新卒離職率35% 「就社より就職」の意識強く、理想と現実のギャップの衝撃が退職の引き金に

新卒社員の早期離職が大きな問題となっている。せっかく採用した人材に早々に離職されては目も当てられないと、初任給の引き上げのみならず、希望に沿った配属を提示したり、転勤制度を見直す企業も出てきているが、専門家は、今年入社した社員の早期離職が増える可能性を指摘している。(文:日本人材ニュース編集委員 溝上憲文、編集:日本人材ニュース編集部

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1年以内に15%超が離職か

厚生労働省の新規学卒就職者の就職後3年以内離職率は大卒が34.9%(2021年卒)と、2018年卒以降、増加傾向にある。うち1年以内が12%程度だ。大卒就職者は約45万人だが、3年以内に約16万人、1年以内に5万人超が離職していることになる。

新規学卒就職者の就職後3年以内離職率データはこちら

大学でキャリア教育の講師も務める文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の平野恵子所長は「25年入社の社員は1年以内の離職が増える可能性もある。職場の先輩や上司が冷たかったり、この会社は無理と思ったら見切りも早い。今年の9月、年明けに第2新卒として転職活動を行い、場合によっては1年以内に3年以内の離職率の半分の15%超が離職するかもしれない」と指摘する。

新人にとって入社1~3カ月以内の超短期の離職は転職に不利と思われるが、今はそうでもない。転職コンサルタントは「中途採用では経験年数があまりにも短いと転職は厳しかった。しかし最近では相応の理由があれば採用するなど、以前とは考えられないほど中途採用の枠も広がっている」と語る。

新卒の約80%が1年以内に退職を意識

今は簡単に退職できる退職代行サービスに加えて、スマホで転職サイトにアクセスできる便利なツールもあり、離職・転職も容易だ。それにしてもせっかく入社までこぎつけたのに、なぜ早々と辞めてしまうのか。

スタッフサービス・ホールディングスが高校・高専卒を含む25歳までを対象にした「新卒3年未満で正社員を退職した若年層の意識調査」結果(7月22日)によると、新卒で就職した会社を入社3年未満で退職した人に在職期間を尋ねたところ、48.2%「1年未満」と回答。中でも「半年未満」と回答した人は30.8%に上り、約3人に1人となっている。

入社後に初めて「辞めようかな」となんとなく思った時期については、入社初日までにそう感じた人は10.2%、1カ月未満では32.9%、3カ月未満では51.0%と半数を超え、1年未満の時点では82.2%が退職を考えた経験があると回答している。

初めて「辞めようかな」となんとなく思った場面についても聞いている(1カ月未満と回答した人)。最も多かったのは「オフィス内の職場環境や雰囲気を知った時」で23.3%、続いて「オリエンテーション・研修」が17.2%、「所属部署に着任時」が10.8%、「残業や休日出勤などをしなければならなかった時」が10.8%となっている。

そして退職を決意した理由については、最も多かったのは「上司や同僚との人間関係が悪かった」で26.3%、続いて「社風が合わなかった」(26.1%)、「会社の将来に不安を感じた」(21.1%)、「ハラスメントなどコンプライアンス違反があった」(17.4%)、「残業、休日出勤、出張などが多かった」(17.0%)の順となっている。

入社1年未満の理由では「上司や同僚との人間関係が悪かった」、「社風が合わなかった」、「ハラスメントなどコンプライアンス違反があった」が上位を占めている。

「リアリティショック」が新卒新人の退職の背景に

退職理由上位の上司や同僚との人間関係や社風が合わないというのは中途採用の退職理由でも散見されるが、新卒新人の場合はどういう背景や事情があるのか。

指摘されるのは「リアリティショック」(理想と現実とのギャップの衝撃)だ。新入社員研修など企業研修を手がけるALL DIFFERENT組織開発コンサルティング本部コンテンツマネジメント部の宮澤光輝ユニットリーダーはこう指摘する。

