【ヒト・コミュニケーションズ】成果追求型の営業支援で急成長

人材派遣や人材紹介では提供できない企業のニーズを発掘し、成果追求型の営業支援アウトソーサーとして、2011年8月大証ジャスダック市場に上場を果たしたヒト・コミュニケーションズ安井豊明社長に提供する人材サービスと今後の事業展開を聞いた。

ヒト・コミュニケーションズ

ヒト・コミュニケーションズ
安井 豊明 代表取締役社長

大分市出身。1988年富士銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行。2001年ビックカメラに入社。04年ヒト・コミュニケーションズ代表取締役社長に就任。11年8月大阪証券取引所ジャスダック市場に上場。11年度「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン(新日本有限責任監査法人主催)」アクセラレーティング部門大賞を受賞。

ビジネスの概要とこれまでの人材派遣との違いを教えてください。

当社は、販売・サービス・営業分野におけるマーケティングのプロ集団であり、「成果追求型の営業支援アウトソーサー」をコンセプトとして掲げています。単に販売員を派遣するのではなく、付加価値の高いサービスを提供することでお客様のご期待を上回るような成果を追い求めてきました。

販売・サービス・営業分野の現場を担うマーケティングのプロとして、セールスプロモーションの企画から販売員の研修、売場の実態調査や運営管理までトータルでの営業支援を行っています。販売業務を受託した場合、運営の責任は我々にあります。これが、運営責任を顧客が持つ派遣ビジネスとの大きな違いです。

業務の中でトラブルが発生することもありますが、当然その対応は当社が行います。また、“成果”として明確な目標を設定し、必死に追いかけます。そうすることで、スタッフのスキルやモラルが向上すると考えます。

販売・サービス・営業の現場では、どのようなニーズがありますか。

ファミリー消費からシングル消費へと消費行動が変化する中、商品のデジタル化や多機能化も進み、販売員にはより高度な接客スキルが求められるようになりました。一方で、もはや新卒社員を大量に採用し、現場に投入していくような環境ではなく、販売員の教育研修・管理負担の増加に悩むクライアントも多くなっています。

そのため、販売現場の運営をアウトソーシングすることで生産性を上げるというニーズが出てきているのです。現場をアウトソーシングすることで、社員はコア業務に集中でき、生産性を上げることができると考えます。

どのような企業が顧客となっていますか。

主なお客様は、エレクトロニクス関連メーカーや通信キャリアです。光回線や高速無線LAN、スマートフォンなどの様々な商材に対応するためには、商材ごとの専門知識や販売方法をマスターする必要があります。当社では独自の研修プログラムをクライアントと共同開発し、プロの販売員を育成しています。全国27拠点の拠点網を活かし、商品の販売を全国規模で請け負うことも可能です。

実際、全国規模で販売業務を一括で請け負い、量販店やスーパーなどで当社のスタッフが活躍しています。このような全国規模での事業運営への対応力も、私たちが得意とするところです。 最近では、食品やファッションメーカー等の営業、物販やサービス販売など、BtoB、BtoCともに、お客様のすそ野が広がってきています。

順調に業績が拡大していますが、ビジネスにおける強みとなっている点は?

当社の強みは、独自の研修プログラムをクライアントと共同で開発し、徹底してサービスのクオリティーを追求するところです。頼んで良かったと思われるものがなければ当社を選ぶ理由がありません。満足していただけるクオリティーを維持していくことが一番難しいところです。

クオリティーの高いサービスの提供には、人材育成は欠かせない重要な要素です。それを支えるのは「よりリアルに、より実践的に」をコンセプトとしたプロを育成するための充実した教育研修プログラムです。 本社ビルには、いくつも研修室がありますが、全国の拠点を結ぶテレビ会議システムを使って、商品知識や販売方法などを、ワンストップかつ全国均一レベルで教育することができる体制を整えています。

販売の現場でお客様に接するのは、当社のスタッフであり、それだけに当社の責任は非常に重く、現場で起こる様々なトラブルに対してすべて私どもが対応しなくてはいけません。こうした日々の積み重ねが、ノウハウとして蓄積されています。

