人材採用

【インテリジェンス】競争力の維持に不可欠な“ブランド力”を高め、確立することが今、求められている

人材ビジネス業界は規制緩和以降、新規参入事業者が急速に増加し、採用市場の“バブル化”も手伝って、拡大の一途をたどっている。しかし、ここに来て人材派遣業における不祥事が相次いだほか、収益を確保するためのM&Aによる大規模な業界再編の気運も活発化している。 昨年、学生援護会の買収により、人材ビジネスにおけるリーディングカンパニーとしての地位を確立し、業界を牽引するインテリジェンス社長の鎌田和彦氏に、現在の人材ビジネスを取り巻く環境と、今後の動向について聞いた。

パーソルキャリア

インテリジェンス(現パーソルキャリア
鎌田 和彦 代表取締役兼社長執行役員

現在のビジネス環境と、今後の展開・ビジョンについてお聞かせ下さい。

人材ビジネスを取り巻く環境は、長期的にはこのまま拡大傾向が続き、当社が世の中に提供できるサービスは増えていくだろうと考えています。組織側が人材を流動的に活用しようとしている動きもありますし、個人の組織に対する帰属意識が低くなっていることで、人材マーケット自体が流動化しているからです。世の中が成熟化、高度化する中で、この流れは不可逆的だと思いますので、今後もこの傾向は変わらないでしょう。

一方、短期的視点で見ると、企業の業績は順調であるのに対し、数年前までの組織拡大への手控え感から、この2、3年で直接的雇用、間接的雇用がともに増大しています。長期的な流れに、この波がさらに上乗せする形になったと言えるでしょう。ただこの短期的な人材雇用の膨らみはいつまで続くのかは予測できないので、表面的に活況だからといって、楽観視してはいけないと思っています。

人材ビジネス業界はここ10~15年の間に急速に参入企業が増大し、戦略なき拡大が可能な時代でした。最近、話題になっている様々な問題も、急膨張ゆえの反動だと認識しています。また、業界が急拡大すれば当然、量の競争、規模の競争が生じます。そのため、体力的に振り落とされないようにしなければなりません。スケールの拡大、クオリティの量化、収益性の拡張が、当面の課題でしょう。

そしてさらに、“ 規模の経済性” だけでなく、事業としての“ 範囲の経済性”も目指していかなければなりません。戦略的には、企業様からの「人や組織を整える」というニーズに対し、幅広くサービスが提供できる体制の充実も必要になるでしょう。

この点で、当社の事業範囲はなかなかユニークですし、それぞれに一定以上の規模があり、一定以上のクオリティも維持していると思っています。ワンブランドで全て提供するということが当社の特徴ですから、今後もその方針を推し進めていこうと考えています。

今後の競争に耐えられる体力の強化というのは、財務上の体力ですか。

確かに、まずは売上げ、利益規模、ROI(投下資本に対する利益率)という財政面がありますが、それだけではありません。どれだけ多くのお客様をカバーし、評価を得ているかという顧客基盤、さらに我々のセールスフォース、つまり組織能力の高さ、充実の度合い、これは契約代理店様といった外部のチャネルも含まれます。

そして、ブランド資産の強さ、ビジネスの仕組み・システムそのものなど、これら全ての要素を強化していくことが必要だということです。 これらの要素が結実したものがブランド力ではないでしょうか。また、ブランド力の高さは業界内での地位の高さ、規模等を包括したものを表すと思います。個人・法人、双方のお客様から、最終的に選んでいただけるブランドはそう多くはないはずです。その1つの中に我々は入っていかなければならないのです。

学生援護会を買収し、経営統合した効果は?

先般の経営統合については、目指す方向性の中でサービスや商材が広がったという意味で、大いなる前進があったと思います。具体的には、「DODA」(デューダ)という商材の結実がありました。いわゆる転職情報サイトだけではなく、人材紹介ビジネスも「DODA」ブランドで包括して提供できる強みがあります。

求職中の方、キャリアアップを考えている方は、対面して転職の斡旋を受けることができますし、ご自身の見解でウェブサイトから転職情報を検索し、求める情報に巡り合うこともできます。つまり、サービス自体が複合的に提供できるようになりました。この事業展開はとてもユニークなものだと思っています。従来から「DODA」は高い認知度があったので、これをリニューアルして新たに提供できたことは、経営統合した我々ならではのものだと思っています。

他にも経営統合により、「an」というブランドを確立し、アルバイト市場において大きなシェアを獲得できるようになりました。結果として、顧客基盤・営業要員・組織体力そのものの拡大が一番の成果といえるでしょう。

人材ビジネス業界全体の今後の動向についてどうお考えですか。

人材派遣ビジネスが日本で認可されたのは1986年。それから約20年が経過し、スケールによる競争が本格化したのは、2000年代前半くらいからだったと思います。その競争は、今、第二フェーズに入っています。具体的には、今後、派遣の世界でもM&Aが盛んに行われていくと思います。色々な面で社会の目が厳しくなっている中、業種ごとに線引きされていた派遣業界も境目がなくなり、規模的競争の段階に入ったのです。

人材紹介ビジネスは、97年に大幅な規制緩和がされ、急速に拡大してきました。また、インターネットというツールの登場が、業界拡大の大きな要因と言えるでしょう。ようやく人材派遣との違いも認識され始め、広がりを見せてきた今、10年前に派遣業界で起きていたことが人材紹介業界でも起きています。

規模が大きければ大きいほど、成長率が高く、より幅広く事業展開している会社が強い時代になり、ますます差が生じてくるでしょう。我々もライバル企業に対し、どう対抗策を講じるか、差別化を図るかが求められていると思っています。

一定以上の規模になると会社の特色は薄れていくものです。知名度が上がるにつれて、何が得意ということもなく、中身は似ていて規模だけが違うということになります。業界全体でみると、それぞれの会社の違いがわかりにくくなっています。それぞれの特色が見えにくくなる傾向にある中で、逆に細かい部分で他社と異なるサービスをいかに多く提供していくのかが大事なのだと認識しています。

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