【著者が語る】人事担当・管理職のためのメンタルヘルスの教科書

日本メディメンタル研究所 清水 隆司

日本メディメンタル研究所
清水 隆司 所長

企業経営において、メンタルヘルス対策は重要と叫ばれるようになってから、もう30年以上経過しています。しかし相変わらず、メンタルヘルスに関する労務問題は発生しています。

どうしてメンタルヘルス問題が減らないか、私なりに考えてみますと、①情報通信技術の発展により、ビジネスで取り扱う情報量が膨大になったこと、②情報伝達が速くなったことによって、仕事に求められる処理速度が速くなったこと、③1990年代のバブル経済崩壊を経て、企業は組織をスリム化したことが関係していると思っています。

業務で扱う膨大な情報量と処理速度の高速化は、復職時に従業員へ求める知的生産性のハードルを上げました。それにより、自宅で家事や掃除ができる程度の知的回復レベルでは、職場で求められるハードルを越えられなくなりました。しかも困ったことに、知的生産性という“脳”の活動は、現在医学でも客観的に測定できません。

また、組織のスリム化により、精神疾患で復職し知的生産性が一時的に低下した社員をサポートできる同僚社員がいなくなってしまいました。

さらに、業務量調整のために現場の管理監督者と交渉すべき人事担当者は多くの業務を抱えて、復職社員の援助が十分できなくなっています。多忙な人事担当者としては、復職に関しては精神科主治医へ判断をお任せしたいと思ってしまうところですが、残念ながら、主治医側も知的生産性の回復度合までは判断できないのです。

筆者は非常勤嘱託産業医として数多くの企業でメンタルヘルス対策を行っていますが、ここ最近、1990年代からメンタルヘルス問題に対応してきた経験豊富な人事担当者が定年を迎えて、第一線から引退する人をよく目にするようになりました。その際、後進へ円滑な技術の伝承ができていればよいのでが、残念ながら、うまく伝承ができていないケースが多いようにお見受けします。

そこで今回、メンタルヘルス対策の基本を書籍にした次第です。人事担当者でメンタルヘルス対策実務をこれから担当する方はご覧いただき、日常業務に活かしていただければ光栄です。

人事担当・管理職のためのメンタルヘルスの教科書

清水隆司 著
総合法令出版
1,500円+税

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