人材採用

Z世代のやる気を引き出す~新人・若手社員との関わり方~

斎藤 幸江 就職・採用アナリスト
就職情報会社勤務後に独立。働く若者と職場を元気にするをモットーに、授業科目・セミナー講師、寄稿等。 某私大にて、学生が選ぶベストティーチャー(大規模授業)受賞(2015年度、2020年度)。近著に「キャリアデザインの教科書」(労働調査会 共著) 国家資格キャリアコンサルタント。
◆解説者のその他の記事はこちら◆

Z世代を知る!コロナ禍を生きる若者との付き合い方◆第3回◆

Z世代の多くは、既定のルールに則った効率重視の行動を執る傾向にあるといいます。

複雑な問題を自力で考えたり、客観的に分析する力が弱く、その結果、失敗をするとそれを自分のせいにしてその問題を最短で終わらせようとしてしまいます。

就職・採用アナリストの斎藤幸江氏は、こうした「自責癖」を早い段階で止めさせなければ、状況を客観視する視点や意欲を喪失させ、成長を止める恐れがあると指摘します。

そこで今回は、Z世代に多く見られる「自責癖」を止めさせ、やる気を引き出すにはどのような関わり方をすればいいのか、斎藤幸江氏に解説してもらいました。

【第1回】Z世代を深読みする〜小さくても自分らしい幸せを〜
【第2回】Z世代に共通する特徴的なルールを理解する~新人・若手社員との関わり方・前編~

「自責癖」を取り除こう

自分を責めがちなZ世代

「私に実力がないから、お客様を満足させられなかった……」

このように、Z世代には、悪いことが起こると自分のせいにする傾向が強くみられます。自己効力感が低い人が多く、「こうなったのは、自分の何かが足りないからだ」と考えてしまうのです。

Z世代の多くは、相手が提供した選択肢から選ぶ、決められたルールに則って動く、効率化をめざすというスタイルに慣れています。
複数の要素が複雑に絡み合う状況を、自らの力で読み解いていくことが苦手で、それが自責を招いているとも考えられます。

簡単に言うと、「自分のせい」と結論づける方が、客観的に検証するよりも楽で早いのです。

自責が癖になると、自ら学習性無力感(自分は、何も達成できないと学習してしまう)を生じさせたり、状況を客観視する視点や意欲を喪失させたりし、成長を阻害します。手遅れにならないうちに「自責癖」をやめさせましょう。

視点を変えて自責を抑止

自責が癖になりやすい人には、悲観的思考を持ちやすい特徴があります。
したがって、日頃から、そういった見方を避けるよう意識できると、自責の抑止になります。

一般的にひとは、何らかの事態が生じた時に、主体、すなわち主語として示されたものに原因を求めます。
たとえば、打ち合わせがうまくいかなかった場合を考えてみましょう。
これを「私が、顧客を不快にさせた」と表現すると、「私の何が、不快にさせたのだろう?」と考えがちです。

しかし、実際は、自分のせいだけとは言い切れないことも多くあります。

それなら、悪いことが起きた時に、主語を自分以外に置き換えて捉えなおしては、どうでしょう?
単純な自責を回避して、自分から事態を一度切り離して客観的に見つめ直すことが、可能になります。
「顧客が機嫌を損ねた」と言い換えれば、「彼は最初からイライラしていた」、「当社の製品を誤解していた」など、自分以外の要因にも目を向けやすくなり、広い視野で冷静に原因を捉えられるのです。

悲観的思考の視点を変える方法は、もうひとつあります。
良いことがあった時には、積極的に主語を自分に変えていく方法です。先に挙げたように、ひとは出来事の原因を主語に探しがちです。それなら、自分自身に視点が向く表現を取り入れれば良いのです。
「契約が取れた」ではなく、「私が契約を取った」と考えることで、自己効力感も少しずつ上がっていきます。

こうした視点の転換は、上司や先輩など、周囲から働きかけるとうまくいきます。
「契約に失敗しました」といわれたら、「ちょっと待って。契約が、成立しなかったんだよね?」とまず、言い換えます。
その上で、「契約や交渉、説明に、問題があったのかな? 先方が契約しなかったのはなぜかな?」と質問します。

要因をどのように分析するのか、そのプロセスを実例で示す効果もあります。「先方が喜んでいました」との報告には、「あなたが喜ばせたんでしょう? どうやって?」と尋ねます。

これらを繰り返していくことで、自責の回避に加えて、「周囲は自分を評価してくれている。問題があった時には、一緒に課題解決に取り組んでくれる」との認識も生まれます。

言葉に注目して傾聴へ

とても小さいことですが、こうした言い換えには、以下の二つのメリットがあります。

ひとつは、単純で取り入れやすい点です。準備が不要で、悪いこと、良いことの説明で、相手がどちらを主語にしているかに注目すればよく、すぐ実践できます。

もうひとつは、コミュニケーションが深まる点です。まず、「どう説明しているのかな?」と聴くことで、自然に傾聴が生まれます。主語だけでなく、説明の癖や本人の特性の把握がしやすくなります。

短く合いの手を打てる点も、コミュニケーションを活性化させます。最近の会話では、相手の話を全部聞いてから、短くコメントをするスタイルがよくみられます。遮らない姿勢は望ましいですが、相手の反応を最後までつかみにくいというデメリットもあります。

