終身雇用制度は限界を迎え、従業員はキャリアアップに転職することが珍しくない時代の中、企業としては離職防止対策を打つ一方で、いかにして人材を確保するかが大きな課題となっている。
その人材を確保する手段として大手企業を中心に「アルムナイ採用」を導入する企業が増加している。
アルムナイとは「卒業生」「OB・OG」を意味する英語の「alumni」に由来した人事用語で、現役世代の退職者を指す。アルムナイ採用とは定年退職以外の理由で企業を離れた退職者を再雇用する採用手法である。
▼参照
アルムナイ(人事用語集)
各企業のアルムナイに対する取り組みと、アルムナイを支援する企業やサービスについて日本人材ニュース編集部が紹介する。(文:日本人材ニュース編集部)
2023年度のアルムナイに関する調査
2023年にリクルートが実施した「企業の人材マネジメントに関する調査 2023」によると、カムバック採用や退職者コミュニティを活かすアルムナイネットワークを構築している企業は、採用がうまくいっている割合が高いことが明らかとなった。
アルムナイネットワーク活用とこの1~2年の人材採用の状況について、「人員数」と「人材レベル(求める人材要件に合致する人を採用できているか)」という二つの観点がある。
まず、「人員数」という観点で「十分に採用できている」、「ある程度採用できている」と答えた割合は、アルムナイ採用を行っていない企業が31.6%であるのに対し、アルムナイ採用を行っている企業は42.9%となった。
次に、「人材レベル」という観点では、「十分に採用できている」、「ある程度採用できている」と答えた割合は、アルムナイ採用を行っていない企業24.6%、アルムナイ採用を行っている企業は34.5%と、こちらでも差が表れた。
上記のようにアルムナイ採用を行っている企業の採用がうまくいっている要因として、「元社員を採用するため、商流や社風を理解しておりマッチ度が高くなりやすい」、「元社員は、異なる環境での経験により、新たなスキルや視点を獲得しており、担える仕事の幅が広がっているケースが多く、企業側も活躍が想像しやすい」などをあげた。
▼参照
アルムナイネットワークは有効な人材獲得手法のひとつ リクルート調べ
具体的な企業の取り組み
では、各大手企業のアルムナイについての具体的な取り組み(2024年5月20日時点)をいくつか紹介する。
企業名 | アルムナイの取組 |
---|---|
トヨタ自動車株式会社 | トヨタ自動車アルムナイネットワーク |
パナソニックグループ | パナソニックグループ・アルムナイコミュニティ |
日本製鉄株式会社 | 日本製鉄アルムナイネットワーク |
三菱重工業株式会社 | ウェルカムバック採用 |
三井物産株式会社 | SNSサイト「元物産会」 |
丸紅株式会社 | SNSサイト「M-Alumni」(まるムナイ) |
住友商事株式会社 | コミュニティ「SC-Alumni」 |
株式会社みずほフィナンシャルグループ | アルムナイネットワーク、「カムバックアルムナイ採用」 |
株式会社三菱UFJ銀行 | アルムナイネットワーク |
武田薬品工業株式会社・アステラス製薬株式会社 | 「ヤメタケ・ヤメテラス懇親会」 |
自社のネットワークを作り、定期的な情報発信やネットワークに登録した人の交流会を通じて、勤務経験があり社内の雰囲気も把握している即戦力の元従業員を再び採用することで、人材を確保している。
アルムナイ採用を支援する企業やサービス
アルムナイ採用を積極的に取り組んでいる企業の次は、アルムナイ採用を支援する企業やサービスをいくつか紹介する。
①EDGE
組織・人材の課題解決にテクノロジーを活用するとともに、制度設計からシステム導入、現場での運用に至るまでのコンサルティングを提供するEDGEは、専用システム「エアリーforアルムナイ」と、10年以上前から企業OB/OGコミュニティーを運営してきたノウハウを生かし、採用を持続的に成功させるサポートを行っている。
②リクルート
大手人材紹介会社のリクルートが運営する「Alumy(アルミ―)」もカムバック採用代行サービスとして導入している企業が増えている。
③ハッカズーク
シェアNo.1(*)のアルムナイ専門サービス『Official-Alumni.com』を提供する株式会社ハッカズークも導入企業が多く、アルムナイ採用の支援に強い企業である。
※日本マーケティングリサーチ機構調べ 調査概要:2021年6月期 企業向けアルムナイ専門サービス競合調査によるもの
今後のアルムナイ採用について
転職することが珍しくない時代において、優秀な人材を確保する方法としてアルムナイ採用を導入する企業はこれからも増えるだろう。日本人材ニュースは、今後も各社の取り組みとアルムナイを支援する企業やサービスの動向に注目したい。