組織の成長と人材定着の鍵はコミュニケーションの活性化【東京海上日動システムズ】

東京海上日動システムズは、東京海上日動火災保険グループのシステム開発・運用・保守を行う精鋭企業だ。2004年の合併後に疲弊した組織は、組織の立て直しを図るためにどのような取り組みをし、どのような人材を採用・育成し今に至るか。人事部門を統括する押井英喜氏に話を聞いた。

東京海上日動システムズ

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押井 英喜 人事部長

「7人制チームは合併による社内の混乱や仕事に対するモチベーションの低下への反省から生まれました」

貴社はGPTW(Great Place To Work、「働きがいのある会社」 ランキング)に9年連続で選出されています。主にどのような取り組みを行ったのですか。

当社が職場で最も大切にしているのが、チームで働くことです。

2014年から、1つのチームがコミュニケーションを取るに最適な人数である7人で構成する「7人制チーム」を導入しています。1チームには必ずリーダーを1人置き、チーム内外の連携をスムーズに行えるよう工夫しています。実際、社員からは、前よりもコミュニケーションがとりやすく、チームの雰囲気が良くなったという声が聞かれます。

チームを7人で構成することは、人材育成面においても効果的だと考えています。1人のリーダーが部下のことを考える場合、目が行き届く人数には限界があります。7人程度であれば、チームの中でどういう業務が進行しているのかをきちんと把握することができます。

メンバーにとっても、誰が何をしているのかが見えやすくなり、トラブルがあった場合でも迅速に対応することが可能です。

コミュニケーションに力を入れているのはどのような理由からですか。

当社がコミュニケーションやチームの改革に取り組んだ理由は、2004年の合併に起因します。当時、旧東京海上火災保険と旧日動火災海上保険が合併したことに伴い、それぞれの傘下にあるIT系の子会社3社が合併し、東京海上日動システムズとして、新たなスタートを切りました。

合併に伴うシステム統合により膨大な作業が発生し、一時は約6割の社員が合併対応で繁忙度が高くなる状況となりました。そのような対応が数年間にわたって続いたことで組織が疲弊して社員の働き方にも影響が出始めました。

顧客のニーズをうまく把握できないだけでなく、仕事に対するモチベーションは下がり指示待ち体質になるという状況に陥ってしまいました。

当時、当社の風土についてアセスメントを実施したところ、「縦割り」「受け身でチャレンジ精神がない」「自発的な活動ができない」などの問題が顕在化し、想像以上に思わしくない結果が出ました。

どのように社内改革を実行したのですか。

ワークスタイル改革をキーワードに、自発性、お客様起点での働き方、コミュニケーション、組織の縦割りといった問題を改善することを目的とした「ワークスタイル改革委員会」を2005年に立ち上げました。

この委員会は、社員が自発的に立ち上げたもので、自主性やコミュニケーションを重んじる職場風土への改善を図るための第一歩となりました。

コミュニケーションは当社のITエンジニアとして顧客の要望を汲み取り、ビジネスサイドの理解を深めるために最も必要とされる能力の1つです。その中で始めたのが社内SNS「wakuwakuSNS」です。

組織や出身会社の枠を越えて日記やコミュニティ機能を自由に使い、組織の一体化や社員のやる気の醸成、コミュニケーションの活発化に大いに寄与しました。これらの取り組みが、2009年以降毎年GPTWにランクインするようになったきっかけでもあったのではないかと思います。

これらの職場風土の改善に取り組んできたおかげで、現在では全社員での離職率は毎年2 ~ 3%と低く抑えられ、入社3年目までに退職する若手社員の離職率は、ここ4~ 5年は0%を達成するなど、効果が現れていると感じています。

社員が自発的に委員会を立ち上げ、職場風土改善を図る

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生まれ変わった職場は、どのような人材を求めていますか。

当社が考える新しい時代に即した人材像が3つあります。

1つはよりビジネスサイドに踏み込んで、ITでビジネスを創造できる人材。2つ目はグローバル事業に対応し活躍できる人材。3つ目は新しい技術への感度が高く、それらに柔軟に対応できる人材です。

