育児・介護とキャリアの両立支援で女性活躍推進を強化【コクヨ】

コクヨは2024年4月から育児・介護とキャリアの両立支援制度を改正し、女性活躍推進を本格化した。多様な人材の活躍を通じたイノベーション創出を目指す同社の人事戦略について、執行役員 ヒューマン&カルチャー本部長 HR部統括部長の越川康成氏に聞いた。(取材・執筆・編集:日本人材ニュース編集部

コクヨ 越川康成 執行役員 ヒューマン&カルチャー本部長 HR部統括部長

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越川康成 執行役員 ヒューマン&カルチャー本部長 HR部統括部長

事業概要について教えてください

大きくは3つの事業があります。一番規模が大きいのはワークプレイス事業です。生産性や従業員の働きがいを高めるためのオフィス構築を手掛けています。 2つ目がビジネスサプライ流通事業で、オフィスで使う備品の通信販売を行っています。3つ目がステーショナリー事業で、文具の製造・販売を行っています。

人材マネジメントに力を入れるきっかけは何だったのでしょうか

私が入社した2022年から今後の成長に向けた人材・組織の課題を経営チームや各部門のマネージャーと議論してきました。その課題の一つに、部長職に女性がとても少ないということがありました。当社では新卒採用時の男女比率は女性の割合が50%を超えており、女性の方が多い構成となっています。それだけ優秀な女性社員が入社しているのに、課長職になると女性の割合は11%。部長職以上になると2%以下です。

この事実について問題視し、積極的に取り組んでいく上でも、人材マネジメント方針の策定や女性活躍推進の課題解決に向けて取り組みを続けてきました。

以前の人材マネジメントポリシーはどのようなものでしたか

元々、当社の人材マネジメントポリシーは明確になっておらず、人材マネジメントの考え方が何となくあったものの、言語化されていなかったり、細かな施策とつながっていなかったのです。それで役員間で色々議論を積み重ね、2023年11月に人材マネジメントポリシーをまとめました。

ポイントとなるのは、「一人一人に光を当てて、活躍の機会を提供する」ことです。今までは画一的に人材を管理するような制度運用になっており、人事異動の頻度も低く、長く同じ仕事をするのが当たり前となっていました。 しかし、社員一人一人の思いやポテンシャルを開花させることが重要であり、この一人一人に目を向けない限りは企業理念にある「be  Unique.」は実現しない、「躍動感ある会社にならない」と考え、人事異動を活発化させたり、社員の声を積極的に拾い上げたりするなど、柔軟な制度変更と運用を行ってきました。

人事制度改革の目的について教えてください

目的は、創造力の醸成とリーダーの育成です。クリエイティビティとリーダーシップの2つをキーワードにしています。 当社の強みは、クリエイティビティの源泉がしっかりと根付いていることです。お客様が何に困っているのか、どうしたら良いのかを非常に深いところまで考えてその要因に対してアプローチし、それを解決するために色々な工夫をしています。そういう顧客との共感性とクリエイティビティが特徴だと思っています。これを高めていくことが、会社にとって大きな競争優位性になります。

しかし、このようなクリエイティビティを持ち合わせていても、いざやろうとすると難易度が高く「本当に出来るだろうか」と萎縮してしまうところが弱点と言えます。リーダーシップがもっとあれば、色々なことができると感じました。そのため、元々持っているクリエイティビティをさらに磨く一方で、しっかりと発揮するためにもリーダーシップを高めることが非常に重要だと捉えています。

育児・介護とキャリアの両立支援に着手した経緯を教えてください

クリエイティビティとリーダーシップという2つのキーワードについて、今度どうあるべきかと改めてマネージャー陣とのワークショップを通じて議論しました。その中で、大きな課題であったのが女性の活躍推進でした。

