2012年度~2021年度の企業の正規社員採用における新卒と中途の比率を計算すると、ほぼ一貫して3対7になっていることが、リクルート(東京・千代田、北村吉弘社長)の「新卒・中途採用横断レポート」で明らかとなった。
過去10年間(2012年度~2021年度)の、正規社員の労働市場における新卒採用の割合をみると、景気循環などによる多少の変動もあったが、常に30%付近で推移している。
2022年度の正規社員の採用について、2021年度と比較して新卒と中途の採用割合を質問したところ、「割合は変更しない予定」は52.4%であり、企業は新卒と中途の採用割合を大きく変更することはなく、全体で見ると約30%と新卒採用は一定の割合を維持してきたことがわかる。
過去10年間の新卒人数は40万人台前半と安定しており、これは中途採用人数も安定していることを示唆する。見方を変えると、新卒採用が企業の採用において大きな位置を占めている状況は変わらず、正規社員の中途採用市場における人材の流動化は限定的と言える。
コロナ禍直前の2018年度に新卒採用割合は28.6%と過去10年間で最も低い水準となった。コロナ禍前で転職市場の需給が最も逼迫した状況だったことがうかがえる。
一方、2020年度は32.9%まで高まる。コロナ禍で採用意欲は減退したが、新卒採用は比較的守られたこともわかる。
また、2012年度(2013年卒)はリーマンショックによる景気後退で新卒採用は抑制傾向にあり、求人倍率は1.27とかなり低かった。ここでも新卒割合は33.2%と高く、新卒採用は守られる傾向にあったことがわかる。
リクルートでは景気による採用動向について「景気が悪化すると新卒採用を守るため新卒の割合が高まり、改善すると転職者が増加するため新卒の割合が低くなる、という見方ができそうだ。不景気において、新卒採用は堅持されてきたこともうかがえる」と指摘する。
新卒採用と正規社員の中途採用の割合を、中長期(今後3~5年程度)ではどのように変化させるかを聞くと、短期の結果と同様に、「割合は変更しない予定」が41.3%と新卒採用と中途採用のポートフォリオが依然変わらない企業が多くを占める。
一方、「わからない」と回答する企業も35.3%と多く、景気動向や人手不足の構造によっては、変わる可能性も示唆される。
2023年卒において、通年採用を実施している企業は26.7%となった。ただ、通年採用は多義的であり、企業によって意味するところは異なる。最も多かったのが「年間を通して受付・選考」と「新卒・既卒の区分にこだわらない若年採用」で、それぞれ68.9%、58.7%となっている。