ライブレボリューションは2000年創業のベンチャー企業。モバイルマーケティングを専門に扱う広告代理店事業を柱として急成長している。ビジネスモデルはもとより、採用戦略をはじめとするそのユニークな経営モデルは、大手企業からも一目置かれる存在となっている。 今年の新卒採用は、応募者1万4000人に対し内定者は7人。超難関企業となっている。採用を指揮する金子真歩取締役にその戦略を聞いた。
ライブレボリューション
金子 真歩 取締役
社員40人で年商20億円を超える
ライブレボリューションの社員は広報、経理といった間接部門も含めて現在40人弱。 主な職種は、Web デザイナーやプログラマーなどの技術職、多様なモバイルサイトの中から、顧客に合った媒体を提案するメディアプランナー、マーケティングプランを提案するアカウントプランナーがある。営業職であるアカウントプランナーは8人ほどで、年商22~24億円を売り上げている。
金子取締役は「これだけの生産性をあげている企業は少ないのではないでしょうか。少数精鋭なので、採用時には母集団となる人材をたくさん集め、その中から厳選しています」と強調する。
少量のインプットで多量のアウトプットが出せる人材
同社が求める人材像は明確で、次の3つの要素を必要とする。まず第1に自分の夢と会社のビジョンが一致すること。第2に同社の価値観である“LR HEART”に共感していること。第3に労働生産性から見て少量のインプットで大量のアウトプットを出せることだという。
「当社の目標は“ 宇宙一愛される会社” です。その目的達成のために手段を問わないという人は、当社の価値観に合いません。“ノルマなし、順位づけなし” などの社内文化があり、社内競争原理を利用した社員のモチベーションアップの方法をとっていません。ですから社員の夢と価値観が会社と合致していないと、優秀な人でもさぼってしまうことになります」
「また、一般的に“ 優秀な人” は、長時間働いて大量のアウトプットを出している場合が多いですが、当社ではそういった人材はあまり評価していません。少ない労働時間でも集中して最大のアウトプットを出し、あとはプライベートを楽しむような人を求めています」と金子氏は話す。
人材を厳選するための母集団形成に注力
同社が新卒採用を開始したのは2005年から。それまでは中途採用を行ってきたが、独自で育んだ企業文化を絶やさず貫くことを意図して、現在は、新卒のみの採用活動を展開している。終身雇用制の崩壊後の採用の常識からみると、きわめて稀な方針といえる。
新卒入社で退社した社員はまだおらず、離職率0%という驚異的な数字を誇っている。
同社の選考は、8次面接まで実施している。わずか2人の採用担当者で多数の志望者に対応するため、自動送信のウェブメールを効果的に活用したり、内定者に次年度のセミナーの開催や初期段階の面接を任せる方法をとっている。
採用までの流れは、セミナーのプロモーション活動から始まる。人材を厳選するためにも、母集団形成に注力している。大勢の学生を集めるため、「自己分析法」「伸びる企業の特徴」「大手とベンチャーの違い」「採用突破のテクニック」という学生が知りたい4大テーマに答えるセミナーを開催する。
初年度は3000人を集め、翌年は8000人、今年は1万4000人と、参加者は年々増加の一途を辿る。セミナーの内容を内定者が書籍化し、参加者に無料配布するなど、関心を高めている。
セミナー参加者には、同社の採用管理システムに登録してもらう。登録者に対し週1回、就職先が決まるまで、ステップアップメールを届ける。内容は面接での注意点などのアドバイスが中心だが、返信フォームを設けОB訪問などを受けつけており、同社に興味を持った、共感した学生のアクションを促す仕組みを整えている。
選考は、8次面接まで実施
その後の会社説明会で初めて同社のビジョンや経営理念を中心に伝える。1次選考は筆記テストのみ。2次、3次選考では1時間程度、志望動機や学生時代の成功体験などを聞いていく。
「採用サイトやセミナーで、事前に面接で答えるべき要点を伝えています。それに沿って答えればいいのですが、まずはこれができるかどうか。優秀な人はきちんと答えます。チェックするポイントは決まっているので、3次選考までは内定者に担当してもらっています」
「この段階で採用候補者を約10分の1に絞ります。選考には加味しませんが、各選考の前には、当社が独自に制作した心理テストを行います。テスト結果は面接の資料として使用しています。人材は会社の全て。人材獲得は経営の根幹にかかわる問題ですから、心理テストといっても他社に頼ることはしません」(金子氏)
4次選考は 採用担当者による面接を行い、過去の行動を聞いて行動指針を確認する。5次選考の役員による個人面接では、自己分析や夢などを総合的に聞いていく。
「ここを突破する内定予備軍は30人前後です。6次の個人面接では、仕事に対する考え方などを聞くとともに、事前告知した素材で文章読解テストを実施します。時間のかかる課題を出して他社でも内定を獲得できる人材、いわゆる“ 内定ゲッター” を振り落とします」(金子氏)
7次では最終面接に進む意思確認をし、最終(8次)の社長面接となる。 同社の面接は、面接官1人に対し、学生は1人もしくは2人。グループ面接は行わない。その理由について、金子氏は「グループ面接では、学生の質、能力は見極められない」と説明する。
メンバー(社員)第一、顧客第二主義
同社では社員のことを「メンバー」と呼ぶ。メンバーの満足度が高くなければ、顧客満足度も高まらないという考えのもと、「メンバー第一、顧客第二主義」を徹底している。
「採用実績は、07年卒の7人以降、9人、7人となっています。毎年30人ほどは採用したいと考えていますが、” 愛せる人”しか採りませんので、妥協はしません。ビジネスの成功のために、人をはめこむという発想はありません。適材を適所に配置して、ゆっくりでも成長できたらいいのです。潜在能力を見極めて厳選された人材こそが、入社後、自律的に行動し活躍するのです」(金子氏)。
採用に悩む中小企業へのメッセージ
条件や資格ではなく、求める人材像を打ち出す
「採用サイトはすぐにでも変えるべきです。哲学のない会社に人は集まりません。今の若者は生活のためだけに働かないというのが実状で、やりがいや社会貢献、自己実現などを求めています」
「就職活動の入り口となる採用サイトには、条件面や資格ばかりでなく、こういう人間が欲しいというメッセージを前面に打ち出すべきです。欲しい人材像を明確に持っていない採用担当者も多いようですが、人事は会社の要です。社内で一番会社への思いが強く、トップの考えを理解し、伝えられる人でなければならないと感じています」(金子氏)