それまでの当社では、出産・育児のタイミングで仕事はペースダウンするものという固定観念がほとんどの人にありました。そして、女性社員との対話を通じて、両立支援の課題が見えてきました。 例えば、「遅い時間まで子どもを預けていたらかわいそうではないか」「子どもが小さいうちは出張を控えた方がいい」と上司が思い込みで業務調整をし、結果的に本人の意向を確認せずに機会を提供していなかったというケースがあったようです。

こうした課題認識を役員間で共有し、女性活躍を阻む意識の壁を取り払っていくことが必要だと再認識しました。 実際、人材育成会議で色々な部門長に「優秀な女性課長を今後どのようなリーダーとして育成するのか」と聞いてみると、本人としっかりと話し合う前に、「家庭の事情で難しいのでは」と無意識に思い込んでいる上司もいることがわかりました。その結果、制度を変えていき社内の意識も変えていこうという方針のもと、改革を進めていきました。 その上で、今年3月の国際女性デーに合わせて女性のキャリア支援をテーマにした社内イベント「Life&Career Day for Women」を開催し、啓発活動にも取り組んでいます。

制度改正の内容を教えてください

今回の制度改正はまずすぐに出来ることとして第一弾の位置づけですが、ポイントは4つあります。

まず一つ目は、リモートワークにおける勤務時間をさらに柔軟にしました。在宅勤務によって、通勤時間が無くなり余裕ができるものの、リモートワークをしている間に子どものお迎えや食事の用意をしなければいけないなどの悩みが出てきました。そこで、夕方から夜に掛けて中抜けできるようにしたのです。

二つ目は、看護休暇です。子どもの看護休暇に関して、これまで対象年齢は幼稚園生や保育園生ぐらいまででしたが、小学校6年生修了までに拡大しました。これによって、「小4の壁」と呼ばれる課題や子どもの不登校などにも寄り添えるようになりました。

三つ目が、ベビーシッター割引券の配布です。外部の育児サービスの利用を支援しています。

四つ目が、小学校の長期休み時期における本社と品川オフィスでのオフィス内学童保育スペースの開設です。長期休み中は、学童保育が通常よりも短かったり、給食がなくなるのでご飯を用意しなければならないとあって大きな困り事でした。それで、社内に学童保育スペースを構えて、子どもたちがオフィスツアーや工作などを楽しめるようにしました。特に品川オフィスは、「街に開く」をコンセプトに掲げていることもあって、近隣企業の社員のお子さんもお預かりしました。

加えてトライアルとして行ったのが、見守り家族IoTツール「Hello! Family.」の社外モニターです。これを利用することで子どもの居場所がわかったり、ボタンを押すだけで親子で簡単にコミュニケーションが取れたりします。

オフィス内学童保育の様子

コクヨ株式会社

今後の展開はいかがですか

制度を利用した社員からは「利用してみたら、こんなにも違うのかと驚いてしまいました」というように、好意的な声が多数寄せられています。

実際、私もタウンホールミーティングで社員と話しましたが、希望を持ってくれています。また、「当事者として、自分たちがプロジェクトに関わり、新しいことをやっていきたい」と言ってくれている人も沢山います。 社員の働きやすさを求める一方で、今後の課題としてお客様からの要望対応との調整があります。

例えば、ワークプレイス部門の営業担当だと社内外のさまざまなメンバーと関わり合いやお客様からの要望に合わせると土日勤務で対応したりします。そのため、社員の働きやすさを追い求めていくとお客様にもかなりご理解をいただかないと実現は難しいといえます。まずはできる範囲から、少しずつ変えていかなければならないと感じています。

コクヨ株式会社

代表:代表執行役社長 黒田英邦
創業:1905年10月
資本金:158億円
社員数:連結6931人、単体2142人(2023年12月末現在)
事業内容:文房具の製造・仕入れ・販売、オフィス家具の製造・仕入れ・販売、空間デザイン・コンサルテーションなど
本社:大阪市東成区大今里南6-1-1 売上高/3287億円

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