人材採用

【エグゼクティブ・リクルーターニュース】アジア・マーケット拡大で人材獲得競争が激化

経済のグローバル化にともない、グローバル・サーチといわれる人材会社が世界的な規模で優秀な人材の獲得と紹介を進めている。特に、ここ数年、マーケットの拡大が著しいのはアジアにおけるエグゼクティブ・サーチ(ヘッドハンティング)だ。人材獲得の国際的な動向を、J.D.マクールエグゼクティブ・リクルーターニュース前編集長に聞いた。

エグゼクティブ・リクルーターニュース
J.D.マクール 前編集長

グローバルサーチファームのアジア市場における今後の展望についてお聞かせ下さい。

グローバルサーチファームにとって、近年急速に巨大化するアジアマーケットは、世界全体の中で見ても位置づけが高くなっています。特に、中国、インド、香港が注目されているマーケットでしょう。得られる収益も非常に大きくなり、発展のスピードが速いので、今後も大きな可能性を感じています。

世界的な5大サーチファームの1社は、グローバルリサーチセンターをインドに設置していると聞いています。また、アジアに非常に優秀な経営者がいることも認識しています。しかし全体で見ると、まだまだ発展途上段階で、今後もマーケットの教育が必要だと思います。

アジアマーケットにおける日本のポジションは?

日本がGDPで世界第2位の国であるにもかかわらず、リテイナー比率が非常に低いことは知っています。グローバルサーチファームにとっても、日本マーケットというのは非常にチャレンジングなのです。というのも、日本には年功序列などの文化的な制度があり、人材の流動性が低かったからです。しかし、今後は以下の2点から日本マーケットには変化が起きると考えています。

1つ目が、日本の会社が少子化の影響を受け、労働人口も、また経営者も人材が少なくなってくるだろうということ。2つ目は、今後、より一層、アジア各国、特に中国、インド、シンガポールなどとの競争にさらされるだろうということ。競争が激化すれば、日本は外部から優秀な人材を受け入れざるを得ないでしょう。外部人材の獲得による競争力強化が不可欠になります。

巨大サーチファームのコンサルタント1人当たりの売上平均は、ブティック型サーチファームよりもかなり高いですが、その理由は?

5大サーチファームは、過去21年間、5社間での売上ランキングは上下するものの、上位5社のポジションは変わっていません。すでにブランドを確立し、世界中の会社、経営幹部候補者たちにもよく知られていて、CEO、CFOなど、高いポジションのサーチを行っています。

彼らの仕事は影響力がとても大きく、クライアント企業が利益を上げるための起爆剤になっています。それは、経営に大きな役割を果たすCEOレベルの人たちを紹介できるからです。通常のサーチファームが50万ドルならば、彼らはその倍を売上げられるだけのブランドとプラットフォームがあります。しかし、5大サーチファームの利益率は過去21年間で変わっていないのです。

それは、イノベーションに欠けているとも言えるのではないでしょうか。新しいところに入り込んでいく新機軸が出せず、クライアントからの満足度が50%以下という報告もあります。その背景には色々な要因があるでしょう。例えば、5大サーチファームのうちのC社はニューヨーク、H社はナスダックに上場しています。よって、株主からクライアントとの関係、とりわけ収入やビジネスの方法についてのプレッシャーが大きい。

また、オフリミット条項の問題もあります。クライアントが場合によっては5千社にもなりますが、オフリミット条項があるために良い候補者にアクセスできない場合があります。ブティック型のサーチファームは良い候補者がいればいくらでもアクセスができます。

そして、大手のサーチファームは一定以上のフィーでなければ受けないというレベルがとても高いのですが、それを強調するあまり、現実にはクライアントに満足を与えていない場合も少なくないのです。私の著書にも書いたのですが、いかにクライアントに満足を与えられるかが最も大事なはずです。

サーチファームの市場が成長している要因は?

1つ目の要因は、経済・産業が発展する中で、人口分布として戦後すぐに生まれた世代がどんどん減ってきて、その部分に他から優秀な人が動くようになったことがあります。

2つ目は、企業は、これまでは内部で人材を育て、外部からの人材獲得はオプションだったのですが、経済のスピードが速くなり、外部から人材を獲得するメリットが大きいという見方が出てきたことでしょう。

3つ目は金融分野でグローバリゼーションが進み、新しいマーケットがどんどんできていること。中国、ドバイ、モスクワ、ブラジル、もちろん日本も。この分野がサーチファームの売上げと利益に貢献しています。

サブプライムローン問題がサーチファームへ与える影響は?

不動産と金融が影響を受けているのは事実です。 採用も止めているし、どんどん減速しています。しかし、この分野は、世界的に、特にニューヨークとロンドンは、過去おいても最も利益を出していたのです。

確かにアメリカだけを見れば落ち込んでいますが、エグゼクティブのマーケットはまだまだ底固いと見ています。昨年の市場の伸び率は20%くらいでしたが、バイオケミストリー、インターネットテクノロジー、メディカル、エネルギー、食品といった産業は、変わらずにエグゼクティブ・タレントを求めているので、サブプライム問題の影響を考慮しても今年も10~18%の成長は見込んでいます。

ネットリクルーティングがサーチファームに与える影響は?

ネットリクルーティングは、確かにこの2年ほどで浸透してきています。しかし、どちらかと言えば、自分で仕事を探そうとする若い人とミドルレベルの人たちが中心です。リテイン型のエグゼクティブサーチファームには全く影響ないと考えています。

ファームの対象は既に仕事に就いている層ですし、コンサルタントとの信頼関係があるので、彼らはネットリクルーティングにレジュメを出さないのです。以前、モンスター・ドット・コムがエグゼクティブサーチをやろうとしたのですが、結果的には失敗しています。

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