理由でもあります。転職支援だけでなく、副業や独立なども支援できるようにサービスのバリエーションがあるのはそのためです。
こうしたハイエンド人材との中長期的な関係を構築する機能・仕組みがあることによって、継続性という観点からクライアント企業とも中長期的な関係性を構築することができています。特に昨今は、フリーランス活用等のスキルシェアリングのニーズが拡大していることもあって、人材紹介だけでなく、スキルシェアサービスも組み合わせて利用いただくことが増えています。
●サービスラインアップとリカーリングビジネスの事例
企業の人材課題をどう捉えていますか。
多くの日本企業において、経営や事業の課題に対処できるハイエンド人材の不足が顕著になっています。DXはもちろんのこと、事業再編、収益力強化、海外展開、新規事業など、課題はますます複雑化しています。そして、あまりにも市場の変化が早いために既存の社員だけでは対応が追いつかず、また従来型の採用手法だけでは人材獲得が難しくなっています。
当社はコンサルティングファーム向け人材紹介を祖業としていますが、コンサルティングファームには幅広い業種・職種からハイエンド人材が集まっています。コンサルティングファームで経験を積んだコンサルタントが転職や独立をし、その専門性を多くの企業が有効活用できるようサービスを強化していきます。
当社は創業以来「人が活きる、人を活かす。」を理念に掲げ、「人的資本の最大化・最適化・再配置」を謳い続けてきました。近年、人的資本に対する注目が急速に高まっていますが、当社では20年前から人的資本を重視する考え方を持ってきました。
DX、ハイエンド人材、コンサルティング領域で日本企業の人的資本を強化するために、人材紹介とスキルシェアの複合的なサービスを提供できる唯一の存在として、より多くの企業に伴走していきたいと考えています。
DXを推進する企業やハイエンド人材に対応するキャリアアドバイザーには高いレベルが求められると思います。
今後も安定的かつ継続的に高品質なサービスを提供していくためには、キャリアアドバイザーの採用や教育は非常に重要です。
特に力を注いできたのは、チームビルディングやナレッジの共有、マネジメント層の育成です。人材サービスはどうしても属人的な仕事に陥りがちです。しかし当社では担当が一人で対応するのではなく、組織全体でカバーできる仕組みを大切にしています。
誰が担当しても高品質なサービスを届けられる組織となることで「さすがアクシスコンサルティングだね」との声をいただけるよう、より高いレベルを目指します。
業績はどのような状況ですか。
コロナ禍で人材紹介業界全体の成長は鈍化しました。ただ当社は常にニーズが高いハイエンド人材に注力していることもあって、おかげさまで業績は順調で、人材紹介事業の2022年6月期の売上高は23億4000万円となっています。
一方、スキルシェア事業はフリーコンサルサービスの事業基盤が整備され、高い成長を実現しています。スキルシェア事業の売上高は2021年6月期の5億8600万円から2022年6月 期 は11億7200万円へ拡大しました。2022年7月にサービスを開始した「コンパスシェア」も順調で、コンサルタントの登録者数は当初計画を大きく上回っています。それに伴って、企業からの問い合わせも増えています。
人材紹介事業に加え、スキルシェア事業が拡大して複合的なサービスをしっかりと提供できるようになってきたことは、上場を考える上で大きなポイントの一つになりました。
アクシスコンサルティング単体の売上高は、2018年6月期の11億3700万円から2022年6月期の30億800万円へ伸び、年平均成長率は27.5%となっています。
上場の狙いや今後の事業方針を教えてください。
社会経済環境が大きく変化していく中で当社が果たすべき役割を考えたとき、祖業である正社員紹介に加え、スキルシェア事業のフリーコンサル、スポットコンサルが揃い、複合ソリューションが提供できるようになったため、上場に値するビジネスモデルであると決断しました。事業を通じて、新しい価値を創造するためのパートナーとしてさらに大きな役割を担いたいです。
今後の事業方針ですが、まずは既存の二つの事業・四つのサービスにおいて、リカーリングモデルによる事業拡大を追求していきます。新たにスタートした「コンパスシェア」により、現役コンサルタントの登録者数を引き上げ、データベースの総量を増やしていきます。
将来的には蓄積したデータベースを活かした新規領域の展開も視野に、さまざまなソリューションパートナーとも協力しながらより良いサービスを提供できたらと考えています。
【COMPANY PROFILE】
アクシスコンサルティング株式会社 https://axc-g.co.jp/
代表者:代表取締役社長 山尾幸弘
設立: 2002年
所在地:東京都千代田区麹町4-8 麹町クリスタルシティ6F
TEL:03-6273-4106
従業員数:単体100人、連結117人(2023年3月末)
事業内容:人材紹介事業、スキルシェア事業