転職エージェントに候補者を「えこひいき」してもらう新たな手法~「セミハンティング型」活用のすすめ【DX人材の採用実態 連載第4回】

デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進できる即戦力人材を外部から招く企業が増えているという。2012年の創業以来、デジタル分野の採用支援で実績を上げてきた人材紹介会社ウィンスリーの黒瀬雄一郎代表に、人材市場の動向や採用成功のポイントなどについて解説してもらった。

ウィンスリー 黒瀬 雄一郎 代表取締役 ヘッドハンター

ウィンスリー
黒瀬 雄一郎 代表取締役 ヘッドハンター

【PROFILE】2000年慶応義塾大学経済学部卒業。2003年に電通グループのデジタル広告代理店の立ち上げをおこない、セールス&マーケ部門の統括を行う。同部門の採用責任者として100人程度のメンバーを採用する。2012年デジタル分野専門人材会社ウィンスリーを創業し現在に至る。

大手企業のレイオフを採用につなげる企業も

2023年に入り、米国を中心としたIT・WEB大手企業のレイオフのニュースが続きました。あのお馴染みの会社が!?と日本国内では衝撃も一時走りましたが、このタイミングを好機とし、それらの企業に在籍していた優秀な候補者をうまく採用につなげた企業も一部ありました。

需要と供給で成り立つ転職マーケットにもかかわらず、企業によって採用力に差が出てしまうのはなぜなのでしょうか。もちろん採用企業側のブランド力の違いもありますが、普段付き合いのある転職エージェントを最大限活用できているかどうか、という差もあります。

需要の高いデジタル人材採用の実情

期も変わり、採用強化のために新しいエージェントと契約を結んだ企業も数多くいらっしゃるでしょう。とはいえデジタル人材を数多く集めているエージェントは、契約を結んでいる企業数も多いため、契約企業全体に満遍なく候補者をエントリーすることは非常に難しくなっています。

当社でも、23年4月現在、契約企業社数は200社以上、扱っているデジタル系求人は5000以上あります。候補者と面談する際に、この膨大な求人をすべて精査して一つずつ提案することは現実的に困難です。結果、より豊富で詳細な情報を持つ企業や、人事とのリレーションの良い企業、決定数が多い企業に推薦が多くなってしまっている事実があります。

成果報酬「転職エージェント型」の限界!?

ご存知の通り、人材紹介会社には、大きく分けて成果報酬を支払うタイプの「転職エージェント型」と固定費を支払うタイプの「ヘッドハンティング型」の2種類があります。成果報酬はコストリスクが少なくリードタイムが短いのが特徴ですが、既述の通り母数を集めるのに苦労するケースが多くなっています。

そのため、成果報酬料率を上げたり、1day選考会を実施したり、求人票を改善したりしていますが、こうした施策はどの企業も一様に取り組んでおり、大きな成果につながっているのはごく僅かではないでしょうか。

一方、ヘッドハンティング型は、転職市場では希少な優秀層を「一本釣り」できるメリットがある一方、料金は転職エージェント型よりも高く、リードタイムも決して短くないため、なかなか活用するには勇気がいります。では、優秀な即戦力層のデジタル人材を獲得するにはどうすれば良いのでしょうか。

「セミハンティング型」という選択肢

解決策の一つは、転職エージェント型の紹介会社に対し成果報酬に加え固定費を支払い、「えこひいき」をしてもらうことです。こうすることでエージェントが人材を集中的に確保してくれ、母数を増やすことが可能となります。この形式は「セミハンティング型」と呼ばれ、最近では取り入れる転職エージェントが徐々に増えつつあります。

こうしたメニューをオープンにしているエージェントはほとんどありませんが、打診してみる価値はあります。長い付き合いがあり、かつ相性の良いエージェントであればセミハンティング型として活用できる可能性は少なくありません。毎月一定の人数をエントリーするなど、KPIを決めて運用していくのがおすすめです。

たとえば冒頭の事例であれば、「レイオフされた某企業の候補者を、面談確約でいいので積極的に集めてほしい」といった依頼をエージェントに投げかけるのです。

セミハンティング型の特徴とメリット

セミハンティング型の特徴を転職エージェント型、ヘッドハンティング型と比較しつつまとめると表のようになります。

ウィンスリー

候補者のタイプに関しては、即戦力の人材に対して顕在層・潜在層問わずアプローチできる点が特徴です。手法に関してもスカウト媒体と自社リストを組み合わせることで、より多様な層をターゲットにできます。いわば、転職エージェント型とヘッドハンティング型のハイブリッド方式と言えるでしょう。

セミハンティング型のメリットとしては次の2つが挙げられます。

①確実なエントリーが期待できる

セミハンティング型を採用することで、確実な候補者のエントリーを期待できます。たとえば、当社では毎月200人以上のデジタル経験者人材を集めることができていますが、実際にエントリーのある企業は成果報酬で契約している企業の2割ほどであり、残りの8割はエントリーもできていないのが現状です。セミハンティング型を採用すればこうしたエントリーに関する課題を解決できます。

②短いリードタイムで多くの人材とコンタクトできる

固定費を負担する分、エージェント型に比べコストはかかりますが、リードタイムを短縮でき、かつ多くの人材とコンタクトできるようになる点もメリットです。これにより、優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。

また副次的な効果として、数多くの候補者と会うことができるため、候補者インサイトをリアルタイムで把握できるようになり、候補者へ訴求するアトラクトポイントの改善にもつながります。

以上のようなメリットを踏まえ、相性の良い転職エージェントにセミハンティング型を打診し、「えこひいき」してもらえる専属パートナーとして活用することも検討してはいかがでしょうか。

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黒瀬雄一郎

ウィンスリー 代表取締役 ヘッドハンター/2000年慶応義塾大学経済学部卒業。2003年に電通グループのデジタル広告代理店の立ち上げをおこない、セールス&マーケ部門の統括を行う。同部門の採用責任者として100人程度のメンバーを採用する。2012年デジタル分野専門人材会社ウィンスリーを創業し現在に至る。

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