組織・人事

現役子育て中、働く世代のリアル「その人事制度、本当に助かっていますか?」~「現職では男性の育休は取りづらい」30代 大手上場電機メーカー勤務 在宅勤務男性の場合

男性の育児休業取得率は17.13%。
これは2020年10月1日から21年9月30日までに配偶者が出産した男性のうち、22年10月1日までに育児休業を開始した者の割合だ。
前年度より3.16ポイント上昇しここ数年右肩上がりが続いているが、女性と比較するとまだまだ取得率は低い。

参考記事:育児休業取得率は女性80.2%、男性17.13%

2022年10月1日から育児・介護休業法が改正され、男性の育児休業が取得しやすい流れとなっているが、はたして実態はどうなのか。

本連載では現役子育て中の働く男女に取材を行い、働くことと子育てに対しての会社の制度や世の中のサポートについて、実際に感じていることをリアルに語ってもらった。 今回は都内で大手上場電機メーカーに勤務する30代の在宅勤務が中心の男性に話を聞いた。(文:日本人材ニュース編集部

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インタビュー対象者の紹介

30代男性
勤務先:現職は大手上場電機メーカー勤務(従業員1万人)、前職はサービス業(従業員1万6000人)
職種:商品企画
家族構成:妻・2歳の子供の3人暮らし(両実家とも遠方、妻の姉妹家族は都内)
勤務形態:基本在宅勤務、週1で出社(通勤時間1時間程度)
平日9時~18時勤務、場合によっては子供就寝後20~22時に残業(みなし残業)
土日休み(妻は平日8時半~16時の時短勤務、土曜出勤の日もあり)
育休取得状況:前職で1カ月のみ育休取得(給与全額支給)、転職して半年。

取材内容の注目ポイント

✓男性の育休取得期間は1カ月、給与は全額支給。
✓男性の育休取得に関する啓発活動は、全社発信メールなどでは読み飛ばされる可能性も。
✓自身の周りに男性育休を取得した上司など、ロールモデルがいないと取得しづらい。

男性育休を取得されましたか。その際の会社の雰囲気はいかがでしたか。

2022年4月の子供の保育園入園と妻の仕事復帰のタイミングで1カ月育休を取得しました。

育休を取得したのはまだ前職の会社に勤めている時で、育休中は給与全額支給でした。

とても育休を取りやすい雰囲気があり、これは会社内の女性比率が高かったのも要因かもしれません。

1カ月のみの育休取得に至ったのは、生まれた当初は祖父母のサポートがあり、また自分が在宅勤務で勤務時間に融通がつきやすく、休む必要がなかったためです。

しかし、子供の保育園入園後の1カ月程度は慣らし保育のため、1日数時間で帰宅となるため自宅保育の時間が長くなります。妻の職場は4月初日から完全出勤での仕事復帰となるため、必然的に私が1カ月育休を取りました。また、ちょうど自分の仕事も落ち着いていたタイミングだったので特に迷いはありませんでした。 自分が育休を取得してみて、男性の育休は「取得する必然性と自分の仕事の余裕」に大きく左右されると感じました。もし自分の仕事が立て込んでいたら、どれだけ育休を取りやすい雰囲気だとしても躊躇したかもしれません。

男性育休について、現在の会社ではどのような発信がされていますか。

今の会社への転職時に、男性の育児や介護休暇について制度が整っているということをかなりしっかりと説明されました。これは約10年前に前職に入社する時には無かったので、世間の動きに合わせて会社も動いているということを感じました。

また、D&I推進部より男性の育休を周知するようなメール発信がされています。その他にもダイバーシティについてや語学を学ぶこと、また人事系のニュースなどが多い時に1日10本ほどメールで届きます。…ただ日々の業務が忙しく、ゆっくり目を通している暇はなかなかありませんね。メールボックスに埋もれているのが現状です。

このような社内発信では男性社員が育休を取得したという話が出てきますが、正直今自分が働いている部署の間では聞いたことがないので、所属部署によるのかもしれません。

当社は企業規模が大きいため、全社発信で男性育休について周知するメールが届いても違うグループ会社であったり、部署が遠すぎて自分事として捉えにくいです。もう少し部門単位で情報発信してくれた方が周知も徹底できますし自分事としてイメージしやすいと感じます。

現在私が所属する部署はほとんどが男性で、未婚率も高いです。

自分の直属の上司で育休を取得した人がおらずロールモデルが存在しません。そのため、現段階では今後自分が育休を取るイメージはつかないですね。

もし育休を取るタイミングが前職ではなく現職だった場合、育休を取らないという判断をしたかもしれません。もし休むとしても1週間程度有給で、ぐらいだと思います。 直属の上司が育休を取得しロールモデルになってくれれば部下も取りやすい雰囲気になると思います。

働くことと育児の両立について感じることはありますか。

どの家庭でもあると思いますが、子供が熱を出したり体調不良の際に仕事を休まなければいけません。自分たちの場合は妻が現場での仕事のため急には休みにくいので、まず私が休むことになっています。その際は子供が寝てから仕事をしてリカバリーしています。そして翌日は妻に仕事の調整をしてもらい休んでもらうこともあります。

私の有給は多く設定されているのでなくなることはほぼ無いのですが、妻の有給はそれほど多くないのでギリギリです。現在8月ですが、10月までに残り2,3日しか残っていません。これ以上休むとなると欠勤になるため給料にダイレクトに反映されるので危機感があります。

病児保育を行っている場所もありますが、いざ病気で休むとなった場合に電話してもほとんど定員が埋まっていて預けられませんね。

このようなケースだと自分たちの場合は平等に有給を取るようにしていますが、家庭によってはやっぱり女性側に負担がかかる場合が多いと思います。有給の残り日数を嘆く声はやはり女性側でよく聞く気がします。 働くことと育児の両立は基本的にはできていると感じますが、子供が病気の際は少し大変ですね。

最後に働きながら子育てをする上で、世の中・会社共にどのようになってほしいでしょうか。

マンションの共有スペースで子供たちがゲームで遊ぶことが組合で問題になったことがありました。うるさい・共用物を汚すなど、一部の住人はよく思っていないようです。

私が子育てをしているからかもしれませんが、子供たちの遊びについていくらか寛容になれる世の中であって欲しいと思います。

子育ては会社や行政の制度がいくら充実していても、世の中全体に本質的な意味が波及していなければ効果は半減するのではないでしょうか。子育て世代だけでなく、社会全体として暮らしやすい世の中になるような意識の醸成や雰囲気づくりが必要だと感じます。

取材を終えて~人事担当者ができることとは~

会社として男性育休の取得を推進していても、「育休をまわりが取っていない」「仕事が立て込んでいる」といった理由で育休取得に至らない例もまだまだ多い。

全社として制度を充実させることも必要だが、取材対象者の話にもあったように、全社発信メールは自分と距離のある話では読んでもらうことすら難しいだろう。

グループ会社ないし部門ごとに細分化された中でそれぞれの状況にあった情報発信やコミュニケーションを行っていかないと、制度の浸透とさらなる波及は難しいように感じる。

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