ヒト・コミュニケーションズ

アウトソーシングサービスを始めることになった経緯を教えてください。

これまでの人材派遣というのは、業界関係者以外の関心も低く、また、自分たちが考えている以上に、顧客に対するサービスの付加価値がなかったように感じています。その理由は、雇用者と使用者が異なる唯一の業界であり、派遣会社がスタッフに継続的な研修をするにも限界があります。またスタッフも派遣会社へのロイヤリティは低く、複数の派遣会社に登録しているといったことがあるわけです。

私はそこを変えたいと思いました。この会社にいるとスキルが身に付く、自身が成長できるということをスタッフ一人一人に実感してもらいたい。また、需給の調整弁として、ただ販売員を派遣するのではなく、現場を担うプロとしての営業支援サービス、そしてアウトソーシングサービスというものを、日本の雇用に貢献する一つの産業として認めさせたいという思いがあります。

不況になると、設備、在庫、雇用という三大調整があります。日本企業は、設備と在庫の調整はこれまでも経験があったのですが、本格的な雇用調整局面というのは、バブル崩壊後とリーマンショック後が初めてだったと思います。バブル崩壊の時は、調整の仕方が分からず処理に手間取り、10年以上かかりました。労働行政も安定的な終身雇用制度を前提としていたため、高度成長から低成長時代に入っていくところで、様々なきしみが生じていたのに対応できていない。

その雇用構造の転換期に流動化の担い手として一翼を担ったのが人材派遣だったのだろう、という整理をまずしました。派遣会社としては、そうした流動化の担い手という役割以外に付加価値はあるのかと考えたときには、真剣に悩みました。そして、今後はその会社に頼まなければできないようなスキルや付加価値を問われる時代が絶対にくると思いました。それであれば任された仕事に成果で応えることで、社員もスキルを身につけることができる会社にするのが、目指すべき道だと考えたのです。

アウトソーシング会社としては後発でしたが、「よくやる会社だね」と一定のご評価をいただけています。それは、付加価値の高いサービスを提供することでお客様のご期待を上回るような成果を追い求めて来た結果であり、そのような意味で「成果追求型の営業支援アウトソーサー」というコンセプトを掲げています。

日本の労働市場について思われることはありますか。

日本は、諸外国と比べて雇用の流動化率が低いわけですが、これは流動性を非正規雇用が支えているからにほかなりません。日本の非正規雇用は全就業者の3割を超えています。改正労働者派遣法の論議も、正社員の流動化について議論せずに、流動化を支えている人材派遣を禁止するといっても、この景気低迷と経済縮小の環境下では、国内での企業経営は成り立たなくなるでしょう。ですから経済界のいうことも一理あります。

一方で、社会は人が幸せになるためにあるのですから、企業経営のために人が不幸になっては、それもまた違うと思います。人口減少経済の中で、グローバリゼーションが進み、企業がアジア戦略で海外移転を考え始めている状況をどうしていくのか。みんなが、ハッピーに働けるということだけがコンセンサスになっていますが、誰もがハッピーになれるかというと、すでにそうではなくなっていると思います。

ここをどうしていくかは、人材派遣の議論とはまったく違うレベルの問題です。派遣もやってはだめ、解雇もできないでは議論が進みません。木の幹の議論をせず、枝葉の議論で解決することはありません。正社員も含めた雇用の仕組み、言わば働き方全体の枠組みの話し合いをしなければ解決することはないでしょう。

上場を果たされて、今後、目指す事業展開と方針を教えてください。

常に販売や営業、サービス分野におけるアウトソーシングサービスのフロントランナー、パイオニアでありたいと思っています。ただ規模を追求するのではなく、スタッフ一人一人がプロとして成長できる販売・サービスの仕事や業種をビジネスフィールドとして、お客様にとってより付加価値の高いサービスの提供を目指します。

グローバル展開という点では、アジア戦略として9月に上海で現地法人を設立しました。ここでも、お客様のマーケティングパートナーとして海外に進出する日本企業を支援していきます。今後もお客様の成果を追求し続けたいと考えています。

PAGE TOP