リファラル採用・アルムナイ採用を強化し、人材獲得力を高める【清水建設】

持続的な企業成長の実現に向けて人材の確保に注力する企業では、さまざまな採用手法の活用が広がっている。「挑戦し共創する多様な人財」の獲得を目指す清水建設は、リファラル採用やアルムナイ採用を強化している。同社のキャリア採用の取り組みについて、人事部の馬目遼氏、齋藤紅葉氏に聞いた。(取材・執筆・編集:日本人材ニュース編集部

清水建設 馬目様

清水建設
人事部 採用グループ
馬目 遼氏

清水建設 齋藤様

清水建設
人事部 人事グループ
齋藤 紅葉氏

事業概要を教えてください

馬目 当社は総合建設会社として、「建設事業(建築、土木など)」をメインに、「不動産開発」「エンジニアリング」「グリーンエネルギー開発」「建物ライフサイクル」「フロンティア(宇宙開発など)」の6分野で事業を展開しています。国内はもちろん、海外でも積極的に事業を行っています。

キャリア採用を強化した背景を教えてください

馬目 雇用の流動化と人手不足により人材獲得競争が激化しており、今後ますます採用が難しくなっていくことが予想されます。そのような中、当社では現在キャリア採用を強化しており、2024年度は200人超を迎え入れました。

今後もキャリア採用の必要性は高まっていく中で、より多角的なアプローチを検討する必要性が出てきたことから、2025年4月に「リファラル採用(友人・知人採用)」および「アルムナイ採用(元社員採用)」を正式に制度化するに至りました。

キャリア採用の位置づけ、主な採用手法を教えてください

馬目 キャリア採用では、人材ニーズに対するスポット的な補充や中長期的な事業展開を踏まえた要員強化を目指しています。

採用手法としては、転職エージェントからの紹介や派遣社員からの正社員登用、スカウトによるものがメインです。それに加えて、今後はリファラル採用やアルムナイ採用も強化していきたいと考えました。

● 清水建設「人財と組織力の成長」
清水建設 図表
成長を支援する仕組みづくりにより「挑戦し共創する多様な人財」を育成する

リファラル採用を導入した狙いや運用方法を教えてください

馬目 実は、キャリア採用を始めた当初から、社員に自分の知り合いを紹介・推薦してもらう仕組みはあり、昨年度は全体の1割がリファラル採用によるものでした。

「ここを強化しない手はない」と考え、社員にもっと積極的に紹介してもらえるように、こちらから働きかけをしようと制度化しました。

従来は社員の自主性だけに任せていましたが、今後拡大していくとなると、積極的に紹介したくなるような環境づくりを推進する必要が出てきます。

そこで当社では、採用実績に応じたインセンティブを設けたり、リファラル支援ツールとして、TalentX社が提供するクラウドシステム「MyRefer」を正式に導入し、簡易的に求人を紹介できるような仕組みを構築しました。おかげで、採用におけるリードタイムも短縮できています。

アルムナイ採用についても狙いや運用方法を教えてください

齋藤 当社では2年ほど前から、当社に戻ることを希望する元社員を再雇用する制度を構築していました。その制度では、退職後に当社からアプローチはしていなかったので、本人からするとハードルがかなり高かったと言えます。

そこで、アルムナイ支援ツールとして、ハッカズーク社が提供するクラウドシステム「オフィシャル・アルムナイ」を導入して、元社員とのネットワークを新たに構築することにしました。

このネットワークを通じて、元社員に対して当社の社内報記事などを定期的に発信し、会社との相互のつながりを実感してもらいたいと考えました。

他社で経験や知見を積んだ元社員が、再び当社で活躍できる機会を創出していきたいと考えています。

アルムナイ採用を導入するにあたっての不安はありましたか

齋藤 アルムナイ採用の導入にあたって、再入社の門戸を広げることで、退職に対する心理的なハードルが下がり、人材定着に悪影響を与えるのではないかという不安がありました。

そこで、今回アルムナイ採用を含めたキャリア採用強化の狙いについて人事部長から社員に発信を行いました。

また、アルムナイ採用では、通常のキャリア採用と同様のステップを踏んで選考するので、制度として退職のハードルを下げるものではないと判断しました。

アルムナイネットワークへの参加人数を増やしていくために、どのような工夫をしていますか

齋藤 まずは、退職する社員にアルムナイネットワークの案内チラシを渡すつもりです。また、社内のイントラネットにも案内チラシを常時公開し、在籍する社員から元同期や元同僚に展開してもらおうと思っています。

退職した社員にとっても、元同期や元同僚から案内を受けることで、ネットワークに入るハードルが下がると見込んでいます。

リファラル採用やアルムナイ採用以外に取り組まれたいことがあれば教えてください

馬目 キャリア採用のチャネルは、ある程度構築できたと判断していますので、今後は採用広報を強化していきたいと考えています。特に、今すぐではないものの、将来的に転職するかもしれない潜在層の人たちに、どれだけ当社の魅力を伝えていくかを考えなくてはいけません。

アルムナイ採用においても、アルムナイネットワークの中で、当社で働く面白さをどのように伝え続けていくかが肝になってきます。そうしたことも含めて、採用広報の強化は不可欠となってきます。

もう一点は、全社レベルでの採用マインドの醸成とノウハウの浸透です。どうしても社員には「採用は人事が行うもの」という感覚があります。

ただ、リファラル採用には社員の協力が必要ですし、専門性の高い部署であれば、当該部署の中で新たな戦力の発掘や見極めを行っていく必要があります。そのためのノウハウや文化を浸透させていくのも人事部のミッションだと思っています。

今後拡充したい内容や展望などを教えてください

馬目 まずは、社内において採用活動を「開かれたもの」と認識してもらうことが第一でした。その観点では、リファラル採用やアルムナイ採用を制度化したことで一定の目安が立ちました。

あとは、社員がどれだけ主体的に参加してくれるかです。そういう意味でもやはり社内向けの広報にもっと注力したいと考えています。

もう一点は、キャリア採用の候補者になるタレントプールを作り、それを見える化していくことです。キャリア採用では、欲しいタイミングで適切な人材を採用できるかが重要です。

そのためにも、人材をプールしておき、急な人員補充や、市場動向の変化にいち早く対応していくことが求められています。

(2025年4月21日インタビュー)

清水建設株式会社

代表者:代表取締役社長 新村 達也
設立:1804年
資本金:743億6500万円
従業員数:11,163人(連結従業員数 21,286人)(2025年3月31日現在)
本社:東京都中央区京橋2-16-1
売上高(連結):1兆9443億円(2025年3月期)

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