認知的徒弟制とは、師範から弟子に伝統的な技術が受け継がれていく過程を学習モデルとして体系化した教育制度のことを指します。かつての徒弟制による技術継承のプロセスとしては、まず技術力のある師範に弟子入りし、師範の身の回りのお世話をしながら見よう、見真似で師範の技術を学び、仕事や世話が終わった夜や仕事が始まる前の早朝などに実践・練習をして技術を身につけていきます。かつての徒弟制は弟子が技術を間近で観察できる絶好の機会でした。
また、徒弟制で学ぶ弟子たちは自ら技術を学ぶために弟子入りしているため、主体性があり熱心に取り組めるといったメリットもあります。ただし、かつての徒弟制では弟子が技術を身につける過程に師範は干渉しないため、弟子は自分の間違いに気づきにくいデメリットもありました。
そこで、適切なタイミングで師範のサポートも取り入れる過程を作り、より効果的に教育を進められるよう体系化されたのが現代の認知的徒弟制です。教育現場はもちろん、ビジネスでの新人教育などにも利用されています。
認知徒弟制が注目される理由としては、学んだことを実践で活かせない人、なんでも人に聞いてばかりで自分からやろうとしない人が増えているからです。とくに新人のうちは、上司や人事担当から仕事の進め方を指導されてもそのとおりに実践できません。認知徒弟制を活かして現場の様子を観察しながら適切な指導をおこない、最終的には1人の力で仕事を完結できるよう成長してもらうのが狙いです。
認知徒弟制には、4つのステップがあります。上司が部下に仕事を見せて覚えさせるモデリング、部下の仕事を見て上司が指導するコーチング、部下が1人で仕事ができるようサポートするスキャフォールディング、サポートの頻度などを徐々に落としていくフェーディングです。 また、実際の現場では、スキャフォールディングとフェーディングのあいだに追加で2ステップを加えるケースもあります。部下の仕事への考え方を言語化し、プロセスの中に課題を見出すためのアーティキュレーション、学習者が自分の仕事を客観的に振り返るリフレクションです。以上の6ステップを人材教育の構成として採用し、的確なタイミングで最適な指導の実践につなげていきます。