25年4月対応必須! 改正育児・介護休業法のポイントと育児休業促進に向けた各社の取り組みを紹介

育児休業(育休)の取得促進は、優秀な人材の定着率を高め組織力を強化するうえで不可欠な取り組みだ。特に男性の育休取得は、女性活躍を推進するために国でも力を入れている。
今回は、近年における育休取得率と育休促進に向けた各社の取り組み事例を確認したうえで、2025年4月に施行される改正育児・介護休業法のポイントを紹介する。また、男性が育休をとりやすい組織の条件について日本人材ニュース編集部が解説する。(文:日本人材ニュース編集部

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育児休業の取得率、男女ともに上昇

厚生労働省が発表した「令和5年度雇用均等基本調査」によると、育児休業の取得率は男女ともに上昇していることがわかっている。なかでも注目すべき点は、男性の育児休業取得率が近年大幅に上昇傾向にあることだ。

2021年10月1日から2022年9月30日までの1年間に在職中に出産した女性のうち、2023年10月1日までに育児休業を開始した人(育児休業の申出をしている者を含む)の割合は84.1%だった。これは、前回調査(2022年度80.2%)より3.9ポイントの上昇を意味する。

一方で同期間に育児休業を開始した男性の割合は、30.1%だった。この数字は、前回調査(2022年度17.13%)より13.0ポイント上昇となる。

育児休業取得率の推移

育児休業取得率の推移_女性_2024
育児休業取得率の推移_男性_2024

また、同期間内に出産した有期契約労働者(女性)の育児休業取得率は75.7%であり、前回調査(同65.5%)より10.2ポイント上昇したこともわかっている。 これに対して、同期間内において配偶者が出産した有期契約労働者(男性)の育児休業取得率は26.9%となっており、前回調査(同8.57%)と比べて18.3ポイント上昇した形だ。

(出所)令和5年度雇用均等基本調査(厚生労働省)

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育児休業取得率は女性84.1%、男性30.1%

育児休業促進に向けた各社の取り組み

自社の育児休業取得率を高めるためには、育児・介護休業法に則った施策を導入・実施する必要がある。各企業では、育児休業の促進に向けて以下のようにさまざまな取り組みを講じている。

企業名育児休業の促進に向けた取り組み
サッポロホールディングス【情報発信、啓発】
・育休を取得した男性社員の経験談などを定期的に発信
・人事部長からの出生お祝いメールで、各種制度紹介や育休取得促進のメッセージを充実
【男女共育てのすすめ】
・パートナーといっしょに育児を楽しんでもらうために「育児・家事ガイドブック」を作成
日本ガイシ【男性従業員の育児休業取得促進】
・男性従業員向け「産後サポート休暇」を導入
・「日本ガイシにおける男性育休取得推進」をテーマに講演会を開催
・「部下の育休中の業務分担に関するアンケート」でよせられた社内の好事例をポータルサイトに掲載
かんぽ生命保険【育休からの職場復帰支援】
・育休取得の社員が安心して職場復帰できるようにするために、休業取得~復帰後の業務サポート方法などを相互確認する「育休フォローアップシート」を導入
・同シートの本社報告を義務化
しずおかファイナンシャルグループ【男性の長期育児休業と女性の早期復職を支援する応援金】
・男性が1カ月以上の育休を取得した世帯に対し、10万円の応援金を支給
・男性が3カ月以上の育休を取得することで、女性が早期復職をする場合には、さらに10万円を上乗せ支給

(出所)令和5年度「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」事例集(経済産業省令和5年度「なでしこ銘柄」事業事務局)

【対応必須】25年度施行 改正育児・介護休業法

育児・介護休業法は、政府が力を入れる少子化対策とも関連性が高いことから、近年たびたび法改正が行われている法律だ。また、企業にとっては働きやすい環境づくりとも大きな関係があり、人事労務担当者が実務上で取り扱う法律のなかでも、特に注視すべき存在となる。

育児・介護休業法は、2025年4月にも大幅な改正が施行されることになる。育児休業の関連で人事労務担当者が理解しておくべき改正ポイントは、以下の6つだ。

  • 柔軟な働き方を実現するための措置等の義務化
  • 残業免除の対象拡大
  • 子の看護休暇の大幅改正
  • 仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮義務化
  • 育児休業取得状況の公表義務が300人超企業に拡大
  • 育児のためのテレワーク導入が努力義務化

各ポイントの詳細は、厚生労働省の以下資料や関連記事をチェックしてほしい。

(出所)育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法 改正ポイントのご案内(厚生労働省)

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【2025年度施行 改正育児・介護休業法】就業規則の改正必須! 7つの改正ポイントを解説

実際の現場で育休取得した男性社員の声

日本人材ニュース編集部では、実際に子育て中の男性社員に、育休取得について話を聞いた。

この男性社員は、前職の会社に勤めていた2022年4月に、子供が保育園に入園し妻が仕事復帰をするタイミングで1カ月の育休を取得した。当時の会社で育休を取得できた理由として、「とても育休を取りやすい雰囲気だったこと」「会社内の女性比率が高かったこと」の2つを挙げている。

一方で現職の会社では、所属部署メンバーのほとんどが男性で、また未婚率も高い。育休取得のロールモデルも存在せず、周りの雰囲気からして取得しづらいと答えている。

なお、企業向けの教育研修事業と若年層向けの就職支援事業を展開する株式会社ジェイックでは、20代・30代の正社員を対象に「育休を取得しやすい職場の条件」のアンケートを実施している。

この調査結果の上位を見ると、育児休業を取得しやすい職場には以下の条件があることが見えてくる。

【Q.育休を取得しやすい職場をどんな職場だと思いますか?(2つ選択)】

  • 1位:上司・同僚に、気軽に相談ができる(76.5%)
  • 2位:上司・同僚が、取得歴に関係なく育休取得に理解がある(47.7%)
  • 3位:上司・同僚と、仕事を助け合える(40.5%)

(出所)【調査】20代・30代の正社員に「育休を取得しやすい職場の条件」を調査(株式会社ジェイック)

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まとめ

近年の日本では、政府によるさまざまなアナウンスや制度改正の影響から、男女ともに育児休業の取得率が上がっている。特に男性は、近年大幅に上昇している状況だ。ただしなかには、男性育休が取りづらい雰囲気・風土の企業も存在する。

労働人口が不足するなかで、優秀な人材の定着や活躍を促すためには、従業員の育児休業を促す取り組みが不可欠になる。特に2025年度は、育児・介護休業法が改正されることから、人事労務管理におけるその重要性は高まることだろう。

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