チェンジ・エージェント
小田 理一郎 代表取締役
多くの日本企業ではバブル崩壊や経済不況後、人事制度改定やリストラなど組織ハード面での大なたを振るい人件費を削減する一方で、しばしば士気とチーム力が低迷する時代を経験しました。そして今、国内労働人口の減少、グローバルな人の流れと混乱、AI・ロボット技術の進展などの文脈で、多様な人材がいかにチームとして機能し、士気と生産性高めていくかが多くの組織の課題となっています。
さらに「脆弱、不確実、複雑、あいまい」な今日の事業環境において、組織が永続的にその目的を達し成果を出し続けるためには、人と組織がその潜在能力を十分に発揮し、成長し続けることが必要です。
しかし、研修などの人材育成も、組織の構造的な障害のために潜在的な力を発揮しきれないことがしばしばあり、今組織そのもののあり方や構造を再考し、人材育成と組織開発の両輪を回すことが不可欠です。
マネジメントの名著『学習する組織』において、MIT上級講師のピーター・センゲは科学と実践に裏付けられた思考枠組み及び変革手法を提起しました。
その要諦は、人とチームが志を共有し、一人一人が大局の視点から現実の複雑性を理解し、多様なメンバーが違いを乗り越え共創的な対話を展開するための能力を高めることで、事業環境の変化に適応し、目的に向けて効果的に行動し続ける組織を築くことです。とりわけ、センゲは、人や組織への取り組みを統合的に進める重要性を強調します。
本書は、これらの手法について実践事例を交えて解説すると共に、原書にはなかった近年の最新実践手法も紹介しています。また、実践者向けに、演習を用意し、その振り返りを通じて実践上の疑問や押さえどころについての解説や問いを加えています。
学習する組織の本質は、日本人が本来持つ東洋思想と通ずるものが多いと感じます。人と組織が相互に発展し、進化できる新たな組織パラダイムの探求の一助となることを願います。
小田理一郎 著
英治出版、1,900円+税
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