ヒューマネージ
齋藤 亮三 代表取締役社長
社員のエンゲージメントをいかに高めるかは、いま、企業にとって大きな関心事となっています。
人材マネジメント領域でエンゲージメントが注目されるとともに、エンゲージメントは「会社と従業員の結びつき・関係性」と定義され、その向上には組織改善が必要だと謳われるようになりました。
もちろん、組織改善のアプローチも有効ではありますが、20年以上アセスメントツールを開発してきた私どものなかでは「エンゲージメントを高めるには、組織改善のアプローチしかないのか」「人材開発を通じて、個人のエンゲージメントを高めることはできないのか」という議論がずっと続いていました。
概念を提唱したシャウフェリ教授の定義によれば、ワーク・エンゲージメントは「熱意」「没頭」「活力」が揃った状態を意味します。つまり、本来の定義では、エンゲージメントは個人と組織の関係性ではなく「個人の、仕事にのめり込んでいる状態」を指します(engage in…(仕事に従事する)がその語源です)。
個人のエンゲージメントを高める“カギ”は何にあるのか――この本の共著者である川上真史先生(ビジネス・ブレークスルー大学教授)、種市康太郎先生(桜美林大学教授)とともに、長年にわたる調査研究の末、タイトルでもある「ジョブ・クラフティング」に着目、その尺度の開発に成功しました。この本は人事の方向けの入門書として、調査研究で得られた知見を、分かりやすく記載しています。
ジョブ・クラフティングは、個人のエンゲージメントを向上させるカギとなるものです。その人の特性(分かりやすく言えば“癖”)であり、開発することが可能です。一人一人がジョブ・クラフティングの“癖”を身につけることで、自らエンゲージメントを高めることができる。ここが何よりも大切な点です。
ジョブ・クラフティングの概念は、一人一人がやりがいを持って働くための大きなヒントとなるものです。微力ながら、個人と組織のエンゲージメントを持続的に高めることに貢献できたら、非常に嬉しく光栄に思います。
川上真史、種市康太郎、齋藤亮三 著
弘文堂
1,600円+税