日本企業で増えているグローバル人材のサーチ
日本企業で増えている最近の依頼は、グローバル人材の獲得だ。人材の国籍を問わないケースもある。海外現地法人のトップや海外部門の責任者にとどまらず、グローバルな人事制度の構築や法務・リスクマネジメント体制の強化を担う管理部門の責任者にも、優秀な人材を世界中から探してほしいという依頼が多いという。
このような場合には、どのようなサーチが行われるのだろうか。企業から東京オフィスが依頼を受けると、前述のような手順で人材スペックを決定していく。この人材スペックに従って、米国や欧州など全世界の拠点でサーチ活動を行い、候補者となる人材をリスト化する。その中から、獲得すべき人材を決定していくのだ。
人材スペックの決定やリスト化の時点では、テレビ会議システムを使って、現地のコンサルタントや現地法人を交えたミーティングを実施することもある。 海外に候補者がいるケースでは、候補者が在住する地域の拠点に在籍するコンサルタントが接触し、入社の可能性を探り、説得する。海外現地法人の社長を探し出すような場合でも同様のサーチ活動が実施される。
国籍不問、日本語不問のサーチ案件が増加
グローバル人材の採用でサーチ会社が果たすことができる特徴的な役割について、佃秀昭エゴンゼンダーインターナショナル代表は、次のように説明する。
「グローバル人材の獲得では、国籍不問、日本語不問という案件が増えてきました。日本人でなくともよいという場合、サーチの対象地域は全世界となります。グローバルサーチ会社では世界中の拠点が一斉にサーチを行いますので、日本にいながらにして世界中の優秀な人材を候補者として探し出し、現地の拠点に在籍して地域を熟知したコンサルタントが候補者を説得することができます。これはグローバル展開するサーチ会社でなければできないことです」
採用決定の責任を明確にし、受け入れ体制を整える
サーチ会社を利用する際に、まず理解しておくべきことは、登録型の人材紹介会社から紹介されるような転職を前提に就職活動をしている求職者と、サーチで探し出した現職で活躍している候補者を混同してはいけないという点だろう。
まだ転職を考えていない候補者との最初の面談の際に「うちの会社になぜ、応募したのですか」と質問してしまったという失敗談はよく聞くところだ。
そして、リテインドサーチ会社をうまく活用して優秀な人材を獲得するためには、採用決定の責任を明確にし、受け入れ体制を整えることが重要だ。入社を納得してもらうための説得はコンサルタント任せではなく、経営トップやハイアリング・マネジャーの熱意と積極的な協力が鍵になる。
この点について、安田結子ラッセル・レイノルズ・アソシエイツ・ジャパン代表は、次のようにアドバイスする。
「候補者に入社してもらえるかどうか、最終的な場面で必ずハイアリング・マネジャーに説得していただきます。採用がうまくいかないケースというのは、ハイアリング・マネジャーや人事部がプロセスについて責任を持たず、熱意をもって説得をしないことがあげられます」
入社後、獲得した人材に存分に活躍してもらうために
さらに入社後、獲得した人材に存分に活躍してもらうためのハイアリング・マネジャーの役割として、「入社後に活躍できる能力やチームワーク力を重視したアセスメントをしていますので、能力面についてはすでに確認しています。しかし、当然のことながら、採用決定者は初めての異質な企業文化に入ってくるわけですから、”お手並み拝見”のように放置するのではなく1カ月後、3カ月後のフォローアップやメンタリングなど丁寧なサポート体制を充実させておくことが欠かせません」(安田氏)
リテインドサーチ会社が行っているサービスは、単に空きポストを補充するための採用活動ではなく、経営計画を達成するための人材戦略にフォーカスしたコンサルティング活動なのである。こうした点が、グローバルに競争力のある経営幹部を求めようとする動きの中で、日本企業にも理解され始めている。
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