「リアリティショックには2つの大きな要因がある。1つは会社側の問題として就活段階や内定出しの段階で不都合な事実を隠すことで起きる。例えば聞いていない入社後のハードな研修であったり、会社が言っていた労働環境と食い違っていたりすれば話が違うと思ってしまう」

「もう1つは新入社員側が過度な期待をしてしまい、思い描く仕事や職場でなかった場合だ。例えば、会社に入ったらすぐに責任ある格好いい仕事を任せてもらえると思っていたらテレアポの仕事だったり、先輩や上司は仕事を優しく教えてくれるだろうと思っていたらそうではなかったというケースなど、ショックを引き金に離職してしまう」

例えば前出の調査で「辞めようかな」となんとなく思った具体的なエピソードとして、オリエンテーション・研修の際に「理不尽に怒られた、入る前と入った後の差が激しかった」(男性22歳。自動車)、職場環境の雰囲気では「意外と大変そうな仕事内容で同期と辞めようという話になった」(女性21歳・その他サービス業)という声も挙がっている。

もう1つの会社や仕事に対する過度な期待をしてショックを受けた例では、所属部署に着任時に「パソコンも仕事もなく『座ってろ』と言われてずっとは座っていたから」(女性25歳・行政サービス業)、「中小企業がゆえに、新人研修に割ける人員が少なく、詰め込み研修になって精神的に潰れてしまった」(男性25歳・ソフトウェア/情報サービス)という声もある。

25年卒の新人は売り手市場で退職可能性がこれまでより高い

今の若者は「就社」より「就職」意識が強く、職務へのこだわりも強い。仕事のイメージが理想と違っていれば簡単に辞めてしまう。特に今年の新人はその傾向が高い。就職情報研究所の平野恵子所長は2025年入社の社員の特徴の1つとして「恵まれた環境を当たり前と思う感覚の世代」と指摘する。

「25年卒は売り手市場の中で、初任給アップの恩恵を受け、配属先を固定してもらうなどの企業の細かい配慮が目立った年でもあった。何かをしてもらって当然とか、自分たちがチヤホヤされることを当たり前と思っている感覚が23年卒、24年卒に比べて高い可能性がある。初任給を大手企業並みに上げられない中堅・中小企業にはその分育成など、より高い配慮を求める可能性がある」

つまり、仕事を覚えるのに配慮が足りない、優しくないと思えばこの会社はもう無理と退職を決断する可能性もある。今の学生は内定バブルといわれ、5~6社の内定をもらっている人も少なくない。人材獲得競争下で、早期に離職しても、新卒扱いで迎え入れる会社も増えている。入社後の定着のためのサポートは従来以上にハードルが高くなっている。


溝上憲文 人事ジャーナリスト

溝上憲文

人事ジャーナリスト/1958年生まれ。明治大学政経学部を卒業後、新聞、ビジネス誌、人事専門誌などで経営、ビジネス、人事、雇用、賃金、年金問題を中心に執筆活動を展開。主な著書に「隣りの成果主義」(光文社)、「団塊難民」(廣済堂出版)、「『いらない社員』はこう決まる」(光文社)、「日本人事」(労務行政、取材・文)、「非情の常時リストラ」(文藝春秋)、「マタニティハラスメント」(宝島社)、「辞めたくても、辞められない!」(廣済堂出版)。近著に、「人事評価の裏ルール」(プレジデント社)。
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人事ジャーナリスト/1958年生まれ。明治大学政経学部を卒業後、新聞、ビジネス誌、人事専門誌などで経営、ビジネス、人事、雇用、賃金、年金問題を中心に執筆活動を展開。主な著書に「隣りの成果主義」(光文社)、「団塊難民」(廣済堂出版)、「『いらない社員』はこう決まる」(光文社)、「日本人事」(労務行政、取材・文)、「非情の常時リストラ」(文藝春秋)、「マタニティハラスメント」(宝島社)、「辞めたくても、辞められない!」(廣済堂出版)。近著に、「人事評価の裏ルール」(プレジデント社)。

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