鈴与グループの情報システム会社、鈴与シンワート。受託開発中心からサービス提供型へのビジネスモデルの変革を推進している。IT人材の確保に苦労は絶えないが、採用手法の改善を着々と重ねている。同社採用責任者の大川正氏に採用の状況や取り組みなどを聞いた。
鈴与シンワート
大川 正 総務人事部長兼人事課長
会社や事業の特徴について教えてください。
鈴与グループは、「物流」「商流」「建設」「食品」「情報」「航空」「地域開発・その他サービス」の7つの事業を展開する約140社で構成されています。
当社は情報事業のコア企業として、「データセンター及びクラウドサービス事業」「パッケージソリューション及びビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)事業」「システムインテグレーション(SI)事業」を手がけています。案件の9割以上がグループ以外のお客様とのお取り引きです。
SIをはじめとするシステム開発の分野では、ロジスティクス、金融、ビジネスインテリジェンス(BI)、制御系、人事給与、会計、システム基盤構築などを得意としていますが、受託開発中心からサービス提供型へのビジネスモデルの変革を推進しており、自社設備である高規格データセンターの強みを活かしたクラウドサービスと、専門性の高い人事給与業務のBPOサービスが大きく成長しています。
最近の業績、人材へのニーズはどのような状況ですか。
おかげさまで業績は堅調で、増収増益が続いています。業績の拡大とともに採用活動も積極的に行っていますが、人材の増強がさらなる業績向上に直結することから、採用力強化の必要性を感じています。
採用力強化が必要だということですが、まず新卒採用の状況から教えてください。
新卒は毎年10~15人程度を採用しています。募集の手段は大手の就職情報サイトを活用した母集団形成のほか、採用実績校へのコンタクトによる募集も行っています。
しかしながら、IT業界における学生の関心は大手ブランド系企業に向きがちで、知名度が低い当社は母集団形成が思うように進まないのが現実です。対策として就職情報サイトの様々なサービスを利用していますが、これには限界を感じており、採用ツールの見直しや自社ホームページの充実などを進めているところです。
新卒ではどのような人材を求めているのでしょうか。
情報技術職として、当初はプログラミングの仕事をしてもらいますが、その後はSE、プロジェクトリーダーとして顧客折衝やチーム運営も担える人材を求めています。したがって、まずはやるべきことを自ら考えて行動できる人、考え込まないですぐに行動に移せる人、気配りが出来て自分の意見をしっかり言える、リーダーシップを発揮できるポテンシャルのある人、というイメージですね。
選考にフローはどのようになっていますか。
適性検査の後、グループ面接、個人面接を各1回経て、役員による最終面接を行います。会社説明会や選考プロセスにおいては、学生の皆さんに会社の雰囲気を感じてもらいにくいため、オフィスの見学や先輩社員の話を聞いてもらうなど、職場の雰囲気をつかんでもらうような機会を増やしていきたいと思っています。
中途採用ではどのような人材を募集していますか。
今期は、技術系と営業系を合わせて40人程度の採用を計画しています。採用の中心は、プロジェクトマネジャーやリーダーとして現場をまとめられる人、もしくは顧客接点を担う上でのコミュニケーション力のある人、あるいは特定技術分野の専門性を有する、いずれも即戦力の人材です。
募集の方法は人材紹介会社の利用が中心ですが、ポジションによっては転職サイトへの出稿も組み合わせています。大手人材紹介会社だけでなく、専門分野に特化した紹介会社も活用しています。
IT分野の即戦力人材は奪い合いの状況です。充足度はどうですか。
まだまだ道半ば、といったところです。もちろん計画通りの人数を採用したいのですが、選考基準に妥協はしたくありませんので昨年度も計画に対して70%ぐらいでとどまっています。この理由には新卒同様、候補者に対する当社の認知度の問題もありますが、人事の取り組み姿勢の甘さもあると認識しています。
従来は人材紹介会社の営業担当者やカウンセラーに来社してもらって人材要件を伝えていました。特に大手人材紹介会社の場合、候補者と接するのはカウンセラーですが、当社の企業情報や人材要件、熱意が上手く伝わっていなかったのかもしれません。ある人材紹介会社では、当社のことをよく理解いただいた特定のカウンセラーから推薦された候補者は人材要件にマッチした方が多いという傾向も見えています。
今後は受け身ではなく私たちからも積極的に人材紹介会社に出向き、説明会を開催したり、カウンセラーに直接説明するなどの機会を設けたいと考えています。
そのほか、中途採用で工夫していることは ありますか。
人材のスカウトも手がける採用コンサルティング会社にアドバイスをいただきながら、ダイレクトリクルーティングに着手しています。社員紹介制度の活性化なども提言してもらい、さっそく実行していますが、なかなかいいですね。
社員紹介制度は、社員から候補者に対して当社について具体的かつ深い内容を伝えられるため、入社してもらえる確度が高まるメリットがあります。これまでは自然発生ベースで対応していましたが、今後はより体系的かつ積極的に仕掛けていこうと思っています。
また、従来手薄だった経営企画や広報・マーケティングも専門に手がける部署ができ、対外PR活動に力を入れ始めているところです。これに乗る形で、採用を意識した企業広報も展開していきたいと考えています。
人材育成については、新しい取り組みはありますか。
今期から「中期人材開発計画」に基づく教育をスタートさせます。社員がビジネスの現場で活躍できる「エンプロイアビリティの高い人材」を目標に掲げ、その実現に向けて構築した体系的な教育プログラムを展開していくというものです。
エンプロイアビリティの高い人材とは、どこの会社でも通用する素養、知識、スキルを有する人材という意味です。教育プログラムは営業力、SE力、ヒューマンスキル強化という軸で構成し、社外のサービスも活用しながら、人材育成に一層力を入れていきます。