インターンシップの満足度が新卒採用成功の分かれ道 学生の心をつかむ効果的なインターンシップとは

25年卒学生の選考から一定要件を満たした場合に限り、インターンシップで得た学生情報を採用活動で活用できることになった。
その結果、新卒採用におけるインターンシップの重要性が高まっている。また、インターンシップの満足度は、学生の志望度にも影響することから、新卒採用では今まで以上にインターンシップに力を入れる必要が出てきた。
では、採用活動の成功につながるインターンシップとは、具体的にどのようなものなのだろうか。
この記事では、25年卒学生におけるインターンシップの参加状況と満足度、インターンシップを行う上で留意・工夫すべきポイントなどを見ていく。記事の後半では、インターンシップでの見極めポイントや、生成AIをインターンシップの企画作成に活用する方法を日本人材ニュース編集部が解説する。(文:日本人材ニュース編集部

日本人材ニュース

25卒学生におけるインターンシップの状況

まず、インターンシップに参加した学生の状況と、満足度が高いインターンシップの特徴を見ていこう。 「doda キャンパス」に登録する2025年卒(調査当時大学3年生、修士1年生含む)を対象に、インターンシップに参加した企業数を質問したところ、以下のような回答が得られた。1位は「4~6社」(20.4%)、2位は「10社以上」(18.5%)だった。

【インターンシップに参加した企業数】
0社:18.0%
1社:11.7%
2社:12.0%
3社:12.0%
4~6社:20.4%
7~9社:7.5%
10社以上:18.5%

また、この調査では、1社以上(「1社」から「6社以上」と回答した学生の合計)の選考に進みたいと答えた学生の割合は、全体の87.2%にのぼることがわかっている。つまり、約9割の学生がインターンシップに参加した企業の選考に進みたい意向を持っているということだ。

(出所)「25年卒(現大学3年生)夏のインターンシップ」に関する調査(株式会社ベネッセ i-キャリア)

では、学生にとって満足度が高いインターンシップとは、具体的にどういうものなのだろうか。

人材関連事業を展開するキャリタス(東京・文京区、新留正朗社長)の調査では、インターンシップを産学協議会が示すプログラムの類型別で見たときに、「大変満足」と答えた学生の割合は、以下のとおりであることがわかっている。

インターンシップのプログラム類型別「大変満足」と答えたが学生の割合
専門活用型インターンシップ:73.5%
汎用的能力活用型インターンシップ:63.2%
キャリア教育:45.8%
オープンカンパニー:40.7%

この調査における専門活用型インターンシップは、2週間以上のものを対象としており、実施機関が長くなるほど満足度が高い傾向があることもわかっている。また、社員との接点が多く成長実感が得られるかどうかも、満足度に大きく影響していた。

(出所)2025年卒 特別調査 インターンシップ等に関する特別調査(キャリタス就活)

▼関連記事
2025年卒学生の20.4%が4~6社のインターンシップに参加、10社以上は18.5%
インターンシップ満足度87%、企業の本質を学生に伝える「社員との接点」と「成長体験」が重要

インターンシップ実施時の留意点と工夫

インターンシップの参加学生は、自社への入社が決まった新人(従業員)ではない。そのため例えば、専門活用型インターンシップで実務体験をしてもらう際にも、自社の従業員とは異なる接し方や誓約書の取り交わしなどが必要となってくる。

ここでは4つのポイントを簡単に紹介しよう。

目的の明確化と共有

参加学生に満足してもらうためには、以下のような関係者のなかで、「私たちはなぜインターンシップを行うのか」などの共通理解を得ておく必要がある。

  • 経営層
  • 人事部門
  • 実務体験を行う現場
  • 実施担当者 など

また、学生を受け入れる現場では、インターンシップも重要な業務の一環であり、学生との接し方が自社の評価につながることの周知も必要だ。

教育型と指揮命令

インターンシップには、大きく分けて以下の2種類がある

  • 【労務型】労働者性が認められ、労働関係法令が適用されるもの
  • 【教育・体験型】労働者性は認められないもの

労務型の場合、労働契約に基づく指揮命令が可能となる。一方で教育・体験型では、インターンシップ利用規約や誓約書のなかで「担当者の指示に従うこと」等の条項を入れておけば、この内容に基づく指示は行えるようになる。

ここでいう指示は以下のようにインターンシッププログラムを遂行するうえで必要な指示であり、労働契約にもとづく指揮命令とは異なるものだ。

  • プログラムの趣旨に沿った行動や発言をする
  • 場所を移動する
  • プログラム上の指示を行う など

情報漏洩、炎上対策

インターンシップの参加学生は、必ずしも機密漏洩に対する意識が高いとは言えない。一方でインターンシップのプログラム内には、業務上の機密事項や社内情報に触れる機会もあるだろう。

こうしたなかで学生による情報漏洩などを防ぐためには、インターンシッププログラムにおける社内情報が口外禁止であることはもちろんのこと、SNS等でアップロードしてはならないことを誓約書などに明示しておく必要がある。

また、機密保持の義務はインターンシップ期間の終了後も残ることを説明し、理解を求めよう。

ハラスメント防止

近年では、インターンシップ実施担当者などによる以下のようなハラスメントが疑われる事例が発生し、厚生労働省でも注意喚起を促している。

  • 食事や飲酒の誘い
  • LINE交換
  • 密室での不必要な1on1強要 など

(参考)厚生労働省「就職活動やインターンシップ中のハラスメントに関するお悩みは都道府県労働局にぜひご相談ください!」

インターンシップの実施企業では、実施担当者や現場に対して「明らかなハラスメント行為」に加えて、「ハラスメントと疑われる行為」を行ってはならない旨を研修などで周知する必要がある。

