人材採用

Z世代を深読みする〜小さくても自分らしい幸せを〜【第1回】Z世代を知る!コロナ禍を生きる若者との付き合い方

「初めて持った携帯はスマホ」が当たり前というZ世代の新卒社員たちは、それまでの世代とは価値観や人生の考え方が異なります。そのため、Z世代の新卒社員をどうマネジメントすればよいのか、辞めさせないための方策はあるのか、採用活動でのコミュニケーションはどうしたらよいのかと悩む方が後を絶たないといいます。
そこで本連載では、「Z世代の新卒社員や就活生との付き合い方」をテーマに、大学・専門学校の授業やセミナー、相談、企業向け執筆や講演などさまざまな形でZ世代に向き合う就職・採用アナリストの斎藤幸江氏に執筆してもらいます。

斎藤 幸江 就職・採用アナリスト
就職情報会社勤務後に独立。働く若者と職場を元気にするをモットーに、授業科目・セミナー講師、寄稿等。 某私大にて、学生が選ぶベストティーチャー(大規模授業)受賞(2015年度、2020年度)。近著に「キャリアデザインの教科書」(労働調査会 共著) 国家資格キャリアコンサルタント。
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Z世代を知る!コロナ禍を生きる若者との付き合い方◆第1回◆

Z世代を深読みする〜小さくても自分らしい幸せを〜

「最近の若者は……」という嘆きは、古代ギリシアの頃から使われる常套句として今もよく聞こえてきますが、令和においてはまったく様相が異なります。

スマートフォンの普及、SNS文化の醸成、コロナウイルスの蔓延といった断続的な変化の中で生きてきた「Z世代」の若者たちは、これまでとは異なる価値観を持っています。そのため、これまでと同じ「若者」として彼らと向き合うとうまくいかないケースが多々あるようです。

そこで今回は、「Z世代」との適切な付き合い方を知るべく、その特徴や背景を就職・採用アナリストの斎藤幸江氏に解説してもらいました。

新卒

Z世代のイメージとデータから見る実態にはギャップが

冒険は、しません

2020年、コロナが世界を襲い、先の見通せない社会情勢や採用プロセスの急な変更は、大学生に就活への大きな不安をもたらしました。そんな中、感染予防への呼びかけで、あっという間にマスクが必須アイテムに。

「ここは、マスクにひと工夫して、アピールだよね?」

日頃、キャリアの授業やセミナー、進路相談に携わる私は、期待を膨らませます。マスクは小さなメッセージボード。自己アピールにつながるイラストやフレーズを描ける。志望企業の商品やキャラクターの小さなイラストを入れてもいい。きっと冒険する就活生がいるはず! しかし、そんな学生は周囲では皆無。残念な結果となりました。

学生の就職・キャリア支援や新卒採用に関わって三十数年––。いつなら、マスクにメッセージを書く就活生が存在したのでしょうか? うーん、十数年前なら、いたような? では、その時代と今で違う点は何でしょう? 彼らの生育環境等の背景に目を向けつつ、Z世代、とりわけ現在の大学生から二十代の特徴について考察します。

Z世代についての基礎知識

Z世代とは、90年代半ば以降に誕生した世代。さまざまな考察がなされていますが、ここで具体的な調査データを紹介しながら、よく挙げられる特徴をみてみましょう。

●デジタルネイティブ
生まれた時〜小学校の間にiPhoneが発売され(2008年)、携帯電話を経験せず、スマホユーザーになった世代。同時に学校教育でもパソコンの導入が急速に広がり、小学校でのパソコン普及率が9割に及び(2000年 88.9% 2002年 90.2%)、7割がパソコンを使った授業の経験がある。(以上、学研教育総合研究所調べ) 現在も他世代と比較してインターネットの利用時間は、突出して長い(平日:10代 224.2時間 20代 255.4時間 全年代平均 168.4時間 休日:10代 290.8時間 20代 293.8時間 全世代平均 174.9時間 総務省 令和3年1月調べ)。

●効率重視
「タイパ」(タイムパフォーマンス)といわれる無駄な時間を省略、削減する志向。動画の倍速視聴や10秒スキップ。倍速視聴の20代経験者は、半数(男性 53.5% 女性 43.6% クロス・マーケティング 2021年3月調査)。 また、不確実な結果に向けた努力を回避する傾向がある。

●「好き」を重視
「推し」や「映え」など、自分のお気に入りを大切にする。「これ、いいよね!」と思えるコト・モノが重要。周りの評判よりも自分が好きなものを選ぶ志向が強い(自分が良いと思うものを選ぶ(A)か、周りの評判がよいものを選ぶ(B)か Aに近い 34.5% ややAに近い 45.2% 電通マクロミルインサイト 2019.12調査 全国の15〜29歳対象)。

●調和的人間関係
先の電通マクロミルインサイト調査によれば、「自分の意見を言うとき、みんなに反対されないか気になる」65.3%、「不愉快な表情をした相手には、なるべく機嫌を戻してもらうようにする」59.5%(以下全て「当てはまる」「やや当てはまる」計 以下同)、「話している相手が喜ぶことを心がける」73.2%、「周りの人が助けを求めていれば、率先して手を差しのべる」64.5%、そして「人の相談事にはできるだけ耳を傾ける」79.9%など、ほとんどが、他人に優しく柔らかく対応している。

●社会問題への高い関心
日常生活において、「SDGs」や「社会課題」を意識し、何らかの行動を起こしている人の割合が10代、20代で高く、30 代以上に比べ、10 代、20 代では「意識し、行動している」と回答した人が2倍以上(10代 20.9% 20代 19.6%)で、かつ「何かのきっかけで意識したときに、行動することがある」を合わせると、両年代とも半数に達する(損保ジャパン 2021年7月調べ)

