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前川 孝雄 代表取締役/青山学院大学兼任講師
執筆動機は、人材育成支援を手掛ける弊社が、様々な企業に『部下を育て活かす 現場の上司力研修』を提供するなかで、「年上部下の扱いに困っている」という声があまりにも増えてきたからである。背景にあったのは、国内市場成熟に伴い、上司のポストが限られ、定年延長や高齢者雇用も推進されるなか、上司と部下の年齢逆転の潮流はもはや避けて通れないという現実。
2006年に『上司力トレーニング』(ダイヤモンド社)を上梓して以来、2008年『頭痛のタネは新入社員』(新潮社)、『女性社員のトリセツ』(ダイヤモンド社)、2010年『若手社員が化ける会議のしかけ』(青春出版社)など、部下の対象別に上司はどのようなリーダーシップを発揮すべきか、考察を続けてきた。しかし今回ほど苦労した本はない。
単に年上部下の指導法を指南するに留まらず、日本企業の強さの源泉であった、男性正社員中心の年功序列型ピラミッド組織の崩壊を受け入れ、次の時代の組織のあり方を考えるという壮大なテーマに挑むことになるとわかったからだ。
求められていたのは、成果主義失敗の二の舞を踏まないよう、グローバル化とセットで欧米から持ち込まれるものそのままではない、日本型ダイバーシティマネジメントを丁寧に提案することだった。
未来への手掛かりは現場にしかない。本書では、現場の年下上司の葛藤、年上部下の本音、企業事例を丹念に取材し、日本型ダイバーシティ組織がどうあるべきかを考察。また年下上司がやりにくさを解消し、互いが歩み寄るための「ルール化」を提案している。
パラダイムが大きく変わる現在、惰性の過去の延長に未来はない。発想転換を促すべく、あえて極端な視点も盛り込んた。本書が多様な人達が気持ちよく働く職場づくりの一助となり、日本企業がこれから生きる道を探るヒントとなれば幸いである。
前川孝雄 著
ダイヤモンド社、1500円