また、今の時代は、SNSの普及によって、インターンシップ内での出来事が「これはハラスメントでは」などの形で投稿され、拡散⇒炎上から自社の信用低下につながるリスクも生じている。

したがって、ハラスメント研修では、インターンシップ内で万が一ハラスメント行為があった場合に、就業規則に基づく懲戒処分の対象となる旨も予め周知しておく必要もあるだろう。

▼関連記事
インターンシップを実施する際の留意点とは 労働者性有無による2分類について詳しく解説【インターンシップ活用の多様化と留意点】

インターンシップを選考に活かすポイント

インターンシップは、学生の満足度を高めて自社の「魅了付け」をすることのほかに、採用選考の「見極め」でも活用できる。

例えばとある小売業の会社では、インターンシップでチームごとのグループと実習を行っている。具体的には、ビジネスに近いテーマを設定し、チームごとに課題を与えて解決策を考えてもらい、最後に発表させるというものだ。また、実際の店舗で接客を中心とする一連の業務を担当させている。

この会社の人事担当者は、インターンシップによる見極めポイントについて、以下のように語っている。

「見極めるポイントは、入社後に活躍のイメージができる人かどうかだ。自分で考えて能動的に動き、アクションを起こす、もしくは何かを生み出せる自立した人材がほしい。このポイントは、グループワークや実習をやらせるとすぐにわかる。例えば課題を与えたときに、『どうやればいいんですか』とすぐ質問してくる学生は、教えられないとやらない人だなと思ってしまう。逆に自分の頭のなかで咀嚼し『こうやりたいと思うんですが、この方向でいいですか』と、自分なりのアプローチのやり方が考えられる人はいいなと思う」

また、現場での実習では、学生をさらに深堀りしていく。具体的なチェックポイントは、以下のとおりだ。

「現場の実習では、店長の上のエリアマネジャーになれる人材かどうかを見ている。店長は誰よりも仕事ができて、リーダーシップがある人だ。店長候補の人材であれば、実のところ比較的簡単に採れる。問題は、その上のエリアマネジャーなど幹部人材の資質があるかどうかだ。目の前の仕事を一生懸命にやるのも大事だが、いろんなところに目が行き届き、業務改善の指示を出せること。また、物事を俯瞰的に見るのがエリアマネジャーに必要な資質だ。そこに行き着くまでに折れずに、余裕で店長になれること。また、さらにその上にも行けるかどうかを見ている。」(人事担当者)

▼関連記事
選考の早期化で10月に内定出しも、インターンシップが事実上の採用選考に

インターンシップの企画作成にChatGTPを活用

インターンシップは、これからの新卒採用で大きな役割を担うものとなりつつある。ただ、近年の新卒採用は、早期化・長期化・複雑化などの要因から、人事担当者に多くの負担がかかるものとなっている。

人事担当者の負担が大きければ、リソース不足から学生を引きつける魅力的な「インターンシップのタイトル」や、成長と満足度の両方を促せる「インターンシップのプログラム」などの企画を考えることも難しくなるかもしれない。

こうしたなかでぜひ活用してほしいのが、ビジネスシーンでも注目されている生成AIのChatGTPだ。

ある企業では、ChatGTPを使ってインターンシップのタイトルを生成したところ、応募者数が前年比で30%も増加した。また、効果の高いタイトルが生まれるまでには、実質1時間もかかっていない。10分で候補案を出し、人事チームで30分話して決めただけだ。

ChatGTPでタイトルなどを生成するためには、“プロンプト”が必要となる。“プロンプト”というと、ITエンジニアが使うような敷居の高さを感じるかもしれない。しかし実際は、インターンシップのタイトルなどを考える程度であれば、難しい技術は必要ない。以下のプロンプトをコピペするだけで、実質5~10分程度でアイデアを生み出せる。

<コピペで使えるプロンプト>

  • 【プロンプト1】あなたは大手広告代理店のコピーライターです。インターンシップのタイトルを考える思考スタイルを7つ出してください。例えば水平思考などです。
  • 【プロンプト2】次に記載する情報Aを学習してください。
  • 【プロンプト3】良いインターンシップのタイトルをつくるポイントを3つ教えてください。
  • 【プロンプト4】そのポイントを使って、情報Aに適したインターンシップのタイトルを7つの思考スタイルごとに3つ出してください。

実際にアイデアを導き出すまでの流れは、以下の記事で詳しく解説している。忙しい中で効果的なインターンシップのタイトルなどを考えたい方は、ぜひ参考にしてほしい。

▼関連記事
採用活動のアイデア出しは生成AIで〜インターンシップのタイトルを5分で20個以上出すプロンプトを公開〜【人事のためのChatGPT入門】

効果的なインターンシップ企画・施策を考えよう

25年卒学生の選考から、採用に直結するインターンシップが解禁されたことで、「自社の魅了付け」と「学生の見極め」の両面でインターンシップの重要性が高まっている。

また、インターンシップは、自社の評価につながる取り組みであることから、ハラスメントや情報漏洩、炎上などを防ぐ施策も必要だ。人事担当者が多忙を極めるなかで、効果的なインターンシップの企画や施策を考えるときには、ぜひとも生成AIのChatGTPを活用してみてほしい。

その他の人材採用や人事関連の記事はこちら

▼新卒採用特集号はこちらでお読みいただけます

PAGE TOP