マーサージャパン
白井 正人 取締役執行役員 組織・人事変革事業責任者
日本経済が低成長に苦しむようになってから30年が経ちます。人口減少もその原因ですが、日本は一人当たりGDP成長率も対先進国で負けており、長期的な低成長には人口減少以外にも構造的な要因があるはずです。
私は、その大きな一因が日本固有のメンバーシップ型雇用なのではないかと考えています。メンバーシップ型雇用から、市場原理を採り入れたジョブ型雇用への切り替えなしに、日本企業、日本経済が再興することはないのではないか、という問題意識がこの書籍の根底にあります。
メンバーシップ型雇用は、フルコミットメントと終身雇用の取引であり、長期勤続が常態となるため、習熟や擦り合わせに優れています。これはバブル経済崩壊前までの最大公約数的な事業の成功要因である“良い品安く”に合致し、日本企業・経済の成長を過去後押ししてきました。
しかし、21世紀となり、事業の成功要因がデジタル化、グローバル化に変わるとともに、メンバーシップ型雇用の有効性は落ちました。デジタル化、グローバル化の文脈の中では、戦略に必要な組織能力に大規模なシフトが必要であり、人材の入れ替えや個人のリスキル・スキルアップが重要になります。しかし、メンバーシップ型雇用では人の入れ替えは限られ、個人が自身のキャリア(仕事)を決定しないため、自発的なリスキル・スキルアップが難しいのです。
そこで、ジョブ型雇用の必要性が高まりました。ジョブ型雇用はジョブを介した労働力と報酬の市場取引です。対等取引ですから、個人は売物(ジョブ)を自ら定めた上で、現在また将来必要な能力を得るためリスキル・スキルアップします。法律論は置いておくと、会社はベストな人材を確保するため、個人はより良いキャリアを描くため人材の流出入が発生し、デジタル化・グローバル化に必要なトランスフォーメーションに適しています。
本書では、単なる人事の技術論ではなく、ジョブ型雇用が必要となった背景、雇用システムの全体像、主要な施策、導入の進め方や課題等につき、経営者の目線で紹介しています。
白井正人 著
ダイヤモンド社 2,200円+税