調和志向の中で幸せを求め続ける世代

窮屈な時代を生きる

インターネットを駆使して、人と繋がり、さまざまな情報に触れて、好きなものを探し、無駄を省いて効率よく物事をこなしていく。生活をエンジョイしつつ、人や社会への優しさを併せ持つ––。これらからは、そんな若者像が見えてきます。

しかし、私が現場で実感しているZ世代像は、「幸せに正しく生きたい繊細な若者」。窮屈な時代の中で、神経を尖らせながら、幸せを探る姿です。デジタルネイティブは、便利な反面、生きづらさと無縁ではありません。多様な情報リソースにアクセスできる一方、人間関係の構築は難しく、SNSなどを介して、いつ、負の自分をさらされるかわからないリスクもあります。日本財団の18歳意識調査によると、17〜19歳の12.8%がSNS上で誹謗中傷を受けた経験を持っています(2020年調べ)。

悪意のない相手から、自分の醜態をネットで暴露されるのは、若者にとって「あるある」です。私自身、前日に飲み過ぎた女子学生がその姿をSNSにアップされ、他の学生から非難を受けて涙ぐんでいる光景を、大学で目にしたことがあります。どこで“さらされる”か、わからないから、ちゃんとしなければという意識は、その前の世代に比べて強いです。

自分たち世代より年長者の比率が一気に上昇したのも、実はこの世代です。国勢調査をもとに、20代の人口に対する10歳以上年上の人口比を計算したところ、1990年には3.4(40歳以上の人口が20代の3.4倍 以下同)、1995年には3.3だったものが、20年後の2015年には、6.3、2020年には6.2と、2倍に迫る増加率を示しました。日常生活での年長者の急増といった環境変化が、無難・調和志向の一因と考えられないでしょうか。

Z世代は、周囲の目や評価の中で平和かつ平穏に過ごすために日々、努力しています。

「折り合い」ではなく「選択」

ネットでの情報収集は、選択の連続です。キーワードで検索し、欲しい情報の有無を確認し、さらに検索をかけ、得られた情報の価値を判断し、選択して参考にするといったように、基本は「取捨の判断」の積み重ねになります。

一方、人に情報を求めると、どうでしょう。ヒントや違った視点でのアドバイスなど、予想や期待の外から回答を得られることも少なくありません。こうした取捨選択以外のアプローチからこそ、視点の転換や既存にない発想、異種同士のアレンジや複雑な調整といった能力が育っていくのではないでしょうか。

デジタルネイティブの世代と接して感じるのは、意思決定が非常に選択的であること、応用力や異種のものを結びつける力が弱いことです。たとえば、「やりがいと労働環境、どっちを重視すればいいですかね?」とよく聞かれます。「両方を選んで折り合うなら、どんなバランスがいい?」と質問すると、答えに窮してしまいます。「結局、どっちなんですかね?」と決めて欲しがる学生によく出会います。応募書類にアドバイスをしている時も、「今のままでは、通過できないってことですよね?」と結論を求めがち。はっきりしないことに苛立ちを見せる傾向が見られます。

窮屈な社会でまとまりながら不安を抱く

見えてくるZ世代の姿

これらをもとに、最初に挙げたZ世代の特徴をもう一度整理しましょう。

選択志向の彼らによくみられるのが、「曖昧の回避」。タイパをはじめとする効率重視は、時間が惜しいだけでなく、先がわからない状態で気持ちを揺さぶられたくないのです。結果を担保されない努力の回避も同じです。

いい人でいるために、他人と居心地の良い交流に腐心する姿にもこの特徴が見えます。コミュニケーションにおける相手の混乱、憤りといった反応は、その後の展開が読めず、苦手なのです。加えて、いい人でいたい、という彼らの志向は、調和し周りから浮かないための対策でもあります。好きなもの志向で、一見、自分の感情を優先しているようにみえても周囲との調和への忖度があります。非常にレアなファンをアピールする人は少ないし、ある程度ファン層がいる「推し」や、「いいね!」がつきやすい映えアイテムを選ぶなど、調和への配慮もみえます。

社会貢献への高さについては、食糧自給率向上を動機とした大都市圏から農学部への進学、SDGsや人権問題といった研究テーマの人気、子ども食堂などのボランティアに参加という学生は、実感としても確かに増えています。危機感や当事者意識の上昇という背景の一方で、彼らと話していると「確実に正しいものに関わる安心感」が、貢献への意欲に繋がっているのでは?と思うことも増えてきました。正義を「選択」することは、彼らを生きやすくするのかもしれません。

自分を損なうことなく周りと調和し、安心で幸せな生活を送りたい。私は、Z世代の志向をそのように読み解いています。ある程度、実現できているようですが、彼らなりの葛藤も抱えています。

相手を絶対不快にさせまいとする過度の調和志向は、深いコミュニケーションを遠ざけてしまいます。友人と就活情報を交換できる学生は、今や、少数です。就活は、対等な立場を壊しかねないデリケートな話題で、危険なのです。「状況を聞いた相手が私より進んでいたら、私に対して『進捗を伝えたことで不安にさせたかも?』って気にしますよね? 逆だったら私が同様に罪悪感を持ってしまう。就活ネタはNGです」(就活生談)

そこで学生は、SNSで就活用のアカウントを作り、「23卒とつながりたい」と#(ハッシュタグ)をつけて交友関係外に情報を求めます。しかし、満足度は高くなく、話したいテーマを率直に語り合える人間関係が欲しいという声も少なくありません。

「こんな感じでいんじゃね?」と窮屈な社会でまとまりながら、「もしかしたら違うかも?」と不安を抱いているZ世代。彼らが秘めたポテンシャルをどう引き出すか。次回以降、取り上げていきます。

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