【福利厚生の最新事情】福利厚生が採用や離職防止につながるポイントを解説

近年では、優秀な人材の確保が難しくなるなかで、福利厚生を充実させることで採用活動に活かす企業も増えている。企業の福利厚生には、いったいどのようなものがあるのだろうか。また、福利厚生の充実は、人材採用・管理の点でどのような効果をもたらすのだろうか。
企業における福利厚生の実施状況とユニークな事例を紹介し、福利厚生と新卒採用・離職防止などの関係について日本人材ニュース編集部が解説する。(文:日本人材ニュース編集部

福利厚生の実施状況

独立行政法人 労働政策研究・研修機構では、「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」を実施している。

この調査で企業に福利厚生制度・施策(サービス)48 項目について「施策の有無」(一部の事業所で実施している場合を含む)を尋ねたところ、以下の順で割合が高いことが判明した。

【法定外福利厚生制度・施策(「ある」割合が20%以上)】

  1. 慶弔休暇制度(90.7%)
  2. 慶弔見舞金制度(86.5%)
  3. 病気休暇制度(62.1%)
  4. 永年勤続表彰(49.5%)
  5. 人間ドック受診の補助(44.6%)
  6. 家賃補助や住宅手当の支給(44.0%)
  7. 社員旅行の実施、補助(43.5%)
  8. 労災補償給付の付加給付(40.1%)
  9. 病気休暇制度(有給休暇以外)(40.1%)
  10. 短時間勤務制度(36.4
  11. 有給休暇の日数の上乗せ(GW、夏期特別休暇など)(36.1%)
  12. 財形貯蓄制度(33.7%)
  13. 社外の自己啓発サービスの提供、経費補助(33.4%)
  14. 社外の自己啓発に関する情報提供(32.1%)
  15. メンタルヘルス相談(31.1%)
  16. 時差出勤(28.3%)
  17. 食堂(24.0%)
  18. 保養施設、レクリエーション施設等の提供、利用補助(22.1%)
  19. 食事手当(20.6%)
  20. 社内での自己啓発プログラム(20.5%)
  21. 治療と仕事の両立支援策(20%)

カテゴリ別に見ると、「休暇制度」、「慶弔災害」、「健康管理」に関連するものの実施が特に多いことがわかる。また、「家賃補助や住宅手当の支給」や「保養施設、レクリエーション施設等の提供、利用補助」など、働く人のプライベートやワーク・ライフ・バランスに関係する項目も並んでいる。

(出所)企業における福利厚生施策の実態に関する調査

ユニークな福利厚生の事例

近年では、ユニークな福利厚生制度を導入する企業も多くなっている。その一部を紹介しよう。

企業名福利厚生の制度名概要
チカラコーポレーション失恋休暇失恋した翌日から会社を休めるというもの
20代前半の社員は1日、20代後半は2日、30歳以上は3日の取得が可能
大和ハウス工業親孝行支援制度介護が必要な親が遠方にいる社員向けに、介護を目的とする帰省時の経済的負担を軽減するための制度
適用条件に該当した場合、年4回を上限に帰省距離に応じた補助金(1.5万円~5.5万円/回)が支給される
freeeshall we lunch?(ランチ補助)同僚とランチをする社員向けに、会社がUber EATS上限1000円までを補助する制度
毎月100人回限定
リクルートアニバーサリー手当年次有給休暇を連続4日以上利用することで、5万円が支給される制度
4月1日時点で在籍1年以上の社員であれば、年1回・毎年度の利用が可能
Chatworkお座敷列車で内定式健康維持・促進を促す目的で、運動をする部活動に対して四半期に1度、部費を支給する制度
バンク・オブ・イノベーション花粉症手当花粉症に悩む社員に、診察代・マスク・目薬・上質ティッシュなどを支給
通院費も年1回までは会社が負担。(上限あり)

新卒学生における福利厚生への関心度

近年では、自社の福利厚生を採用活動の魅了付けにつなげるケースも多くなっている。では、就職活動をする学生側は、企業の福利厚生に関心を持っているものなのだろうか。

マイナビ キャリアリサーチLaboでは、「2024年卒大学生活動実態調査 (4月)」のなかで、24年卒の就活生に「企業の福利厚生に関する情報について、勤務地・仕事内容・給料の情報と比べてどの程度関心があるか」を質問している。

回答で最も多かったのは、「勤務地・仕事内容・給料と同程度関心がある(63.4%)」だった。

また、同社が実施した5月の学生就職モニター調査の結果では、「企業を選ぶときに注目するポイント(ベスト3まで選択)」の1位が福利厚生だった。これらの調査結果から、福利厚生は就活生が企業を選ぶ際の一つの基準になっていることが見えてくる。

(出所)新卒採用における待遇・福利厚生の注目度の高まり―企業の取り組みと求められる情報発信とは?
(出所)2024年卒大学生活動実態調査 (4月)
(出所)2024年卒 学生就職モニター調査 5月の活動状況

福利厚生の事例~社員寮導入で採用力向上や離職防止に効果~

近年では、福利厚生として社員寮を取り入れる企業も増えている。こうした企業1000社に「社員寮ドーミー」を提供しているのが、ビジネスホテル業界で人気の「ドーミーイン」などを手掛ける共立メンテナンスだ。

「社員寮ドーミー」は、共立メンテナンスが食と住のサービスで長年培ったノウハウを生かし、おもてなしの心を凝縮した運営をしている社員寮サービスだ。2024年9月現在、全国の主要ビジネスエリアで231棟・2万室以上を展開している。

各寮には、マネジャーと寮母が常駐し、必要な家具や管理栄養士が考案した栄養バランスの良い朝夕2食の提供を行っている。浴場などの充実した共用施設が備わっている点も、魅力の一つだ。

また、初期契約や入居者入れ替え、寮異動などの手続きも簡素化されており、このサービスを利用する企業担当者の負担も生じにくいシステムとなっている。必要な時期・期間・室数だけの利用が可能であり、企業側には寮運営にかかるコストも抑えやすい利点がある。

社員寮を導入するメリットとして、入居した社員に快適な生活環境を提供するだけでなく、心身の健康維持や人との交流も促す効果があるとしている。それはつまり、自社の社員を守り、育み、創り上げていくうえで社員寮が大きな役割を担うということだ。

また、地方の大学生や高卒生の採用を強化する企業が増える中で、寮が完備されていると家族や送り出す学校の受け取り方がかなり良くなることも挙げられる。

実際に、情報通信企業では「社員寮ドーミー」を導入後、地方の高卒生の採用人数が毎年5人前後から25人へと大きく増加した。 社員寮は、離職率の改善面で効果を発揮することもある。電気設備企業では、「社員寮ドーミー」の導入によって社内交流が活発になり、30%近くもあった離職率が10%まで改善された。社員寮による社内交流の促進は、帰属意識が高まることによる離職防止やエンゲージメントの向上にもつながる。

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福利厚生は採用や離職防止のためにも重要

近年の就活生は、企業を選ぶ際に福利厚生も重視する傾向がある。こうしたなかで自社に合う優秀な学生を獲得するためには、就活生のニーズに合う福利厚生を充実させることも大切だ。

新たな福利厚生の導入に伴う担当者の負担やコストをおさえるうえでは、今回紹介した「社員寮ドーミー」のようなサービスを利用することも一つだろう。

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