要所要所で、「これは、こういうことだよね?」と示すことで、相手の発言への興味を伝えられ、信頼関係の構築にもつながります。

継続すれば、自分から主語を変え、複雑な状況を分析しながら課題に向き合う力も育っていきます。

簡単に始められるので、ぜひ挑戦してください。

利他的な動機づけをする

聴く態度を意識させる

学生や入社して間もない社員から、「職場で丁寧に指導してほしいのに教えてもらえない」という声をよく聞きます。
特に、「これ、過去に言ったよね?」とぞんざいに扱われることが多いようで、「いや、初めて聞いた」、「わからなかったらなんでも質問してと言われていたのに」など、若者の不満や不信につながっています。

そんな彼らに対して、「ところで、あなたは教えたくなる姿勢や態度を見せていましたか?」と投げかけています。

「メモを取ったり、質問をしたり、わかったことを復唱したり……。そういったことを一切せずに、『はい、わかりました。大丈夫です』と答えていないかな? それでは、『本当に大丈夫かな? わかっていないのでは?』と相手に不信の種を植えることになる。だから、『あぁ、やっぱり、わかっていないんだ』と思われるんだよ」

そう話すと、納得する人がほとんどです。

アドバイスも主語を変えて

現場で、相手の「聴く姿勢」に問題がある場合、どうすればいいのでしょうか?

「指示やアドバイスを聴くのなら、ちゃんとメモを取るのが常識だろう!」と言うのは、避けましょう。委縮したり、その場でメモを取ること自体が目的化したりするからです。

実はここでも、主語を意識したコミュニケーションが有効です。
相手に何かを求める時に、「あなたは〜すべきだ、した方がいい」と伝えるのではなく、「私が必要としている」という姿勢で話すのです。

「話している時に反応が薄いと、こちらも不安になる。メモを取るとか、質問するとか、わかったことを要約して確認するとか、何か反応してくれないかな?」と話すと、若手側からも発信しやすくなります。

ちなみに、「メモを取るなら、もちろん、スマホでも構わない」と伝えることをお忘れなく。
多くの若者は、人前での手書きのメモ作成に、相当高い苦手意識を抱いています。配慮しましょう。

目上の人に強く出られることが苦手という若者に何かを求める時は、自分が主語になる話し方をすると、緊迫な状況を回避できてスムーズにコミュニケーションできます。

前回、説明したように、Z世代は、利他的な行動への親和性が高い特徴を持っています。
主語を変えて話すと、そんな彼らの動機づけにつながります。「私が報告(復唱)すれば、相手は安心する」と捉えてもらうことで、前向きな反応を期待できるのです。

自己開示で距離を縮める

想定外は苦手なZ世代

予想外の場面で感情が揺さぶられるのが嫌だから、映画の10秒飛ばしや早送りをする。

推しの絵師(イラストを投稿する人)さんの画風が変わったので、『画風が変わりましたね。〜な感じの今の方が私は好きです』といった内容のコメントを残したら、ブロックされた。期待と異なる見方をされたくなかったみたい––。
ネットでこんな投稿に出会いました。Z世代は想定範囲外の事態に苦手意識を持ちがちです。

私自身、学生や若手社員にアドバイスをすると、最後に「とても役に立ったけれど、思っていた方向と全然違うアドバイスだった」、「感謝しているが、そういう視点で助言してくれるとは思わなかった」といわれることが、年々増えています。

気になるのは、これらの声に動揺や戸惑いが混ざっている点です。そこで最近は、私がどのようなアプローチで相手の課題に向き合うかを、早い段階で伝えるようにしています。

方向性を事前に示す

「論理的かつ分析的に話す癖があるので、それが苦手だったら言ってくださいね」、「ちょっと変わった視点からの説明になりますが……」など、これからの展開の方向やスタイルを、あらかじめ開示します。

伝えた途端にホッとした表情を見せる人もいるので、彼らにとって安心材料になるようです。コロナ禍での対面コミュニケーション機会の減少も、こうした姿勢が歓迎される要因でしょう。

心理学の「返報性」(相手がしたことに対し、自分も相手に同じようにすること)の効果により、相手からの自己開示も期待できます。

「こういう感じでいくからね」という「自己開示」を会話のスタートに取り入れてはいかがでしょうか。

日常生活から変えてみる

今回、紹介した方法は、Z世代に限らず、日常生活でもコミュニケーションを円滑にします。

たとえば、食器洗い担当の家族が、洗い終わった食器をなかなか、しまわない。

「ちゃんとしまうって、言ったよね!」と責める代わりに、「洗った食器を棚に戻してくれると、ものすごく調理の準備がしやすいんだよね」と伝える。さぼりがちな相手に対して、「あなたががんばると、こちらも、やる気が出るんだけど」と言ってみる。

最初は「こちらが折れるのか」とモヤモヤしますが、結果として言い合いが激減し、ストレスが減り、人間関係もよくなります。

日常生活で効果を確認しながら、Z世代と信頼関係を築けるコミュニケーションを実践する––。そんな相乗効果を狙ってはいかがでしょうか。

エナジード
経営者JP

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