世の中の変化は想像以上に激しく、従来では組んだことのない新しい会社や業界と協業を始めるなどさまざまな動きが出ています。自動運転やAI、IoTといった新しい潮流がある中で、今までとは違うビジネスモデルを模索しながら自らが動くことをしなければ、早晩立ち行かなくなるのではないかという危機感が増しています。

これまで交流のなかった新しい業界や企業とコラボレーションをするために、新しい技術に対応してスピード感を持ってプロジェクトを進めていくというアジャイル型開発手法にも対応できる人材を育てる必要があります。

東京海上日動システムズ

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鈴木 常弘 人事部 課長

「 時代の変化に迅速に対応し得る能力を持つ人材が必要です」

人材育成のために、どのような施策がありますか。

キャリアアップを支える6つの施策があります。

1つ目が社員のキャリアアップを支援する、「キャリチャレ(キャリアデザイン&業務・自己成長チャレンジ)制度」です。これは上司と行う面談制度で、目標の達成度や今後のキャリアについての話し合いを行います。

2つ目は、経験を積むための「人事ローテーション」。5年目、10年目などの社員を対象に、過去の業務経験や本人の希望などを加味し、面談や人材育成会議により現場や人事で調整をしながら毎年実施しています。2017年は200人以上が異動しました。

3つ目は「社外活動の奨励」です。社員には一年間参加する社外の研究会や勉強会に積極的に参加し、見聞を広めることを推奨しています。

4つ目は「キャリアカウンセリング」です。社内の有資格者と社員によるキャリア面談や、外部の専門家とのキャリアカウンセリングを受けることができます。

5つ目は「海外人材育成プログラム」です。語学研修やITプロジェクトを疑似体験しながら、外国の方と一緒に現場を体験するプログラムや、数年間の派遣といったプログラムも用意されています。

6つ目は「メンター制度」です。ラインの上司との面談に加え、部をまたいだ異なる部署の役職とのキャリアに関する相談の機会を設けています。また施策とは別に社長と社員の対話の場を設けており、風通しの良い職場を目指しています。

手厚い人材育成制度で社員の成長を促す

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採用の選考過程において、工夫されていることはありますか。

説明会には非常に多くの学生が来ます。募集は各種の媒体、OB/OGやその他のチャネル、ダイレクトリクルーティングなども活用しています。

近年新しいツールが登場し、感度の高い学生は年々さまざまなチャネルに移りますので、動向にはアンテナを張るように努力しています。

選考過程では人事部以外の多くの社員を動員し、一次選考のグループワークでは中堅社員、二次選考の面接では現場の管理職が担当するなど、学生との接点を増やしています。また社内見学を実施し、学生に生の職場の雰囲気や現状を少しでも理解してもらえるよう工夫しています。

選考における課題はありますか。

学生に当社について理解を深めてもらい、不安や迷いがなく当社を選んでもらえるような工夫や取り組みが必要だと考えています。

内定を出して終わりではなく、入社に至るまでのアフターフォローもしっかりと行い、学生自身だけでなく学生の親御さんが感じている不安を払拭し、気持ちよく入社してもらいたいと思います。

今後も学生との関係を深め、「この会社で働きたい」と思ってもらえる会社になるために、これからも当社ならではの施策を考えていきます。

東京海上日動システムズ株式会社

代表者:代表取締役社長 久井敏次
設立:1983年 
資本金:5000万円
従業員数:1360人(2017年4月1日現在)
事業内容:東京海上日動火災保険、東京海上日動あんしん生命保険等、東京海上グループの情報システムの企画・提案・設計・開発・保守・運用
本社:東京都多摩市鶴牧2-1-1 多摩東京海上日動ビル
売上高:173億4600万円(2017年3月期)

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