全世界共通の価値観・行動規範「GEグロースバリュー」で成長を志向【日本GE】

GEは、“imagination at work 想像をカタチにするチカラ”をスローガンに、テクノロジー、メディア、金融サービスという多様な分野で事業を展開している。 航空機エンジン、発電、水処理・セキュリティー技術から医療用画像診断装置、企業向け・個人向け金融、メディアにわたるまで幅広い商品とサービスを世界100カ国以上で提供している。日本GEは、日本におけるGEグループ各社を統括する本社機能を持ち、日本の市場と事業パートナーを開拓する役割を担う。そのような同社に求められる人材の採用や育成について人事部採用グループマネージャーの谷本美穂氏に聞いた。

日本GE

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谷本 美穂 人事部採用グループマネージャー

環境が変化しても人材に対する考え方は不変

「金融・経済危機という環境下で、金融ビジネスの割合を落とし、テクノロジー・イノベーションに関連するビジネス、特に環境とヘルスケアといった問題を解決する事業を強化するという方針が全世界に打ち出されました」と谷本氏は言う。

同社は古くから日本企業とのテクノロジーパートナーシップで事業を伸ばしており、今年に入ってからはエネルギー分野において三菱重工業と提携するなど、積極的なアライアンス戦略を打ち出している。

「単独では10年かかるところ、共同で問題解決に取り組むことで開発期間を短縮できます。優れた技術をそなえた企業と積極的に手を携えていこうという戦略です。また、優れた技術でありながらも日の目を見ないなどの製品を持つ企業を積極的に開拓し、パートナーシップを組んで効率的に事業化する方針で臨んでいきます」

事業のポートフォリオは環境変化に応じて柔軟に組み替えるが、それを担う人材に対する考え方は全く不変であるのがGEの大きな特色だという。

そのベースとなるのが、全世界の従業員32万人に共通して求められる「GEグロースバリュー」と呼ばれる価値観・行動規範。「外部志向」「明確でわかりやすい思考」「想像力」「包容力」「専門性」の5 項目がある。

人事考課では、「業績」とこの「『GEグロースバリュー』をどれだけ発揮したか」が同じウエイトで評価される。仮にある年に業績目標が達成できなくても、「GEグロースバリュー」を遺憾なく発揮すればセカンドチャンスが与えられるという。

「それだけ、その人のグロースバリューに示されるリーダーシップの威力を信じているわけです。このことがGEの企業文化の根本にありますね」と谷本氏は強調する。

常に上のステージを目指してチャレンジしたい人に絶好の会社

同社では、年に1 度「セッションC」と呼ばれる、人材開発プロセスの中核となる一連の人材レビューが行われる。

ここでは、幹部と人事スタッフにより、全社員の評価および能力開発の必要性とともに、経営戦略にあわせた組織変更やその人員構成などが検討される。

「つまり、年に1回、全世界のどこにどんなタレントがいるのかがレビューされるわけです。さらに、ここで通称『クロトンビル』と呼ばれる企業内ビジネススクールに派遣される経営幹部候補者も選出されます」

「クロトンビル」には全世界から毎年1万人以上の経営幹部候補者が集まり、社内外の第一線の講師から業務改善や戦略立案など様々な経営手法やリーダーシップについて学んでいる。主要なプログラムでは、イメルト会長にプレゼンテーションを行う場も用意されている。

「GEでは、とにかく自分と会社の成長に向けてリーダーシップの発揮が求められます。そして、階層が上がれば上がるほど、リーダーシップを身につけるトレーニングの機会が増えます。成長志向があり、常に上のステージを目指してチャレンジすることに喜びを見出せる人には絶好の会社だと思いますね」と谷本氏は力説する。

求める人材像、選考基準も「GEグロースバリュー」に基づく

そして、「GEグロースバリュー」はそのまま採用における求める人材像、つまり選考基準にもなっている。

新卒採用の面接では、「ビヘイビア・ベースド・インタビュー」という、応募学生の過去の経験談から行動特性を割り出して「GEグロースバリュー」に照らし合わせ、適性をチェックするという手法を採っている。

「入社して何をやりたいのかといった、いわば誰でも作れてしまう回答を求めることはしません。あくまでもこれまでの行動に着目して評価するようにしています」。

なお、日本での新卒採用は関連会社のGE横河メディカルシステムが技術系学生をコンスタントに15人程度、FMP(財務・経理リーダーシッププログラム)を15人程度採用してきた。

一方、中途採用は一般的なキャリア採用を行っている。「2009年度は人員増は計画されていませんが、人材のアップグレードは常に考えて取り組んでいきます」。

「リーダーシップ・プログラム」はタレントの“パイプライン”

もう1つは、「リーダーシップ・プログラム」と呼ばれる、各業務分野(部門)における将来のリーダー候補者を採用・養成するコース。主にはセールス・マーケティング部門の「ECLP」、人事部門の「HRLP」、財務・経理部門の「FMP」、リスクマネジメント部門の「RMLP」などがある。

採用後の育成内容は、例えば「ECLP」では、OJT として2年間で6カ月ごとのローテーショナルアサインメント(営業・マーケティング実務)を4回実施するほか、2年間を通じて合計8週間、主に米国におけるリーダーシップ、セールス・マーケティングスキルなどの研修に参加する。

2年間のプログラム終了時点でマネージャークラスに成長することが求められるが、逆にいえばそうなれる人材であることが採用時点の基準ともなる。

採用に当たっての資格要件としては、「ECLP」では「学士号取得者(MBA 保有者歓迎)」「業務経験6年以上(うち営業もしくはマーケティング実務3年以上)」「様々なビジネスの状況に対応できる高度なコミュニケーションおよび対人能力」など。当然、英語はTOEIC860点以上と堪能でなければならない。

「不況で予算が厳しい中でも、リーダーシップ・プログラムには変わらず力を入れていく方針です。タレントのパイプラインとして、それだけ重視されているのです」

そう言うだけ、この採用には力を入れている。ターゲットとしては、商社やコンサルティング・ファーム出身のMBA取得者。MBA取得後のステップアッププログラムとして考えてもらおうという戦略だ。

「MBA取得をサポートする企業とタイアップして、壮行会などのイベントに参加してPRしたり、卒業後にスカウティングを行うなど積極的にアプローチしています」

「ダイバーシティ」にも積極的に取り組む

最近では、採用窓口および採用プロセスの一本化を行った。それまで採用実務はグループ各社の人事でバラバラに行われていたが、採用におけるGEブランド力発揮の最大化と、GE共通の求める人物像の提示など、応募者へのわかりやすさを考慮。採用ナレッジの共有化も狙っている。

「ある職種を募集する際はどのエージェントが強いか、といった各社のノウハウを蓄積していきます」。さらに、専門企業による採用プロセス管理を導入。「社内の人事担当者が片手間にやるよりも、はるかに業務品質が向上しますね」。

ところで、同社は「ダイバーシティ」にも積極的に取り組んでいる。その最たるものが「ウィメンズ・ネットワーク」。育児と仕事を両立する社員同士の情報交換会や、ロールモデルとなる女性社員のキャリア構築を学ぶセッションなど充実したプログラムが並ぶ。

障がい者の活用においては、これまで課題としていた業務効率の追求とのバランスにあえて今年は挑戦する。「法令順守は当然ですので、障がい者雇用についても採用窓口の一本化を図り、さらに本社で障がい者の実務研修をするなどのサポートを行えるよう社内体制の整備に取り組んでいきます」

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